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第5章 神様の新しい棲み家は、俺のネットショップ
42.逃げ出すために向かった玄関に、俺の靴はなかった。神様は、父さんの足止めをしてくれた。でも、父さんには、協力者がいる。仕事の依頼主が。
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俺が家を出るまで、父さんと父さんの奥さんは、部屋から出てこなかった。
神様が、何かをして、足止めしてくれた。
玄関に、俺の靴はなかった。
靴箱を開けて見たけど、どこにも入っていない。
俺が、仕事から逃げ出さないように、靴を処分した?
父さんの靴と、父さんの奥さんの靴は、靴箱に並んでいる。
俺の靴の代わりに、履ける靴は、サンダルか、父さんの靴。
昨日、父さんが運転する車の車窓から見る限り、父さんの新居は、幹線道路から外れていて、電車の駅も近くになかった。
俺のスマホを取り返して、この場所を調べてから、最寄り駅を探すことも考えた。
スマホを探すのは、お金を取り返すよりも、時間がかかる。
財布が棚から落ちてきたから、お金は取り戻せた。
スマホは、どこにあるのか、見当もつかない。
俺は、この家から、一刻も早く出ていく方がいいと感じている。
神様は、俺が我が家にたどり着くまでの間、父さんと父さんの奥さんの足止めはしてくれる。
俺は、父さんと父さんの奥さんが、追いかけてくる心配はしていない。
今、俺が、懸念しているのは、父さんと父さんの奥さんじゃない。
父さんから逃げ出そうとしている俺が、一番見つかってはいけない人物が、父さんの関係者にいる。
父さんの奥さんが、俺を追い出す先に考えていただろう人物。
父さんは、俺の仕事部屋に、俺の仕事を用意していると、最初から、俺に話していた。
父さんの認識は、父さんだけのもの?
父さんの奥さんは、他の場所で俺を働かせることを、父さんに勧めていた。
父さんと父さんの奥さんは、仕事で繋がっている。
父さんが、俺の仕事だと言っていたデータ入力の依頼主が、俺を認識していない、とは言い切れない。
父さんではなく、データ入力の依頼主が、俺に仕事をさせようと捕まえにこないとは、言えない。
俺は、昨日と今日で、用心深く、疑り深くなった。
俺は、サイズの合わない靴とサンダルを見比べて、サンダルで、歩くことにした。
真冬の寒さに、サンダルは辛いけれど、明らかに足に合わない靴よりは、歩き続けることができる、と俺は思った。
上着を急いで取りに戻って
、サンダルを履き、玄関ドアを開ける。
冬の風は、冷たく、顔に突き刺さる。
靴下にサンダルの足の指が、かじかみそう。
寒さにおののきなが、俺は、玄関から一歩踏み出した。
表札の横の住所を確認する。
全く見覚えがない場所。
俺の今までの人生で、縁のなかった場所。
神様が、縁を切ってくれた。
俺が、この家に戻ることは二度とない。
昨日の車窓からの景色を思い出しながら、昨日来た道を戻っていく。
どこか、大通りに出れば、バスか何か走っているはず。
電柱にある住所を見比べながら、歩く。
前方に、こちらへ向かってくる車が見えた。
俺の歩いている道に、それる脇道はない。
俺に車が見えるということは。
走行中の車の運転席から、俺が確認できているはず。
赤の他人ならいい。
通り過ぎてほしい。
びくびくしないようにしよう。
昨日の今日で、痛みのとれていない体には、寒風の中での徒歩移動が辛い。
でも、歩くのを止めたら、俺は終わる気がする。
捕まりたくないなら、前に進まないと。
俺は、顔を上げて堂々と歩く。
足元がサンダルで指先が寒い。
でも、弱っているところを見せたら、絡め取られる。
父さんが、俺にそうしたように。
俺に対する情がなく、俺のことを使ってなんぼ、としか、考えていない人は、俺を丸め込んで使うことに、罪悪感なんて、覚えない。
車は、俺の十メートル手前から減速して、ゆっくりと俺の横を通り過ぎていく。
良かった!
杞憂だった。
俺は、ほっとして、張り詰めていた息を吐き出した。
そのとき。
減速して通り過ぎた車が停まった。
ドアを開けて、誰かがおりてきている音が聞こえる。
俺は、後ろを振り返ることはしなかった。
俺は、無関係なんです、というていを保ちながら、前へと足を進める。
寒さとは、別に、緊張で、肩が強張る。
運転席からおりてきた人物は、歩き出した。
俺の方へ。
「どこへ行くのかな?」
と背後から声がかかった。
運転席でハンドルを握っていたのは、壮年の男性だった。
俺が歩いている道にいるのは、俺とその男性しかいない。
俺に話しかけてきているのは、その男性しかいない。
男性が話しかけている相手は俺しかいない。
どうする?
呼び止められていないなら、無視して進んでも?
俺は、足を止めなかった。
背後の足音が止まる。
このまま進んでいける?
俺は、緊張したまま足を上げる。
そのとき。
背後の男性は、よくとおる低めの声で、俺に確認してきた。
「小野(おの)志春(しはる)くんだよね?
