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大地を砕く魔剣編
第8話「開店記念」
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ジャンの目の前に「すっ」と置かれた剣は、一種独特な形をしていた。
刀身は、そこそこ長い……
貴族が決闘に使うレイピアほどではないが、結構な細身の剣である。
そして、僅かに湾曲した片刃という仕様。
刀身には……ジャンが見た事もない、美しい紋様が現れていた。
「こ、これは?」
ジャンが剣を見つめてると、先程のツェツィリアの瞳と一緒であった。
つい、心が引き込まれ、自分を見失いそうになってしまう。
そう!
戦士として、ジャンの勘が言っている。
この剣は……滅多に出会えない素晴らしい業物《わざもの》だと。
剣へ釘付けになったジャンを見て、バルバは納得したように頷く。
満足そうな笑みも浮かべていた。
そして、
「この剣を……そうだな、今度は10日ではなく、1か月間貸してやろう」
「い、1か月? じゃ、じゃあバルバさん。1か月以内に返せば、の、の、呪われる事はないんだな?」
しかしバルバは何故か、ジャンの質問に答えなかった。
「1か月間、タダで貸してやろう。この放浪の、開店記念サービスだ」
戦士タイプの冒険者として、悲しい性である。
タダで、こんな凄い武器が借りられるなら、とんでもなく入れ込んでしまうのだ。
「開店記念? この剣がホントにタダかい?」
「うむ、本当にタダだ。1か月の間なら、金も何も要らぬ」
「ううう、で、でもバルバさんよぉ! ひとつ気になる」
「何がだ?」
「ええっと……これって剣自体が……すっげぇヤバい雰囲気なんだけど」
ジャンが言う通り、目の前の剣には人を惹きつける妖しい輝きがある。
先程からジャンは、虜にならぬよう、無理やり目をそらそうとしていたのだ。
「ほう! ヤバイか? くくく、下級冒険者のお前にも少しは分かるようだな」
「…………」
またも下級冒険者と言われ、ジャンは落ち込む。
例によって、バルバは気にしてはしないが。
「ならば、少し説明しよう、これはヤマト刀という東方の剣で……名は妖刀ムラマサだ」
「妖刀? ム、ムラマサ?」
「ああ、この剣もカラドボルグ同様、素晴らしい業物なのだぞ。お前は今回のように使用感を俺へ報告するだけ……とても良い話だろう?」
「た、確かに、タダでこんな上等の武器が使えれば、冒険者の俺っちには嬉しい話だけれど」
「今回のお前の働きを評価して、さらに好条件を付けてやる。この剣を持って王宮へ行けば、タダというだけでなく礼もしよう。うむ、金貨1,000枚を払ってやる」
「金貨1,000枚!? そりゃ、すげぇが! は、話がうますぎないかい?」
「いや相応の謝礼だ」
「な、なら、凄い話だ。で、でも何故、王宮? な、な、何でそんな所へ?」
目の前の、危ない気配を発する剣を持って王宮へ行く?
それって……
ジャンはすご~く、嫌な予感がした。
「うむ、お前がちょうど良いサンプルになるからだ」
「俺がサンプル? な! 何だそれ!? 意味がわかんねぇ」
「まあ、聞け。ムラマサを使えば、お前の戦闘力は格段に上がる。そうだな……おまえひとりで王宮の騎士100人とも渡り合えるぞ」
ひとりで、騎士100人と戦う?
