気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!

東導 号

文字の大きさ
77 / 145

第77話「記念すべき初デート②」

しおりを挟む
タバサが一行を連れて行ったのは、衣料品店であった。

しかし扱っているのは新品ではない、古着オンリーの衣料品店なのである。

この世界では、衣服は『イージーオーダー』が主流である。

そもそも既製服を作る店が皆無に等しいのだ。
1着1着、注文を受けて作る仕立て屋しかないのである。
個々のサイズに合わせた特別仕様だから自然と高価になる。
 
対して、一般庶民が着る服は安価な『中古服』が殆どである。

でも中古服が、数多の需要に際し、数的に対応が可能なのか? 
という疑問も、当然ながら出て来るだろう。
 
実は……
高い金をかけて凝った服を作っても、
すぐに飽きて処分する、貴族や上級クラスの市民は多い。
その服を自分が廃棄すると偽り、裏でこっそり古着屋へ売却する使用人がたくさん居るのだ。
 
こうして……
王都にある数多の古着屋は成立する。

サイズを少し手直し、バランス良く仕立て直しすれば、
庶民にも手頃な値段で、良質の服が行き渡るという仕組みなのだ。

今回タバサが一行を連れて来たのは、結構な大型店の『古着屋』である。

楽しく買い物が出来るよう、オブジェや小物も置かれ、内装も洗練されている。

扱っているのは男女用共に、
センスが良いお洒落なブリオー、カッコいい法衣《ローブ》がメイン。
種類もサイズも、豊富に取り揃えていた。
 
つまり……
冒険者で魔法使いのタバサが、公私で欲しい衣服ばかりなのだ。

「わあ~、このお店、相変わらず欲しい服がい~っぱい! どれにしようかなあ! た~くさん買っちゃおう!!」

と、ここで、買い物に燃えるタバサにストップがかかる。

「ちょ~っと、待ったあ!」
「そうです、待ちなさい、タバサ!」

そしてストップをかけたのは、意外ともいえる組み合わせのふたりである。

「え? ニーナさん、マドレーヌ姉、な、何?」

そう、ニーナとマドレーヌが制止、鋭く射抜くような視線で、
じっと、タバサを見ているのだ。

「タバサさん、買い物をするのは結構ですし、自由です。それに関しては止めません」
「そうですよ、タバサ! 但し自分のお金で買うのです」

「え? 自分のお金?」

ポカンとするタバサに対し、ふたりの追撃は緩まない。

「そうです、自分の財布にある、自分のお金を使いなさい!」
「絶対、ディーノに、たかってはいけません。そんな事をしたら問答無用で、途中退場させます!」

厳しい表情のニーナとマドレーヌに、タバサはたじろぎ、圧倒される。

「あ、あはは……い、嫌だなあ……じ、自分の着る服は自分で買う、そ、そ、そんなの当たり前じゃない、ですかぁ」

しかし、ここでニーナとマドレーヌ、ふたりの表情は一変。
にやにや笑っている。

「うふふ、タバサさん、額に汗が滝のように流れてますよ」
「悪だくみが図星でしょ? すっごく、噛んでるしね」

「あはは……そんなぁ……で、でも何で急にニーナさんとマドレーヌ姉が、け、結束したんですか?」

タバサにとっては尤もな疑問である。
何故、今迄交流がなかったふたりが、こんなに息の合うところを見せるのか?

「当たり前です! マドレーヌさんとは同志ですから!」
「そう! 戦友ですから!」

実は……
先ほど、ディーノとマドレーヌが会話してから……
マドレーヌからニーナへ、『タバサのたかり癖』の話が行った。
 
優しいディーノに迷惑をかけたくない。 
ふたりは同意した上、意気投合したのだ。
 
女子は恋の気配に鋭いという……
互いにディーノに対し、好意を持つ者という雰囲気を感じた故、
共同戦線を張ろうという約束を交わしたのである。

「同志……戦友」

と、呟くタバサ。
意味不明だという顔付きであった。

しかし、ここでディーノが声を張り上げる。
何か、伝えたい事があるようだ。

「みんな、聞いてくれ! 全部とは言えないが、どのような服でも1着分お金を出そう! だから好きな服を買ってくれ、俺のおごりだ!」

ディーノから発せられた衝撃の発言。
折角、タバサの悪だくみを諫《いさ》め、止めたのに……
 
「ええええっ?」
「ディーノ」

びっくりするニーナとマドレーヌ。
ふたりを他所《よそ》に、ディーノは、同じく呆然としているタバサへ話しかける。

「タバサ」

「な、何?」

「俺、女子とのデートは生まれて初めてだし、こんな素敵な店にも来たことなくてさ。ありがとな、連れて来てくれて」

「…………」

ディーノから、想定外の『礼』を言われたタバサは、返す言葉が見つからない。
そんなタバサをディーノは見つめ、優しく微笑む。

「お前の言う通り、カッコいい服がいっぱいあるよな。……俺も買うから皆で一緒に買おうぜ」

「ディーノ……」

しかしまだ、ディーノの提案は終わらない。
このような時に、稼いだ金を有効に使おうと、ディーノは考えたのだ。

「それと、この後のランチは全て俺のおごり、食べ放題、飲み放題だぞ」

「え?」

食事までと、驚くタバサにディーノは、

「但し、ひとつだけお願いがある。ランチの店は飛竜亭にしてくれないか? 普段、凄くお世話になっているから、俺、少しでも売り上げに貢献したいんだ」

ディーノの言葉を聞いていたジョルジエットも、拳を高々と突き上げる。
彼女の本音は最初「好きな服が、ただで買えてラッキー」程度だった。

だが、ランチの話を聞き、今は大いに感動していた。

「大賛成! さっすがディーノ君、男はやっぱ、粋《いき》なのが一番だよねっ!」

と褒め、女子達へ向かって、

「みんなぁ! 彼のお言葉に甘えて、好きな服を選ぼうよっ! その後は飛竜亭で、大宴会の開始だぁ!」

こうして……
ディーノ達5人デートの第一弾、
『ショッピング』は大いに盛り上がったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

処理中です...