気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!

東導 号

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第131話「ステファニー様の陰謀②」

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騎士隊隊長クリストフ・シャレット伯爵のねぎらいは、
とても含みのある言い方であった。

ディーノは気になった。
なので、一応確認する事にした。

「はい……まあ、何とか……でも伯爵様、いろいろな意味って何ですか?」

「うむ! ポミエ村の人々を救ってくれたのは、戦う者、つまり王国の騎士としては勿論感謝しているのだが……」

「…………」

「加えて、もっと嬉しかったのは、私の親友、クロード・ルサージュ辺境伯の愛娘ステフィの事だ!」

「えええ!? もっと嬉しかったのは、ス、ステファニー様の事ぉ?」

「うむ! ステフィの困難な戦いを助けた上、彼女を守ってくれた事に、私は特に感謝しているんだ」

クリストフがそう言うのはもっともだ。
 
クリスおじさまに、ステフィちゃん……

昨日のステファニーとの気安いやりとりを見ても……
彼女の父ルサージュ辺境伯は、このクリストフ・シャレット伯爵とは、
よほど親しい友人なのだと、ディーノは思うから。

「はい……それも、まあ、何とかなったという感じですね」

ディーノが控えめな物言いをすると、クリストフは首を横へ振る。

「いやいや謙遜けんそんするな。お前はあまり語らないが、凄い風の魔法剣を使ったと村民からは聞いたのだぞ」

クリストフは現場責任者として上席であるへ、シルヴァン・ベルリオーズ公爵へ、
今回起こった事件の詳細な報告をしなければならない。

ポミエ村において、村民達へも念入りに事情を取材したのは当然である。
 
話をした村民に箝口令かんこうれいはしけない。
責める事もディーノには出来ない。

「はあ……俺の剣技が何とか役に立って良かったです」

ディーノはとりあえず、当たりさわりのないコメントを戻す。

「おいおい、奥ゆかしいな、お前は……というわけで、ディーノ、お前を我が王都騎士隊の特別枠入隊という事で、私からベルリオーズ公爵閣下へ推薦しようと思う」

お前を我が王都騎士隊の特別枠入隊!?
私から公爵閣下へ推薦?

な、何だ、それぇ!

「は?」

「は? ではないぞ、ディーノ」

というクリストフは笑顔……
否、満面の笑みを浮かべている。
 
ディーノは焦り、「ぶんぶん!」と必死に首を横へ振った。

「いやいや……ジャストモーメント! というわけでって何ですか、それ? 俺が騎士隊へ入隊なんて、じょ、冗談ですよね、伯爵様」

「いやいや、と言うのはこっちのセリフだぞ。冗談を言っているのではない。私は至って本気だ」

「ええっ、本気って何故ですか?」

「うむ! 昨夜ステフィから熱心に頼まれたんだ。私にも全く異存はない」

ステファニー様から熱心に頼まれた!?

嫌な……予感がする。
そう、凄く嫌な予感がガンガン攻めて来るのだ。

「ちょ、ちょっと待ってください、伯爵様。ステファニー様から熱心に頼まれたって、一体どういう事ですか? 話が全く見えませんけど」

「うむ! お前の言う通り、最初はステフィのジョークだと思っていた。事が事だけにな」

「な、何をですか?」

「何だ? まだ分からんのか? 察しが悪いな」

クリストフは少し不満そうだ。

せっかく、この私が見込んだお前なのに、少々鈍いぞ!

そう言っているように、ディーノは感じた。

だが、察しが悪いって?
ディーノはピンと来た。
 
先ほど起こった不安が……
黒雲のように「もくもく」と、心の中へ広がって行く……

「…………」

「ディーノ、お前……わざと、この話題を避けてはいないか?」

さすがにクリストフは、ディーノの微妙な気持ちに気付いた?

しかし……どうやら曲解をしているようでもある。
 
「うう……俺にはお構いなく、……仰ってください」

「ならば言おう! 決まってる! お前とステフィの結婚の事さ。そう照れるな」

「げっ!」

ズバリ!
核心を衝かれて、ディーノは動揺した。

そんなディーノを他所よそに、クリストフの話は続いている。

ハッとして、ディーノが見やれば、再び上機嫌なクリストフへ戻っていた。

「じっくり話してみて分かった。ステフィは……あの子は、お前に本気だ。良かったな」

いやいや、本気なんて!
そんなの全然良くないっ!!
 
