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第41話「手ごたえを感じ、自然と笑みが浮かんで来る」

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俺は絶対この波に乗り、幸せをつかんでみせる!

石畳を軽快に駆けながら、俺は決意を新たにしていた。

俺は走りながら、先ほど行ったシミュレーションを思い起こす。

魔物を倒しながら、5周50㎞持久走のクリアを目指す。
5周したら、後は同期に伴走。
ケアしながら最後まで一緒に走りぬくという感じ。

まずは、走る速度の模索と、速度を考えたスタミナの配分だが、
余裕を見て、倍の10周走り切るペースで、バランスを考えた方が良いだろう。

時速8㎞の、ジョギングレベルでしばし走り、徐々に速度を上げて行く事にした。
スタートした時から、勘働き――索敵も怠らない。

時速10㎞、20㎞へ、

……ついでに最高速度も、時速でどれくらい出るのか、確認してみようか。

ダッシュ!
ダッシュ!
ダッシュ!

30㎞! 40㎞!を超えた。

むう!
何となく分かった。
……ここらへんが巡行速度かなと。
つまり、40㎞をキープすれば、スピード、スタミナとも、
効率よく走れるって事だ。

更に速度を上げる。

50㎞! 60㎞! そしてそして!70㎞を超えた。

どうやら、これが現時点での最高速度のようだ。

おお、すげえ、俺こんなに走れたんだ!
と、改めて感動する。

ふと、記憶をたぐる。

……俺がここまで足が速くなったのは、
クラン『シーニュ』へ仮所属してからの事だ。

シーニュ仮所属時代に受けた、苦難の日々を思い出す。

何度も、何度も、何度も……

ミランダの指示により、最前線に置き去り、魔物がうようよしていた、
原野、迷宮最奥へ、たったひとり置き去りにされた……

戦えそうな敵は、出来る限り撃退した。
でも正直に言えば、多勢に無勢とか、
ヤバイ、絶対に敵わないと思った敵が居たら、一目散に逃げた。

俺を、ごみ屑みたいに見捨て、先に逃げたシーニュの奴らの為に、
踏み止まって戦う義理は100%ナッシングだからね。

こんなくだらない事で、まだ16歳なのに、死にたくない。
命がかかっているから、ダッシュ! ダッシュ! ダッシュ!
俺は本気で逃げた、ひたすら逃げた、その繰り返し。

まあ、この逃亡に、危機回避に長けた『勘働き』が役に立ったのは言うまでもない。

そして、走り込みは、体力強化の基本中の基本だよね。
結果、足も速くなったのは勿論、身体能力は著しくアップしたんだ。

基礎体力がついたら、少しずつ自信が出て来た。

それまで、クラン全員でゴブリン、オークを倒した事はあったが、
単独では最弱のスライムや小さな虫の魔物しか、倒した事がなかった。

なので、武技格闘を徹底的にトレーニングし直し、
俺はまず単独で、ゴブリンへ反撃した。

結果はと言えば……呆気なかった。

最初に1体、次に2体、3体……そして5体、10体と戦っても、
あっさり倒す事が出来たのである。

思いきり、拍子抜けした。
あんなにびびって、逃げていたのは、なんだったんだと思った。

しかし……
ゴブリンどもをあっさり倒せたのは、はっきりしていた。

これまで、地道に愚直に、鍛錬して来た武技、格闘をベースにして、
授かった、身体能力の著しいアップ、
更に勘働きによる、索敵、相手の動きの先読みが加味されていた。
だから、容易にゴブリンどもを瞬殺したのだ。

これで自信が更についた。

勢いに乗った俺は、次にオークへ挑戦した。

こちらも結果はと言えば……同じく呆気なかった。
1体、2体、3体……そして5体、10体もあっさり倒す事が出来たのである。

ちなみに、俺が魔物どもをあっさり倒した事を、
ミランダ始め、シーニュの奴らは誰も知らない。
俺をあっさり見捨て、遠くへ逃げていたから。

それに俺は、シーニュへ完全に愛想が尽きていたから、
強くなった事を教える気もなかったのだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

石畳のメイン道路を駆ける俺。

時速70㎞超をした後、スピードダウン。

60㎞、50㎞、……40㎞超の巡航速度へ戻した。

記憶をたぐるのをやめ、駆けながら、再び考える。 

次に、出現する敵をあらかじめお掃除しておく事……だな。
後続が襲われるリスクが低くなるから。

途中までは俺ひとり。
5周走りぬいて、同期へ合流するまで、昨日のようなフォローが不要。

なので、心置きなく思い切り戦える、そんな訓練になると思う。

そんな事を考えながら、走っていると、現れたのは、オーク5体。

こいつら、相変わらず、本能のみで生きているから、動きが単純で分かりやすい、
だからあっという間に瞬殺。
300m先から認識したから、相手の様子も完璧に把握し、楽勝だった。

手ごたえを感じ、自然と笑みが浮かんで来る。

俺の勘働きは、昨日より更に冴えていた。

鍛えて来た五感を始めとした身体能力も、その威力を発揮し始めているのが、
はっきりと分かるからだ。

ジグザグに走り、オークを幻惑させ、
剣で斬り捨て、拳でぶちのめし、蹴り飛ばす。

俺をつかもうと、伸ばして来たオークの腕をつかみ、思い切り投げ飛ばす。

最後の一体は、投げ飛ばして地へ伏したオークへ、
ジャンプしての顔面を、どか~ん!とストンピング。
仰向けになったオークの顔面を粉々に砕き割って、とどめを刺した。

オーク5体を倒した後、更に俺は駆け続け、
ゴブリン、オークをそれぞれ、10体ずつ倒した。

……そして、更に駆け続けると、
最後方を走っているセレスさんへ、追いついたのである。
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