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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
493.サーバル王国の王妃陛下とオレと女神様と、再会した男スパイ。
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オレは、勘違いしていた可能性に気づいた。
サーバル王国の王妃陛下の目的が、オレとシガラキノ様の結婚なら。
ミーレ長官が話していた、ミーレ長官の息子さんと、サーバル王国の王女シガラキノ様との結婚話は、サーバル王国の王妃陛下がミーレ長官に蒔いた餌に過ぎない。
サーバル王国の王妃陛下が、最初にマウンテン王国の女王陛下から提案があった、とオレに話したのは、親切ではなく、王妃陛下の作戦。
ミーレ長官の息子さんとシガラキノ様の結婚案は、ミーレ長官と王妃陛下が企んだものではない。
元々、ミーレ長官のお母さんである女王陛下から提案があって、検討されていたもの。
ミーレ長官の息子さんとサーバル王国の王女シガラキノ様の婚姻を目指す動きは不自然ではない、とオレは思い込んでしまった。
不自然でないはずはないのに。
サーバル王国の王女様の結婚相手に、マウンテン王国から存在を抹消された女王陛下の実の孫息子?
王女様の結婚生活が暗澹たるものにしかならないと分かっていて、結婚話をまとめるかな?
王女様の結婚相手として考えられている孫息子は、王女様よりも十歳くらい年下の平民。
マウンテン王国での身分を捨てて、ケレメイン大公国では平民の身分を得た両親と暮らす平民の子どもと、サーバル王国の王女様が結婚したところで。
サーバル王国の利益になるかな?
ミーレ長官の刺客経験をサーバル王国は、評価したんだろうと、オレは勝手に思っていた。
サーバル王国の王妃陛下の部屋にいる男を見て、オレは思い込みで、視野を狭くしていた、と、気づいた。
サーバル王国は、国王陛下が主導権を握っていると、オレは考えていた。
王妃陛下は、ずっと、国王陛下より前に出てこなかった。
王妃陛下は、伴侶である国王陛下をたててはいるけれど、万事に控え目なわけじゃない。
国王陛下の陰に隠れるようにして、能動的に物事を動かしていた。
サーバル王国の王妃陛下の部屋にいるこの男は、ドリアン王国のスパイじゃなかったんだ。
「サーバル王国の王妃陛下の部屋で、ミーレ長官の奥様と息子さんのところに押しかけていた男に再会するとはなー。」
オレは、女神様と一緒に席を立った。
オレの失策!
男スパイが、オレの味方にならない、ということだけは、分かる。
王妃陛下の部屋から退避しないと!
スパイを送り込んできたのが、マウンテン王国とドリアン王国だけだとオレは思い込んでしまっていた。
マウンテン王国は、国王陛下とやり合った仲で。
ドリアン王国は、現在、侵略してきている国だから。
オレは、サーバル王国を警戒の対象から外してしまっていた。
サーバル王国の人は、女神様の裁定が下ったんだから、もう、ケレメイン大公国に悪巧みはしないだろうと、思っていた。
オレが思うよりも、サーバル王国の人は、背水の陣を意識していた。
オレは、女神様の加護を使って、サーバル王国に勝ったつもりでいた。
ケレメイン大公国を奪いにきたサーバル王国にやり返して、勝てた、と思っていた。
勝った、と思って、すっかり安心していたオレは、サーバル王国に対する警戒心をなくしていた。
サーバル王国は、ケレメイン大公国に対する負けを認めてなんかいなかった。
雪辱を果たす機会を、虎視眈々と狙っていた。
油断したオレが、王妃陛下の部屋に訪問するという格好の好機を。
「これからは、長い付き合いですよ。」
と男スパイ。
嫌だぞ、オレは。
そもそも、初対面から気が合わない仲だぞ、オレ達。
長い付き合いなんかしたら、ストレスがたまる。
「確認しておくけど、スパイくんの主君は、サーバル王国の王妃陛下かな?」
オレは、とっさに女神様の手を引いた。
女神様が、男スパイに負けるとは思わない。
でも。
女神様を連れてきたオレが、女神様をほったらかして逃げるのは、人としてアウトだと思う。
男スパイも、サーバル王国の王妃陛下も、オレの望まないことを、オレにやり遂げようとしている。
「面白いことを聞いてきますね。」
と男スパイ。
男スパイは、オレと女神様へ一直線に歩いてくる。
「サーバル王国のスパイの可能性もあれば、ドリアン王国のスパイの可能性もあるからなー。」
「私がどちらの国の者でも、大公妃殿下には、関係ありませんよ。」
と男スパイ。
オレは、女神様の手を引いて、部屋の出口へ向かった。
サーバル王国の王妃陛下は、部屋の奥から出てきた男スパイに顔色一つ変えず、眉一つ動かさない。
サーバル王国の王妃陛下が、オレと女神様が、席を立っても、何も言わないことに、オレは違和感を覚えた。
男スパイが、サーバル王国の王妃陛下の配下だったら、王妃陛下は、無になっているかな?
