冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!

東導 号

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第139話「ああ、良かった。……さあ、とっとと洞窟を出よう」

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俺とフェルナンさんは、軽くフィストバンプを行い、
ゴブリンどもの巣穴である洞窟の中へと入って行った。

革兜に取り付けた探索用魔導灯に触れると、淡い光が前方を照らした。

これで灯りが確保された。

探索用に『照明魔法』というのがあるらしい。

冒険以外に、日常生活でも、いろいろと使い勝手が良いので、
なるべく早く習得したいと思う。

灯りが確保され、ホッとしたのも束の間、

「う!」

とフェルナンさんは、顔をしかめ、短く唸る。

無理もない。

この洞窟の中は……はっきり言って臭い。
物凄く臭いのだ。

獣特有の臭いと、長期間風呂に入っていないような臭いが混在していた。

否、臭いが立ち込めていると言って良い。

しかし、ここで「臭い!」と大騒ぎするわけにはいかない。

いくら敵が、200m以上先に居るとはいえ、物音をたてないに限る。

俺は声を数トーン落とし、フェルナンさんへ、ささやくように言う。

「フェルナンさん」

対して、俺に合わせ、数トーン落とし、返事をするフェルナンさん。

「お、おう……」

多分「臭いな」という言葉を飲み込んだのだろう。

フェルナンさんの返事は歯切れが悪い。

苦笑し、俺は更に言う。

「魔物や肉食獣を相手にする際、このような臭いは避けて通れません。まあ、慣れるしかないですね」

「わ、分かった……」

「さあ、俺が先に行きます。敵が来る気配はないし、100mくらい先へ進みましょう」

「りょ、了解……」

という事で、俺とフェルナンさんは、洞窟を進んで行く。

自然に出来た洞窟を、手を入れて住みやすいように改造しようという知恵は、
ゴブリンにはない。

俺とフェルナンさんが歩く『通路』も自然のまま。

平たんではなくでこぼこしていて、ところどころ行く手を、
高さ1mほどの岩がふさいでいた。

そういう岩はよじ登り、障害物としてクリアして行くしかない。

「研修時のパルクール訓練が役に立ちましたね」

「全くだ……頑張って良かったよ」

俺が先に行き、敵の所在を確かめながら進み、振り返ると、

フェルナンさんは、顔をしかめながら、及び腰でついて来ていた。

そんなこんなで、進むこと約100m。

「ここいらでOKでしょう。魔導発煙筒をセッティングしてください」

「りょ、了解」

生まれて初めての魔導発煙筒セッティング。

俺は、勘働きスキル――索敵を続けながら、
フェルナンさんがセッティングするのを見守った。

何とかセッティングが終わり、フェルナンさんは発動用のひもを引く。

ひもを引き、3分後に煙が噴き出すのは、使用者に煙害が及ぶのを防ぐ為だ。

フェルナンさんが、ひもを引いてから、しゅううううという音がしている。

魔法煙が噴き出す前触れの音である。

「さあ、急いで戻りましょう。フェルナンさんは、俺に構わずどんどん先に行ってください。俺は入り口から80m手前くらいに自分の魔導発煙筒をセッティングしますから」

「りょ、了解、じゃあ、遠慮なく先に行く……」

「どうぞ、どうぞ」

来た時とは逆。

今度はフェルナンさんが先頭に立ち、俺が後詰めをする形で入口へ戻ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さあ、フェルナンさん、足元に気を付けて、どんどん行ってください」

「わ、分かった」

「転ばないようにしてくださいよ」

「あ、ああ……」

という会話を続けながら、俺とフェルナンさんは入り口を目指す。

そして俺は、フェルナンさんがセッティングした場所から、
20m行った場所、入り口から80m地点で一旦立ち止まり、
手早く魔導発煙筒をセッティング。

すぐに発動用のひもを引いた。

しゅうううという音を聞いた上で、俺は再びフェルナンさんの後を追う。

勘働きスキル――索敵で探ってみたが、最奥に居るらしいゴブリンどもは、
魔導発煙筒に全く気が付かないらしい。

セッティングする場所を2か所にしたのは、ゴブリンどもにより、
万が一、ひとつが破壊されても、発煙が止まらない事を狙ったからだ。

俺がすぐ後ろに居ない事を気付いたフェルナンさんが足を止め、振り返っていた。

心配してくれたようだ。

こういう時に厳しい人なら、有無を言わさず、怒鳴りつけるかもしれない。

しかし、フェルナンさんの優しさを否定する事はない。

注意するのも、言い方ひとつ。

俺は、たたた、とフェルナンさんへ駆け寄り、

「心配かけてすみません。俺は大丈夫ですよ。魔導発煙筒のセッティングと作動完了です」

と言えば、フェルナンさんは安堵し、

「ああ、良かった。……さあ、とっとと洞窟を出よう」

「ですね」

「エルヴェ君、臭い、ついちまったかな、俺たち」

「仕方がないです。セレスさんが消臭の魔法を習得していたら、お願いしましょう」

「ははは、だな」

最後は軽口を叩いた俺とフェルナンさん。

ふたりで洞窟を出ると……
入り口からは「もくもくもく」と、黄色い魔法煙が噴き出して来たのである。
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