86 / 145
第86話「待ってなさい!」
しおりを挟む
「お願いします、サブマスター! 私ロクサーヌが荒れ狂う暴風なら、ステファニー様はその名を遥かに上回る、天をも揺るがす大嵐……すなわちテンペストとお呼び出来る方なのです!」
ロクサーヌ必死の懇願。
遂に根負けしたブランシュの執り成し。
約15分後……炎の飛燕ことミルヴァ・ラハティが了承。
ステファニーはギルドマスターに直接、実力を見て貰える事となった。
さすがの暴風猛女ステファニーも、配下たるロクサーヌの献身を認めたようである。
「ふん! 偉そうに待たせやがって! でも、ロクサーヌ、ありがと。……助かったわ」
「いえ! 当然の事ですっ!」
応えるロクサーヌへ微笑んだステファニーであったが、一転。
表情を険しくして、ブランシュを睨む。
「でも! どうしてディーノが同席しちゃいけないのよ」
そう、ステファニーは、登録に際し、
ロクサーヌとディーノ、ふたりの同席を望んだのである。
対して、ブランシュは苦笑し、答える。
「本来なら登録に付き添いはなしです。だけど、今回はロクサーヌさんが推薦人&保証人って事で特別措置なのですよ」
「なら! ディーノひとりくらい増えてもどうって事ないでしょ?」
「いえ、全部OKしたら、際限がありませんから」
「もう……分かったわよ」
サブマスターを務めているのは伊達ではない。
淡々とした物言いながら、正論で押し通したブランシュは、
反論するステファニーを「ぴしゃり!」と封じた。
そしてにっこり笑う。
「ご理解頂き、何よりです。ステファニー様」
「ふん!」
仕方がないという雰囲気で、鼻を鳴らしたステファニーは、
今度はディーノへ向かって、
「それよりディーノ」
「何でしょう?」
「確か、あんたはランクBだったわね?」
「ええ、何とか」
「だったら! 今日、最低でもB判定で冒険者登録してやるわ」
「せいぜい頑張ってください」
「はあ? うっすい反応ね。愛する婚約者に対して、もっとましな事は言えないの?」
「ノーコメントです。そもそもステファニー様は『愛する婚約者』じゃないですし」
「ふん! 私の耳に雑音は一切聞こえないわ。それより! 登録が終わるまで絶対に待ってなさいよ、帰ったりしたら許さないから」
「帰りませんよ、一応、約束しましたからね」
「もしも帰ったら……ぶっ殺す」
「了解!」
という事で……
ステファニーの姿は、ブランシュ、ロクサーヌと共に、
ギルドマスター室のある階に向かう、魔導昇降機内へと消えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ステファニー達を見送ったディーノは、
手持ち無沙汰となった。
登録は最低でも、数時間かかる可能性が高い。
ステファニーへ伝えた通り、登録終了までディーノはギルドに居ると約束した。
だから待っているつもりである。
「ぶっ殺す」と脅されたからではない。
よほどの事がない限り約束は、順守する。
ディーノは元々、とても律儀な性格なのだ。
ちらっと、ディーノは業務カウンターを見た。
自分がこれから受ける依頼を、ネリーに問合せて、相談しようと思ったからだ。
しかし未だ『ラッシュ』の時間帯。
押し寄せた冒険者達で、カウンターは大混雑していた。
ネリーは居るのだが、彼女も『てんてこ舞い』という雰囲気である。
多分、どこかの人気店で並ぶ順番待ちの行列の如く……
並んででも何もせず、長い時間を無為に過ごす事になってしまうに違いない。
ネリーと話す事を諦めたディーノは階《フロア》の片隅にある掲示板へ向かった。
掲示板には、依頼を記した紙が多数、ピン止めされている。
ネリーのような担当者から内々で受けられるくらい、
条件の良い依頼はないと認識していた。
だが、他に時間を潰すあてもない。
仕方なく、ディーノは掲示板をチェックする事にした。
カウンターほどではないが、掲示板前にも依頼を求める多くの冒険者が居る。
ディーノは上手く人混みを抜け、掲示板に貼られた依頼書を読んでみた。
『愛犬の散歩担当者募集、動物好きな冒険者歓迎!』
『自宅前のどぶ掃除をしてくれる人募集。綺麗好きな方、大歓迎!』
『市場の買い物の手伝いを求む、重い荷物を運ぶ為、腕力に自信がある方向き』
このような依頼も冒険者ギルドへ来る。
上級と呼ばれるランカーが見向きもしない雑務も、
低レベルの冒険者やリスクを避ける者にとっては重宝される案件である。
身体の鍛錬につながる荷物持ちはまだしも……
ディーノは、犬の散歩やどぶの掃除をするつもりはない。
他の案件も見てみたが……
やはり「これは!」という依頼はなかった。
首を横に振り、踵《きびす》を返し、掲示板前から立ち去ろうとした瞬間。
「おい、そこのお前」
と声がかかった。
ディーノが見やれば……
高価そうな革鎧を身に包んだひとりの少年、そして従者という雰囲気の
ふたりの男、都合3人の若い男性冒険者が立っていた。
声をかけたのは3人のうち、少年のようだ。
育ちのよさそうな雰囲気だが……何となく品がない。
「俺に何か用ですか?」
「そうだ! 用があるから声をかけた。……お前は、あの麗しき人と、どのような関係なのだ?」