「どうして、オレには関係ないと言えるのかなー?」
「大公妃殿下だからですねえ?」
と男スパイ。
ますます、不穏。
オレと女神様は、部屋の出口へと歩く。
オレは、男スパイから目を離さずに、王妃陛下へと質問を投げた。
「王妃陛下。男スパイは、いつ、王妃陛下の元へ来た?」
サーバル王国の王妃陛下の目的が、オレとシガラキノ様の結婚なら。
ミーレ長官が話していた、ミーレ長官の息子さんと、サーバル王国の王女シガラキノ様との結婚話は、サーバル王国の王妃陛下がミーレ長官に蒔いた餌に過ぎない。
サーバル王国の王妃陛下が、最初にマウンテン王国の女王陛下から提案があった、とオレに話したのは、親切ではなく、王妃陛下の作戦。
ミーレ長官の息子さんとシガラキノ様の結婚案は、ミーレ長官と王妃陛下が企んだものではない。
元々、ミーレ長官のお母さんである女王陛下から提案があって、検討されていたもの。
ミーレ長官の息子さんとサーバル王国の王女シガラキノ様の婚姻を目指す動きは不自然ではない、とオレは思い込んでしまった。
不自然でないはずはないのに。
サーバル王国の王女様の結婚相手に、マウンテン王国から存在を抹消された女王陛下の実の孫息子?
王女様の結婚生活が暗澹たるものにしかならないと分かっていて、結婚話をまとめるかな?
王女様の結婚相手として考えられている孫息子は、王女様よりも十歳くらい年下の平民。
マウンテン王国での身分を捨てて、ケレメイン大公国では平民の身分を得た両親と暮らす平民の子どもと、サーバル王国の王女様が結婚したところで。
サーバル王国の利益になるかな?
ミーレ長官の刺客経験をサーバル王国は、評価したんだろうと、オレは勝手に思っていた。
サーバル王国の王妃陛下の部屋にいる男を見て、オレは思い込みで、視野を狭くしていた、と、気づいた。
サーバル王国は、国王陛下が主導権を握っていると、オレは考えていた。
王妃陛下は、ずっと、国王陛下より前に出てこなかった。
王妃陛下は、伴侶である国王陛下をたててはいるけれど、万事に控え目なわけじゃない。
国王陛下の陰に隠れるようにして、能動的に物事を動かしていた。
サーバル王国の王妃陛下の部屋にいるこの男は、ドリアン王国のスパイじゃなかったんだ。
「サーバル王国の王妃陛下の部屋で、ミーレ長官の奥様と息子さんのところに押しかけていた男に再会するとはなー。」
オレは、女神様と一緒に席を立った。
オレの失策!
男スパイが、オレの味方にならない、ということだけは、分かる。
王妃陛下の部屋から退避しないと!
スパイを送り込んできたのが、マウンテン王国とドリアン王国だけだとオレは思い込んでしまっていた。
マウンテン王国は、国王陛下とやり合った仲で。
ドリアン王国は、現在、侵略してきている国だから。
オレは、サーバル王国を警戒の対象から外してしまっていた。
サーバル王国の人は、女神様の裁定が下ったんだから、もう、ケレメイン大公国に悪巧みはしないだろうと、思っていた。
オレが思うよりも、サーバル王国の人は、背水の陣を意識していた。
オレは、女神様の加護を使って、サーバル王国に勝ったつもりでいた。
ケレメイン大公国を奪いにきたサーバル王国にやり返して、勝てた、と思っていた。
勝った、と思って、すっかり安心していたオレは、サーバル王国に対する警戒心をなくしていた。
サーバル王国は、ケレメイン大公国に対する負けを認めてなんかいなかった。
雪辱を果たす機会を、虎視眈々と狙っていた。
油断したオレが、王妃陛下の部屋に訪問するという格好の好機を。
「これからは、長い付き合いですよ。」
と男スパイ。
嫌だぞ、オレは。
そもそも、初対面から気が合わない仲だぞ、オレ達。
長い付き合いなんかしたら、ストレスがたまる。
「確認しておくけど、スパイくんの主君は、サーバル王国の王妃陛下かな?」
オレは、とっさに女神様の手を引いた。
女神様が、男スパイに負けるとは思わない。
でも。
女神様を連れてきたオレが、女神様をほったらかして逃げるのは、人としてアウトだと思う。
男スパイも、サーバル王国の王妃陛下も、オレの望まないことを、オレにやり遂げようとしている。
「面白いことを聞いてきますね。」
と男スパイ。
男スパイは、オレと女神様へ一直線に歩いてくる。
「サーバル王国のスパイの可能性もあれば、ドリアン王国のスパイの可能性もあるからなー。」
「私がどちらの国の者でも、大公妃殿下には、関係ありませんよ。」
と男スパイ。
オレは、女神様の手を引いて、部屋の出口へ向かった。
サーバル王国の王妃陛下は、部屋の奥から出てきた男スパイに顔色一つ変えず、眉一つ動かさない。
サーバル王国の王妃陛下が、オレと女神様が、席を立っても、何も言わないことに、オレは違和感を覚えた。
男スパイが、サーバル王国の王妃陛下の配下だったら、王妃陛下は、無になっているかな?
「どうして、オレには関係ないと言えるのかなー?」
「大公妃殿下だからですねえ?」
と男スパイ。
ますます、不穏。
オレと女神様は、部屋の出口へと歩く。
オレは、男スパイから目を離さずに、王妃陛下へと質問を投げた。
「王妃陛下。男スパイは、いつ、王妃陛下の元へ来た?」
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