思わず叫びたい気持ちを、「ぐっ!」とディーノは押さえつける。
無言となる。

「…………」

「ステフィからいろいろとアドバイスされ、成る程と思った。この方法ならお前は身分など関係なくステフィと結婚出来る」

ステファニーからのアドバイス?
そんなの『とんでもない悪知恵』に決まってる!

「ど、ど、どういう方法なのですかっ!」

「うむ! 私の親しい仲間にはな、後継者が居ない貴族が大勢居るのだ」

「後継者が……居ない貴族が大勢……」

「うむ! 彼等からは、文武に優れ、健康な若い男子が居れば、ぜひに! と候補推薦を頼まれておる」

「え? 候補って……」

「ディーノ、お前ならば適任! 養子として文句なしだ」

「ええええ!? よ、よ、養子~っ!?」

「その通り! お前は貴族家の養子、次期当主となり、跡を継ぐのだ!」

「はああっ!?」

「今回の功績ならば、ベルリオーズ公爵閣下も、文句なく入隊にOKを出すだろう! 養子となったお前は、めでたく王都騎士隊所属の貴族となり、晴れてステフィと結婚する事が出来るのだ!」

「…………」

「案ずるな、念の為言っておくが、『跡取り同士』が結婚しても、何の問題もない! どちらの姓を名乗っても、ミドルネームにして、全く新たな家を興すのも構わない!」

「…………」

「領地が離れていても全然ノープロブレム。王都に本家を置き、お前が受け継いだ領地、または、ステフィが受け継ぐフォルスへは政務を代行する管理官を置けば良い。子供が何人か出来たら、分家するのもOKだぞ!」

「…………」

「結果、全てが丸く収まる。我が王都騎士隊はお前という大きな戦力を得て、公爵閣下はお喜びになる! 親友クロードはお前が貴族ならば納得し、お前とステフィの結婚を許可せざるを得ない」

「…………」

「王都騎士隊、跡取りの居ない貴族家、双方にお前を推薦した私の顔も立ち、結婚したステフィは相思相愛で幸福となる、誰もがハッピー、パーフェクトだ!」

「…………」

「ははははは、本当に良かったな。ステフィは可愛いだけではない。頭も抜群に切れるし優しい良い子だぞ」

「…………」

「子供も大好きで良妻賢母。本来は暴力を好まない、戦いなどもってのほかだそうだ」

「…………」

「ステフィと結婚したいお前には大が付く朗報だし、超の付く名案だろう?」

「…………」

うっわ!
このクリストフ・シャレット伯爵……

騎士隊の隊長という地位だから強いだろうし、優秀な貴族に違いない。

そして、ルサージュ辺境伯父娘とは長い付き合いらしいけど……
 
絶対に見誤ってる!
大いに誤解している!
 
優しい?
良妻賢母? 
本来は暴力を好まない?
戦いなどもっての外?
ステファニーを表現する言葉に『不適格なモノ』がいっぱい混ざっている。

第一!! 相思相愛じゃねぇし!!

油断していた!
してやられた!
昨日の「セーフ」は完全にノーカウントとなってしまった。

お~ほっほほほほほほほほぉ~!
あ~はははははははははは~っ!

ディーノの心の中で、ステファニーの高笑いが響いている。

ステファニーが凄く負けず嫌いなのを忘れていた。
彼女は、『やられっ放し』が我慢出来なかった。
 
ディーノがあずかり知らぬところで、
密かに怖ろしい陰謀いんぼうは進んでいたのだ。

片や、同意しないディーノを、訝し気に見るクリストフ。

何故なのか……
栄誉を手に入れ、美しい貴族令嬢とも結婚する……
平民の冒険者にとっては、とんでもなく良い話なのに?
  
?マークをたくさん飛ばすクリストフを、複雑な表情で見つめるディーノは、
どうやってこの危機を回避しようか、必死に考えていたのである。
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