転生した聖女は、異世界で初恋の騎士と出会う

東導 号

文字の大きさ
19 / 37

第19話「奇跡の再会④」

しおりを挟む
【相坂リンの告白⑩】

 わずか5分後……

 魔導昇降機から降りた私とトオルさんは、
 しっかり手をつないで迷宮の8階、ショッピングモールを歩いている。
 このショッピングモールは、アクセサリー店、洋服店、雑貨店等たくさんの商店があって、結構な人が居た。
 皆、楽しそうに買い物をしている。

 買い物をしているのは、最初からカップル同士で来たのか、それとも私達みたいにこの会場でカップルになったのかは分からない。
 だが、若い男女のふたり連ればかりだった。

 ああ、これって……
 転生する前の私が、望んでいたデートコースのひとつだ。
 次回のデートは私、トオルさんとふたりでショッピングを兼ね、映画を見に行きたいと思っていたから。

 前世……
 兼ねてから行きたいと思っていたお洒落なショッピングモールの奥には……
 これまたカッコいい映画館があった。
 
 今は、複数の映画館が入っているから、『シネコン』って言うんだっけ。
 そこで、超が付く話題の大ヒット恋愛映画をやっていた。
 
 結末を事前に知っちゃうと、つまらないけれど、
 ハッピーエンドって事だけはチェック済み。
 だから見た後は、幸せな気分に浸れる。

 昨日、話した時に確かめたけど、
 私もトオルさんも仕事が忙しくてまだ見ていなかった。

 まあ、異世界転移した私達ふたりが今居るのは西洋中世風異世界。
 さすがに、迷宮を改造したこのショッピングモールにシネコンは無い。
 というか、映画自体が存在しない。
 あるのはオペラみたいな芝居を上演する劇場らしい。
 でも……それはそれで見てみたいと思う。

 そんな悠長な事を考えている場合ではなかった。
 今置かれている状況は前世で想像した通り。
 トオルさんとふたりでデートしているという素敵なシチュエーション。
 
 だけど、トオルさんの彼女の有無……
 つまり『現実』を確かめるのが凄く怖い。
 現実さえ知らなければ……今だけは私、確実に幸せいっぱいなんだけど。

 つらつらいろいろ考えているうちに……
 私達はショッピングモールのカフェに入った。
 席はほぼ満席だったが、幸い一番奥の席が空いていた。

 期待と不安が入り混じった複雑な気持ちの私は、
 「きゅっ」とトオルさんの手を握った。
 するとトオルさんも、「ぎゅ」と握り返して来る。
 最高の、爽やか笑顔付きで。

 微妙な雰囲気が漂う中、
 私達は着席した。

 メニューは紅茶しかない。
 銘柄も記載なし。
 なのでトオルさんが紅茶をふたつ頼んでくれた。

 紅茶が来るまでの間がまた微妙……

 ああ、私……もう我慢出来ない。
 怖いけど……聞いちゃおう。
 
 そしてもし、特別な『彼女さん』が居るんだったら……
 思い切って!
 トオルさんへ、言ってしまおう。
  
 ラノベの敵役かたきやく、つまり悪役令嬢みたいで、嫌だけど。
 「私を選びなさい」って!
 手段を選ばず、強引に迫ってしまおう!
 
 だって!
 ここで迷っていたら、諦めてしまったら……
 
 もう二度とこんな奇跡は起こらない。
 そんな気がしたから。

 よ~し、決めた!
 言うぞっ!
 
「あ、あの……」

 ああ、私って、小心者。
 これだけ強い決意をしたのに……
 また噛んじゃった……ダサ!

 でも!
 トオルさんも慌ててる。
 
 もしかして何か、感じた?
 騎士として、長年の実戦で鍛えられた野生のカンって、事?

「な、何!?」

 ああ、トオルさん、果たして私から何を言われるのか、
 「どきっ!」としてるみたい。

 よっし!
 仕切り直しの、リスタート!
 
 でも、ビビりっ子の私は、くちごもりながら恐る恐る尋ねる。

「トオルさん……こ、怖いけれど……お聞きしても宜しいですか?」

「こ、怖いけれどって?」

「はい! あの……トオルさん……」

「は、はい!」

「ト、トオルさんには! こ、婚約者、もしくは特別な彼女さんって、いらっしゃいますかっ?」

 言った!
 遂に言ってしまった!

「ええっ!? こ、婚約者ぁ!」

 ああ、トオルさんったら、凄いオーバーリアクション。
 これって、もしや……駄目?
 私の想いは通じないの? 

 だって!
 異世界転移した今のトオルさんは王都貴族、レーヌ子爵家の当主。
 その上、女子達の憧れ『王都騎士隊』の硬派な副長。
 筋骨隆々の渋いイケメン。

 肩書きといい、全体的な雰囲気といい、、
 やはり、あの土方様に似ている。
 《まあ、当人に会ったわけじゃあないけどね》
 と、なればもてないわけがない。
 婚約者や彼女が居て当たり前なのだ。 

 しかし、トオルさんはきっぱりと告げてくれた。
 
「い、居ませんよ、そんな人は!」

「え? ほ、本当に?」

「本当です! で、でもリンちゃんこそ! カッコいいイケメンの彼氏が居るんじゃない?」

「わ、私は……」

 また口ごもりながら、
 「私も! そんな人は居ません」
 言い切ろうとした瞬間。
 
 怖ろしく真剣な表情で、副長レーヌ子爵、否、トオルさんが言う。

「お、俺、勇気を出すよ! も、もしリンちゃんに、というかフルールさんに彼氏が居ても絶対にあきらめないから!」

 ……よ、良かったぁ!!!
 トオルさんに『想い人』は居なかった。
 運命の再会を果たした私リンが愛し、愛される事が出来るのだ。
 
 そして、何と!
 告白もされてしまった。
 トオルさんと相思相愛になれるなんて、夢みたい。

 安堵し、脱力した私の口から、思わず本音が出た。

「よ、良かった」

「え? 良かったって?」

 ああ、トオルさん、確認をしたいんだ。
 私の言葉の意味を、
 そして本当の気持ちを!

 しっかりと私の気持ちに応えてくれたトオルさんへ……
 今度はストレートに私から愛を伝えよう。

「だって……私はトオルさんが大好き。全く同じ事を考えていたんですもの」

「ええええっ!!!」

 他の席で談笑するカップルが、驚いて注目するほど……
 トオルさんは、またも、大声を出していた。

 そして……
 お互いに持っていた大きな心配が杞憂に終わった途端……
 私達は晴れやかな笑顔となり、いろいろ話に花が咲いた。

 こんな異世界に来て、まるでラノベの転生みたいだとトオルさんが言ったのが……
 お互いに、『おたくなラノベマニア』をカミングアウトするきっかけとなった。

 大好きな相手と、大好きなラノベの話を思いっきりする!!

 話せば話すほど、私とトオルさんのラノベ話はますますヒートアップ。
 お互いに同じ作品をい~っぱい読んでいた。
 ふたりとも男性向き、女性向きを問わずいろいろ読んでいた事も判明した。
 
 本当に幸せ!!
 最高!!

 私は今まで叶わなかった『夢』を一気に成就していたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...