小野(おの)さんの息子さんの。」
と言う背後の男性の声音には、逡巡が見られなかった。
背後の男性は、確信を持って聞いてきている。
この道を来たということは、父さんの関係者で、データ入力の依頼主の可能性が高い。
見つかりたくない人に、見つかってしまった。
神様は、父さんの家で頑張ってくれている。
今の俺の最優先は、俺のできる最善を尽くして、我が家に帰ること。
後戻りしたくないなら、考えろ、俺。
神様が、何かをして、足止めしてくれた。
玄関に、俺の靴はなかった。
靴箱を開けて見たけど、どこにも入っていない。
俺が、仕事から逃げ出さないように、靴を処分した?
父さんの靴と、父さんの奥さんの靴は、靴箱に並んでいる。
俺の靴の代わりに、履ける靴は、サンダルか、父さんの靴。
昨日、父さんが運転する車の車窓から見る限り、父さんの新居は、幹線道路から外れていて、電車の駅も近くになかった。
俺のスマホを取り返して、この場所を調べてから、最寄り駅を探すことも考えた。
スマホを探すのは、お金を取り返すよりも、時間がかかる。
財布が棚から落ちてきたから、お金は取り戻せた。
スマホは、どこにあるのか、見当もつかない。
俺は、この家から、一刻も早く出ていく方がいいと感じている。
神様は、俺が我が家にたどり着くまでの間、父さんと父さんの奥さんの足止めはしてくれる。
俺は、父さんと父さんの奥さんが、追いかけてくる心配はしていない。
今、俺が、懸念しているのは、父さんと父さんの奥さんじゃない。
父さんから逃げ出そうとしている俺が、一番見つかってはいけない人物が、父さんの関係者にいる。
父さんの奥さんが、俺を追い出す先に考えていただろう人物。
父さんは、俺の仕事部屋に、俺の仕事を用意していると、最初から、俺に話していた。
父さんの認識は、父さんだけのもの?
父さんの奥さんは、他の場所で俺を働かせることを、父さんに勧めていた。
父さんと父さんの奥さんは、仕事で繋がっている。
父さんが、俺の仕事だと言っていたデータ入力の依頼主が、俺を認識していない、とは言い切れない。
父さんではなく、データ入力の依頼主が、俺に仕事をさせようと捕まえにこないとは、言えない。
俺は、昨日と今日で、用心深く、疑り深くなった。
俺は、サイズの合わない靴とサンダルを見比べて、サンダルで、歩くことにした。
真冬の寒さに、サンダルは辛いけれど、明らかに足に合わない靴よりは、歩き続けることができる、と俺は思った。
上着を急いで取りに戻って
、サンダルを履き、玄関ドアを開ける。
冬の風は、冷たく、顔に突き刺さる。
靴下にサンダルの足の指が、かじかみそう。
寒さにおののきなが、俺は、玄関から一歩踏み出した。
表札の横の住所を確認する。
全く見覚えがない場所。
俺の今までの人生で、縁のなかった場所。
神様が、縁を切ってくれた。
俺が、この家に戻ることは二度とない。
昨日の車窓からの景色を思い出しながら、昨日来た道を戻っていく。
どこか、大通りに出れば、バスか何か走っているはず。
電柱にある住所を見比べながら、歩く。
前方に、こちらへ向かってくる車が見えた。
俺の歩いている道に、それる脇道はない。
俺に車が見えるということは。
走行中の車の運転席から、俺が確認できているはず。
赤の他人ならいい。
通り過ぎてほしい。
びくびくしないようにしよう。
昨日の今日で、痛みのとれていない体には、寒風の中での徒歩移動が辛い。
でも、歩くのを止めたら、俺は終わる気がする。
捕まりたくないなら、前に進まないと。
俺は、顔を上げて堂々と歩く。
足元がサンダルで指先が寒い。
でも、弱っているところを見せたら、絡め取られる。
父さんが、俺にそうしたように。
俺に対する情がなく、俺のことを使ってなんぼ、としか、考えていない人は、俺を丸め込んで使うことに、罪悪感なんて、覚えない。
車は、俺の十メートル手前から減速して、ゆっくりと俺の横を通り過ぎていく。
良かった!
杞憂だった。
俺は、ほっとして、張り詰めていた息を吐き出した。
そのとき。
減速して通り過ぎた車が停まった。
ドアを開けて、誰かがおりてきている音が聞こえる。
俺は、後ろを振り返ることはしなかった。
俺は、無関係なんです、というていを保ちながら、前へと足を進める。
寒さとは、別に、緊張で、肩が強張る。
運転席からおりてきた人物は、歩き出した。
俺の方へ。
「どこへ行くのかな?」
と背後から声がかかった。
運転席でハンドルを握っていたのは、壮年の男性だった。
俺が歩いている道にいるのは、俺とその男性しかいない。
俺に話しかけてきているのは、その男性しかいない。
男性が話しかけている相手は俺しかいない。
どうする?
呼び止められていないなら、無視して進んでも?
俺は、足を止めなかった。
背後の足音が止まる。
このまま進んでいける?
俺は、緊張したまま足を上げる。
そのとき。
背後の男性は、よくとおる低めの声で、俺に確認してきた。
「小野(おの)志春(しはる)くんだよね?
小野(おの)さんの息子さんの。」
と言う背後の男性の声音には、逡巡が見られなかった。
背後の男性は、確信を持って聞いてきている。
この道を来たということは、父さんの関係者で、データ入力の依頼主の可能性が高い。
見つかりたくない人に、見つかってしまった。
神様は、父さんの家で頑張ってくれている。
今の俺の最優先は、俺のできる最善を尽くして、我が家に帰ること。
後戻りしたくないなら、考えろ、俺。
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