そんな戦いは、常識外である。
常人には到底無理である。
もし相応の戦いに勝って、冒険者ギルドのランク申請をすれば、Bを通りこしてAは確定だろう。
もしかしたら、Sになるかもしれない。
「えええっ!? お、俺っち、ひとりで騎士100人とぉ!? す、すっげぇ!」
「だろう? このムラマサは騎士100人と戦っても、カラドボルグ同様、刃こぼれなどせぬ」
「すげぇよ、そりゃすげぇ、バルバさん!」
ジャンの心が揺れる。
1か月ムラマサを借りて実績を作れば、少なくともランクBには昇格出来ると思ったのだ。
しかしバルバには、まだ話の続きがあるらしい。
「だが」
「だが? だが、って何だい? バルバさん」
「うむ! 剣は問題ないが。ジャン、お前は下級レベルで生身の人間だ。騎士100人と戦えば肉体は疲れる」
「また下級って言う……まあ、疲れるのは当たり前だろうな。でも理由もなく王宮へ行って、騎士100人と戦うなんてとんでもねぇ馬鹿のやる事だ。俺は絶対にやらねぇよ」
「くくくくく、だが、お前は戦わざるをえない。いや、ムラマサが強敵と血を求め、戦いたくなるのだ」
「は? ムラマサが強敵と血を求め、戦いたくなる? 何じゃ、そりゃ?」
謎めいたバルバの言葉……
剣自体が戦いを欲する?
ジャンは、バルバから次に出る言葉を待った。
「うむ、はっきり言えば、ムラマサは呪われた剣なのだ」
「の、呪われているって!?」
「ああ、ほんの少しだけな」
「ほんの少し?」
「ああ、ムラマサを一旦帯刀すれば、理由もなく人間を斬りたくなる」
「な、な、な、何だぁ! それぇ! とんでもねぇ! そんな呪い、全然少しどころじゃねぇぞ!」
ジャンは呆気に取られていた。
どこの世界に、客を殺人鬼にする刀を貸し出す店があるのだろうと。
「俺にとっては、ほんの少しだ。……まあ100人くらい斬れば、ムラマサは気が済むようだ」
「はぁ!!!」
「この王都で戦うのなら、騎士くらいと戦って貰わねば、俺の出す報酬に見合わん」
「…………」
「だが、お前は多分金を受け取れんだろう。力尽きて肉体が動かなくなったところを、怒り狂った騎士達からなぶり殺しにされるだろうからな、くくくくく」
「うっわぁ! それで王宮へ行けっていうのかよぉ! そんなあぶねぇ剣、借りるなんて! じょ、冗談じゃねぇよぉ!!!」
王都の片隅にオープンしたばかり。
謎めいた魔道具の店に、冒険者ジャンの大きな叫び声が響いた。
これが……
後に、ごくごく限られた人間達から『悪魔道具』の店と呼ばれる魔道具店、『放浪』誕生の瞬間であったのだ。
刀身は、そこそこ長い……
貴族が決闘に使うレイピアほどではないが、結構な細身の剣である。
そして、僅かに湾曲した片刃という仕様。
刀身には……ジャンが見た事もない、美しい紋様が現れていた。
「こ、これは?」
ジャンが剣を見つめてると、先程のツェツィリアの瞳と一緒であった。
つい、心が引き込まれ、自分を見失いそうになってしまう。
そう!
戦士として、ジャンの勘が言っている。
この剣は……滅多に出会えない素晴らしい業物《わざもの》だと。
剣へ釘付けになったジャンを見て、バルバは納得したように頷く。
満足そうな笑みも浮かべていた。
そして、
「この剣を……そうだな、今度は10日ではなく、1か月間貸してやろう」
「い、1か月? じゃ、じゃあバルバさん。1か月以内に返せば、の、の、呪われる事はないんだな?」
しかしバルバは何故か、ジャンの質問に答えなかった。
「1か月間、タダで貸してやろう。この放浪の、開店記念サービスだ」
戦士タイプの冒険者として、悲しい性である。
タダで、こんな凄い武器が借りられるなら、とんでもなく入れ込んでしまうのだ。
「開店記念? この剣がホントにタダかい?」
「うむ、本当にタダだ。1か月の間なら、金も何も要らぬ」
「ううう、で、でもバルバさんよぉ! ひとつ気になる」
「何がだ?」
「ええっと……これって剣自体が……すっげぇヤバい雰囲気なんだけど」
ジャンが言う通り、目の前の剣には人を惹きつける妖しい輝きがある。
先程からジャンは、虜にならぬよう、無理やり目をそらそうとしていたのだ。
「ほう! ヤバイか? くくく、下級冒険者のお前にも少しは分かるようだな」
「…………」
またも下級冒険者と言われ、ジャンは落ち込む。
例によって、バルバは気にしてはしないが。
「ならば、少し説明しよう、これはヤマト刀という東方の剣で……名は妖刀ムラマサだ」
「妖刀? ム、ムラマサ?」
「ああ、この剣もカラドボルグ同様、素晴らしい業物なのだぞ。お前は今回のように使用感を俺へ報告するだけ……とても良い話だろう?」
「た、確かに、タダでこんな上等の武器が使えれば、冒険者の俺っちには嬉しい話だけれど」
「今回のお前の働きを評価して、さらに好条件を付けてやる。この剣を持って王宮へ行けば、タダというだけでなく礼もしよう。うむ、金貨1,000枚を払ってやる」
「金貨1,000枚!? そりゃ、すげぇが! は、話がうますぎないかい?」
「いや相応の謝礼だ」
「な、なら、凄い話だ。で、でも何故、王宮? な、な、何でそんな所へ?」
目の前の、危ない気配を発する剣を持って王宮へ行く?