少年はもどかしそうにそう言うと……
鋭い視線で、ディーノを睨んだのである。
ロクサーヌ必死の懇願。
遂に根負けしたブランシュの執り成し。
約15分後……炎の飛燕ことミルヴァ・ラハティが了承。
ステファニーはギルドマスターに直接、実力を見て貰える事となった。
さすがの暴風猛女ステファニーも、配下たるロクサーヌの献身を認めたようである。
「ふん! 偉そうに待たせやがって! でも、ロクサーヌ、ありがと。……助かったわ」
「いえ! 当然の事ですっ!」
応えるロクサーヌへ微笑んだステファニーであったが、一転。
表情を険しくして、ブランシュを睨む。
「でも! どうしてディーノが同席しちゃいけないのよ」
そう、ステファニーは、登録に際し、
ロクサーヌとディーノ、ふたりの同席を望んだのである。
対して、ブランシュは苦笑し、答える。
「本来なら登録に付き添いはなしです。だけど、今回はロクサーヌさんが推薦人&保証人って事で特別措置なのですよ」
「なら! ディーノひとりくらい増えてもどうって事ないでしょ?」
「いえ、全部OKしたら、際限がありませんから」
「もう……分かったわよ」
サブマスターを務めているのは伊達ではない。
淡々とした物言いながら、正論で押し通したブランシュは、
反論するステファニーを「ぴしゃり!」と封じた。
そしてにっこり笑う。
「ご理解頂き、何よりです。ステファニー様」
「ふん!」
仕方がないという雰囲気で、鼻を鳴らしたステファニーは、
今度はディーノへ向かって、
「それよりディーノ」
「何でしょう?」
「確か、あんたはランクBだったわね?」
「ええ、何とか」
「だったら! 今日、最低でもB判定で冒険者登録してやるわ」
「せいぜい頑張ってください」
「はあ? うっすい反応ね。愛する婚約者に対して、もっとましな事は言えないの?」
「ノーコメントです。そもそもステファニー様は『愛する婚約者』じゃないですし」
「ふん! 私の耳に雑音は一切聞こえないわ。それより! 登録が終わるまで絶対に待ってなさいよ、帰ったりしたら許さないから」
「帰りませんよ、一応、約束しましたからね」
「もしも帰ったら……ぶっ殺す」
「了解!」
という事で……
ステファニーの姿は、ブランシュ、ロクサーヌと共に、
ギルドマスター室のある階に向かう、魔導昇降機内へと消えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ステファニー達を見送ったディーノは、
手持ち無沙汰となった。
登録は最低でも、数時間かかる可能性が高い。
ステファニーへ伝えた通り、登録終了までディーノはギルドに居ると約束した。
だから待っているつもりである。
「ぶっ殺す」と脅されたからではない。
よほどの事がない限り約束は、順守する。
ディーノは元々、とても律儀な性格なのだ。
ちらっと、ディーノは業務カウンターを見た。
自分がこれから受ける依頼を、ネリーに問合せて、相談しようと思ったからだ。
しかし未だ『ラッシュ』の時間帯。
押し寄せた冒険者達で、カウンターは大混雑していた。
ネリーは居るのだが、彼女も『てんてこ舞い』という雰囲気である。
多分、どこかの人気店で並ぶ順番待ちの行列の如く……
並んででも何もせず、長い時間を無為に過ごす事になってしまうに違いない。
ネリーと話す事を諦めたディーノは階《フロア》の片隅にある掲示板へ向かった。
掲示板には、依頼を記した紙が多数、ピン止めされている。
ネリーのような担当者から内々で受けられるくらい、
条件の良い依頼はないと認識していた。
だが、他に時間を潰すあてもない。
仕方なく、ディーノは掲示板をチェックする事にした。
カウンターほどではないが、掲示板前にも依頼を求める多くの冒険者が居る。
ディーノは上手く人混みを抜け、掲示板に貼られた依頼書を読んでみた。
『愛犬の散歩担当者募集、動物好きな冒険者歓迎!』
『自宅前のどぶ掃除をしてくれる人募集。綺麗好きな方、大歓迎!』
『市場の買い物の手伝いを求む、重い荷物を運ぶ為、腕力に自信がある方向き』
このような依頼も冒険者ギルドへ来る。
上級と呼ばれるランカーが見向きもしない雑務も、
低レベルの冒険者やリスクを避ける者にとっては重宝される案件である。
身体の鍛錬につながる荷物持ちはまだしも……
ディーノは、犬の散歩やどぶの掃除をするつもりはない。
他の案件も見てみたが……
やはり「これは!」という依頼はなかった。
首を横に振り、踵《きびす》を返し、掲示板前から立ち去ろうとした瞬間。
「おい、そこのお前」
と声がかかった。
ディーノが見やれば……
高価そうな革鎧を身に包んだひとりの少年、そして従者という雰囲気の
ふたりの男、都合3人の若い男性冒険者が立っていた。
声をかけたのは3人のうち、少年のようだ。
育ちのよさそうな雰囲気だが……何となく品がない。
「俺に何か用ですか?」
「そうだ! 用があるから声をかけた。……お前は、あの麗しき人と、どのような関係なのだ?」
少年はもどかしそうにそう言うと……
鋭い視線で、ディーノを睨んだのである。
0
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる