気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!

東導 号

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第98話「名も無き英雄②」

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ステファニーから怒鳴られ、「尻を強烈に叩かれた」ような形となり……
 苦笑しながら立ち上がったディーノは、改めて石像へ一礼した。

 と、そこへ声をかけて来たのは村長セザールの孫娘オレリアである。

「ディーノさん」

「ん?」

「どうしたの? クロヴィス様の像にお祈りしたりして」

「ああ、何となくね……それよりクロヴィス様って誰なんだい?」

とディーノは、曖昧あいまいに答えを戻し、歩き始めた。
その横に、オレリアもピタッと寄り添い、歩き始める

「クロヴィス・アシャール様は、このポミエ村のご先祖様と言われる伝説のお方よ」

「え? あの石像の人が、この村のご先祖様? 伝説のお方?」

「うん! ず~っとず~っと昔の時代……ポミエ村は、まだ小さな小さな集落だったの」

「へえ、そうなんだ」

「うん、クロヴィス様はこの村を魔物から救い、村の少女と結婚し、末永く幸せに暮らしたという流浪の騎士様なの、『名も無き英雄』というふたつ名もお持ちなのですよ」

「流浪の騎士……名も無き英雄……」

ディーノはオレリアの言葉を復唱した。
 
実は……不思議な事が起こっていた。

クロヴィスの石像の傍らを通った時、
ディーノの心へ謎めいた声が響いたのである。
『村を頼むぞ、勇者』と……

既に亡霊のロランと邂逅したディーノには、もしやという勘が働く。

未知の存在が、この村の未来を、自分へ託したのかもしれないと。

しかし今、そんな事をオレリアも含め、誰にも言えない。
せっかく村民の気持ちがひとつになっている。
あやふやな事を言い、混乱させるのは得策ではないからだ。

「ディーノさん」

「ん?」

「私の家は、そのクロヴィス様の子孫だって、爺ちゃんが言ってたわ」

「そうなんだ」

とディーノが頷くと、
オレリアは、前方を歩くステファニーへ、柔らかい視線を投げかける。

そのステファニーは「やるき満々」という感じで、
身長2mを超える巨躯のロクサーヌを引き連れ、勢い良く手を振って歩いていた。
『死地』へ向かう者とは思えないくらい明るく、はつらつとしていた。

「ええ……ステファニー様は、あのように張り切っていらして、ありがたいと私は思うけど……」

「思うけど?」

「ステファニー様達が、ポミエ村へ来てくれたのもディーノさんのお陰よね。だから私は貴方をクロヴィス様の再来だと思っているわ」

俺ディーノは、流浪の騎士、名も無き英雄の再来?

「おいおい、オレリアさん。クロヴィス様の再来って、俺はそんな大層な者じゃないよ」

ポミエ村の村民は相当に追い詰められている。
藁をもすがる。
伝説よ、再びって事か……

ディーノは困惑し、手を左右にひらひら振って、否定した。
しかし、オレリアは引き下がらない。

「いいえ! 私は冒険者ギルドでディーノさんを見て、この人ならと思った!」

「え? そ、そう?」

「ええ! 私の直感は正しかったわ」

「直感……」

「うん、私の直感は、大当たりよ!」

「大当たり?」

「ええ、普通ならばありえないわ! 敵は大群、払えるお金も殆どない。この絶望的な状況で、来てくれる人なんか絶対居ないわ!」

「…………」

「でもディーノさん! 貴方はこうして実際にウチの村まで来て、人喰いゴブリンと戦ってくれる」

「…………」

「ディーノさんの心意気と思い遣りに、私との確かな絆を感じるもの」

「オレリアさん……」

「ディーノさん!  私は貴方を信じてる! 私はクロヴィス様の子孫……同時に、クロヴィス様と結ばれた村の少女の子孫でもあるの!」

「ああ、そうだな!」

「この戦いに! 絶対、勝ちましょう! そして勝利の凱旋とともに、私オレリアを迎えに来て!」

熱く語り、迫るオレリアであったが、好事魔多し?

いつの間にか……
ステファニーが腕組みをし、ふたりの行く手に立ちはだかっていた。

傍らにはロクサーヌが苦笑して立っている。

ステファニーは大声で叫ぶ。
どうやら、オレリアの物言いが聞こえたらしい。

「おい! ディーノ!」

「何でしょう? ステファニー様」

「浮かれるのはまだ早い! 戦いに勝ってからよっ!」

「え? 浮かれるのはまだ早い? 戦いに勝ってから? ……何、言っているんですか、一体」

「はあ? ディーノ、わざと、とぼけてるの? その子を第二夫人にする事よっ!」

「え? 第二夫人?」

「ホントにディーノは馬鹿ね! あんたの栄えある第一夫人は、この私、ステファニー様に決まってるでしょ!」

ステファニーは吐き捨てれるように言い、踵を返し、南門へ歩いて行ってしまった。

その後を、相変わらず苦笑したままのロクサーヌが、
大袈裟に肩をすくめ、ついて行ったのである。
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