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第33話「ネリーが先生③」
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結局……
『ステファニー問題』に関しては、ネリーから妙案が出なかった。
いずれはステファニーも冒険者になる事を思い出し、
『冒険者約定書』第8項の内容から連想して、
プライベートな事情を打ち明けてしまった。
仲良くなった気安さから、つい成り行きで、ネリーに相談してしまったが……
「まずい事をしたのかもしれない」とディーノは心配になった。
何せ、ステファニーは上級貴族たる辺境伯の娘。
身分差にうるさいピオニエ王国では、ディーノ達庶民との『力関係』がはっきりしている。
面倒事になった場合、ディーノへ力を貸した形になるネリーが不快な思いをするのは目に見えていた。
それ故、ディーノは後悔した。
ネリーにはもっと違う別の案件を相談すべきだったと。
適材適所という文字も心に浮かんで来る。
結局、ステファニーとの事は、自分でカタをつけなければならない、
そう感じていた。
「ネリーさん、ごめんなさい。そのお嬢様の件ですが、やっぱり俺、自分で何とかします」
「そ、そんな……」
「彼女の事は俺自身の問題です」
「…………」
「俺が自分の力で決着をつけないとだめだ、強くそう思いました」
「…………」
ネリーはディーノの決意を聞き、苦しそうに顔を歪めた。
ああ、やっぱり話さなければよかった……
しかしディーノは「すぱっ」と切り替えた。
こういう時はやはり、『別案件』でネリーへ頼るに限ると!
「ところでネリーさん、俺が初めて請け負う依頼の件なんですが……」
「…………」
ディーノが問いかけても、ネリーは無言であった。
何か、考えているようである。
「こんな遅い時間に来て、楽ですぐ終わって、その上報酬が高いなんて、虫のいい案件はありませんよね?」
「うふふっ! 依頼はいくつかあるよ~っ。でもランクCに相応しく……結構難度は高いかな!」
「え?」
「実は! ディーノ君のデビュー案件、しっかりキープしといたからね」
「な? で、でも……」
それこそ……ネリーさんが他の冒険者から『エコひいき』と糾弾されるのでは?
という懸念が強くよぎったが……
そんなディーノの気持ちを読み取ったように、
「心配ない! ノープロブレム!」
と言い、ネリーはにこっと笑った。
彼女も気持ちを切り替えたようだ。
まるで、大雨が降った後、大空にかかる美しい虹のような笑顔だと、
ディーノは感じた。
でも……
ダメ元で言ってみたが、そんな優良案件があるなんて意外だった。
「ど、どうして」
「優良案件を敢えて公開せず、ディーノ君用にキープしたのはね、マスター、サブマスター、両名からの厳命なの、いわば業務命令よ」
「は? ミルヴァさんとブランシュさんが!?」
「ええ、君を気持ち良くデビューさせてやれって! それも別々に頼んで来たよ、この果報者ぉ!」
「果報者って……まるで違うと思います。多分、俺の事、『頼りない弟』みたいに思ってるんですよ、ミルヴァさん達」
「あ! それ当たってる。私も凄くそうだから」
「な、成る程、ははは……」
乾いた笑いを発したディーノは、力なくネリーを見つめたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いよいよネリーから依頼を提示して貰える。
つまりディーノの冒険者デビューである。
ワクワクしていたら、何とストップがかかった。
依頼発注に関して、ネリーは事前に『講義』を行うつもりらしい。
「そもそも! 冒険者ギルドが提供する冒険者の依頼案件は大別すると5つに分けられます」
「5つ、成る程!」
「まず、最も大人気なのが討伐系」
討伐依頼が最も大人気……
確かに……
己が強くなりたいという決意は固い。
だが……ディーノは基本的に戦いは苦手だし、大嫌いだ。
話し合いで済めば、それに越したことはない、そう思っている。
でも冒険者になれば『争い事』は付き物だと亡き父は語っていた。
捕食者である人外の魔物は勿論、害意ある人間とも『戦い』は避けては通れないだろう。
「大人気……なんですか、討伐系? 魔物や賊が怖ろしくないんですかね?」
「ええ、ディーノ君みたいに実戦で、恐怖を克服し、己の腕を磨きたいっていう冒険者がわんさか居るから」
「わんさか居る……成る程」
「遂行内容は……我々に仇名す悪魔、魔族、魔物、魔獣、不死者《アンデッド》等を掃討し、討伐料を受け取るもの、報酬は相手の強さや達成条件によって異なるわ。……それに人外だけではなく山賊など人間の討伐依頼もあります」
「うん、分かり易いですね」
「うふ、続いては探索系の依頼、または調査系とも言うわ」
「何となく想像出来ます」
「何か事件事故が起こった時、または省庁や学校関係からの学術調査的な依頼が多いわ。また危険に満ちた未知の領域を確認する事もあるわね」
「な、成る程」
未知の領域……
ディーノは何となく、異界から来るケルベロスを思い出した。
彼が棲む世界は一体どのような感じなのかと考えるが、想像すら出来ない。
「遂行の流れとしては探索し、調査も行い、ギルドを経由して、結果を依頼者へ報告します、当然ですけど、報告内容は事前に決めておきます」
「でしょうね、後で不充分だとか言いがかりをつけられ、挙句の果てに不払いというのトラブルもありえますもの」
「ディーノ君の言う通り、この依頼に限らず、達成条件認識の相違はトラブルの原因になりかねません。冒険者へ依頼提示前に達成条件を精査し、具体的で明確なものにする交渉はギルドの方でやります」
「それ、助かりますね」
ギルドは依頼案件の報酬から手数料を取り、その利益等で運営している。
つまり目の前のネリーの給金もディーノ達冒険者の働きから出る。
「うふふ、じゃあ次、採取系」
「あはは、これも分かり易いですね」
「そうね、採取する対象は多岐にわたるわ」
「ですね!」
「武具防具に使う、魔物や動物の部位、またはズバリ食料、魔法薬の材料等々、いくらでもあるわね」
「で、依頼者が希望する数量を確保し、ギルドへ納品すると完遂」
「その通り! 採取する対象の価値により報酬は異なりまぁす。じゃあ、あと残りはふたつ」
「ふたつ?」
「ええ、まずは護衛系、これは要人警護を始め、商隊などの護衛も含まれる。一定期間、対象を害意を持つ相手から守り切る仕事」
「成る程」
「護衛対象の命を守るのは勿論、怪我もさせられないから、完璧な遂行を求められる難度が高い依頼なの」
「相当、神経を使いますね」
「ええ、護衛対象や条件によって報酬が極端に変わるのも特徴ね」
「ですね」
「最後は以上の範疇《はんちゅう》に入らない依頼、つまりその他」
「その他……ですか」
「ええ、これは基本的にギルドの仕事だけど、報酬を決める際、これまでの例や実績を基に依頼相手と交渉するの」
「成る程」
「その他依頼はあまりにもイレギュラー過ぎて、前例が皆無に近いものなどを指すわ」
「ありがとうございます。理解しました」
「はい、これで事前講義は終了、じゃあ依頼の提示を行います、準備はOK?」
「はいっ! お願い致しますっ」
こうして……
ネリーの事前講義は終了した。
ディーノは徐々に、自分が冒険者になったのだと実感が湧いて来た。
今度こそ!
いよいよ冒険者デビューだ!
俺は父の後を追う!
ロランさんの遺志を受け継ぐ!
ディーノの胸には……
未来への強い決意が激しく燃え盛っていたのだった。
『ステファニー問題』に関しては、ネリーから妙案が出なかった。
いずれはステファニーも冒険者になる事を思い出し、
『冒険者約定書』第8項の内容から連想して、
プライベートな事情を打ち明けてしまった。
仲良くなった気安さから、つい成り行きで、ネリーに相談してしまったが……
「まずい事をしたのかもしれない」とディーノは心配になった。
何せ、ステファニーは上級貴族たる辺境伯の娘。
身分差にうるさいピオニエ王国では、ディーノ達庶民との『力関係』がはっきりしている。
面倒事になった場合、ディーノへ力を貸した形になるネリーが不快な思いをするのは目に見えていた。
それ故、ディーノは後悔した。
ネリーにはもっと違う別の案件を相談すべきだったと。
適材適所という文字も心に浮かんで来る。
結局、ステファニーとの事は、自分でカタをつけなければならない、
そう感じていた。
「ネリーさん、ごめんなさい。そのお嬢様の件ですが、やっぱり俺、自分で何とかします」
「そ、そんな……」
「彼女の事は俺自身の問題です」
「…………」
「俺が自分の力で決着をつけないとだめだ、強くそう思いました」
「…………」
ネリーはディーノの決意を聞き、苦しそうに顔を歪めた。
ああ、やっぱり話さなければよかった……
しかしディーノは「すぱっ」と切り替えた。
こういう時はやはり、『別案件』でネリーへ頼るに限ると!
「ところでネリーさん、俺が初めて請け負う依頼の件なんですが……」
「…………」
ディーノが問いかけても、ネリーは無言であった。
何か、考えているようである。
「こんな遅い時間に来て、楽ですぐ終わって、その上報酬が高いなんて、虫のいい案件はありませんよね?」
「うふふっ! 依頼はいくつかあるよ~っ。でもランクCに相応しく……結構難度は高いかな!」
「え?」
「実は! ディーノ君のデビュー案件、しっかりキープしといたからね」
「な? で、でも……」
それこそ……ネリーさんが他の冒険者から『エコひいき』と糾弾されるのでは?
という懸念が強くよぎったが……
そんなディーノの気持ちを読み取ったように、
「心配ない! ノープロブレム!」
と言い、ネリーはにこっと笑った。
彼女も気持ちを切り替えたようだ。
まるで、大雨が降った後、大空にかかる美しい虹のような笑顔だと、
ディーノは感じた。
でも……
ダメ元で言ってみたが、そんな優良案件があるなんて意外だった。
「ど、どうして」
「優良案件を敢えて公開せず、ディーノ君用にキープしたのはね、マスター、サブマスター、両名からの厳命なの、いわば業務命令よ」
「は? ミルヴァさんとブランシュさんが!?」
「ええ、君を気持ち良くデビューさせてやれって! それも別々に頼んで来たよ、この果報者ぉ!」
「果報者って……まるで違うと思います。多分、俺の事、『頼りない弟』みたいに思ってるんですよ、ミルヴァさん達」
「あ! それ当たってる。私も凄くそうだから」
「な、成る程、ははは……」
乾いた笑いを発したディーノは、力なくネリーを見つめたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
いよいよネリーから依頼を提示して貰える。
つまりディーノの冒険者デビューである。
ワクワクしていたら、何とストップがかかった。
依頼発注に関して、ネリーは事前に『講義』を行うつもりらしい。
「そもそも! 冒険者ギルドが提供する冒険者の依頼案件は大別すると5つに分けられます」
「5つ、成る程!」
「まず、最も大人気なのが討伐系」
討伐依頼が最も大人気……
確かに……
己が強くなりたいという決意は固い。
だが……ディーノは基本的に戦いは苦手だし、大嫌いだ。
話し合いで済めば、それに越したことはない、そう思っている。
でも冒険者になれば『争い事』は付き物だと亡き父は語っていた。
捕食者である人外の魔物は勿論、害意ある人間とも『戦い』は避けては通れないだろう。
「大人気……なんですか、討伐系? 魔物や賊が怖ろしくないんですかね?」
「ええ、ディーノ君みたいに実戦で、恐怖を克服し、己の腕を磨きたいっていう冒険者がわんさか居るから」
「わんさか居る……成る程」
「遂行内容は……我々に仇名す悪魔、魔族、魔物、魔獣、不死者《アンデッド》等を掃討し、討伐料を受け取るもの、報酬は相手の強さや達成条件によって異なるわ。……それに人外だけではなく山賊など人間の討伐依頼もあります」
「うん、分かり易いですね」
「うふ、続いては探索系の依頼、または調査系とも言うわ」
「何となく想像出来ます」
「何か事件事故が起こった時、または省庁や学校関係からの学術調査的な依頼が多いわ。また危険に満ちた未知の領域を確認する事もあるわね」
「な、成る程」
未知の領域……
ディーノは何となく、異界から来るケルベロスを思い出した。
彼が棲む世界は一体どのような感じなのかと考えるが、想像すら出来ない。
「遂行の流れとしては探索し、調査も行い、ギルドを経由して、結果を依頼者へ報告します、当然ですけど、報告内容は事前に決めておきます」
「でしょうね、後で不充分だとか言いがかりをつけられ、挙句の果てに不払いというのトラブルもありえますもの」
「ディーノ君の言う通り、この依頼に限らず、達成条件認識の相違はトラブルの原因になりかねません。冒険者へ依頼提示前に達成条件を精査し、具体的で明確なものにする交渉はギルドの方でやります」
「それ、助かりますね」
ギルドは依頼案件の報酬から手数料を取り、その利益等で運営している。
つまり目の前のネリーの給金もディーノ達冒険者の働きから出る。
「うふふ、じゃあ次、採取系」
「あはは、これも分かり易いですね」
「そうね、採取する対象は多岐にわたるわ」
「ですね!」
「武具防具に使う、魔物や動物の部位、またはズバリ食料、魔法薬の材料等々、いくらでもあるわね」
「で、依頼者が希望する数量を確保し、ギルドへ納品すると完遂」
「その通り! 採取する対象の価値により報酬は異なりまぁす。じゃあ、あと残りはふたつ」
「ふたつ?」
「ええ、まずは護衛系、これは要人警護を始め、商隊などの護衛も含まれる。一定期間、対象を害意を持つ相手から守り切る仕事」
「成る程」
「護衛対象の命を守るのは勿論、怪我もさせられないから、完璧な遂行を求められる難度が高い依頼なの」
「相当、神経を使いますね」
「ええ、護衛対象や条件によって報酬が極端に変わるのも特徴ね」
「ですね」
「最後は以上の範疇《はんちゅう》に入らない依頼、つまりその他」
「その他……ですか」
「ええ、これは基本的にギルドの仕事だけど、報酬を決める際、これまでの例や実績を基に依頼相手と交渉するの」
「成る程」
「その他依頼はあまりにもイレギュラー過ぎて、前例が皆無に近いものなどを指すわ」
「ありがとうございます。理解しました」
「はい、これで事前講義は終了、じゃあ依頼の提示を行います、準備はOK?」
「はいっ! お願い致しますっ」
こうして……
ネリーの事前講義は終了した。
ディーノは徐々に、自分が冒険者になったのだと実感が湧いて来た。
今度こそ!
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ディーノの胸には……
未来への強い決意が激しく燃え盛っていたのだった。
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