それって……
ジャンはすご~く、嫌な予感がした。
「うむ、お前がちょうど良いサンプルになるからだ」
「俺がサンプル? な! 何だそれ!? 意味がわかんねぇ」
「まあ、聞け。ムラマサを使えば、お前の戦闘力は格段に上がる。そうだな……おまえひとりで王宮の騎士100人とも渡り合えるぞ」
ひとりで、騎士100人と戦う?
そんな戦いは、常識外である。
常人には到底無理である。
もし相応の戦いに勝って、冒険者ギルドのランク申請をすれば、Bを通りこしてAは確定だろう。
もしかしたら、Sになるかもしれない。
「えええっ!? お、俺っち、ひとりで騎士100人とぉ!? す、すっげぇ!」
「だろう? このムラマサは騎士100人と戦っても、カラドボルグ同様、刃こぼれなどせぬ」
「すげぇよ、そりゃすげぇ、バルバさん!」
ジャンの心が揺れる。
1か月ムラマサを借りて実績を作れば、少なくともランクBには昇格出来ると思ったのだ。
しかしバルバには、まだ話の続きがあるらしい。
「だが」
「だが? だが、って何だい? バルバさん」
「うむ! 剣は問題ないが。ジャン、お前は下級レベルで生身の人間だ。騎士100人と戦えば肉体は疲れる」
「また下級って言う……まあ、疲れるのは当たり前だろうな。でも理由もなく王宮へ行って、騎士100人と戦うなんてとんでもねぇ馬鹿のやる事だ。俺は絶対にやらねぇよ」
「くくくくく、だが、お前は戦わざるをえない。いや、ムラマサが強敵と血を求め、戦いたくなるのだ」
「は? ムラマサが強敵と血を求め、戦いたくなる? 何じゃ、そりゃ?」
謎めいたバルバの言葉……
剣自体が戦いを欲する?
ジャンは、バルバから次に出る言葉を待った。
「うむ、はっきり言えば、ムラマサは呪われた剣なのだ」
「の、呪われているって!?」
「ああ、ほんの少しだけな」
「ほんの少し?」
「ああ、ムラマサを一旦帯刀すれば、理由もなく人間を斬りたくなる」
「な、な、な、何だぁ! それぇ! とんでもねぇ! そんな呪い、全然少しどころじゃねぇぞ!」
ジャンは呆気に取られていた。
どこの世界に、客を殺人鬼にする刀を貸し出す店があるのだろうと。
「俺にとっては、ほんの少しだ。……まあ100人くらい斬れば、ムラマサは気が済むようだ」
「はぁ!!!」
「この王都で戦うのなら、騎士くらいと戦って貰わねば、俺の出す報酬に見合わん」
「…………」
「だが、お前は多分金を受け取れんだろう。力尽きて肉体が動かなくなったところを、怒り狂った騎士達からなぶり殺しにされるだろうからな、くくくくく」
「うっわぁ! それで王宮へ行けっていうのかよぉ! そんなあぶねぇ剣、借りるなんて! じょ、冗談じゃねぇよぉ!!!」
王都の片隅にオープンしたばかり。
謎めいた魔道具の店に、冒険者ジャンの大きな叫び声が響いた。
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