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プロローグ
日常
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それは男子高校生の何気ない日常の中で、何気ないノリで始まった。
「これ、見つけたんだけど」
いつもの三人で飯を食っているときにある一人が、いつものようになんの前触れもなく言いだした。
スマホをこちらに見せてニヤニヤ笑っている。画面には見慣れたショッピングサイトが表示されていた。
「え~と……、性転換する薬?」
目の前に座っていたもうひとりの友達、藤田薫がご丁寧に画面に表示されていたものを読み上げた。
「亮太くんはいつも面白いものを見つけてくるね~」
「おい薫、やめろ、こいつのことは放っておけ」
今日も茶色が多数を占める弁当箱へ目を落としながらすぐに話に乗ってしまう薫を注意する。
「なんだよカズ、つれないなー。そんなんだから目が死んでるんだぞ」
スマホはそのままで不満そうにこちらを見たのは、いつも厄介な遊びを考えては周りを巻き込む悪名高き山口亮太だ。
自覚のないトラブルメーカーといったところか。いつも大変な事態を巻き起こすくせに一向に反省する様子がない。
元に今だってまた変なものを見つけてるし。いい加減そのサイトのアカウントを消せ。
「ねぇ、この性転換っていうのはどういうこと?」
薫がきれいな目を輝かせて質問している。
「えーとな、性転換っていうのは……」
「ちょっと、ストップ」
亮太が説明しようとしたところを手で遮る。
「なんだよ、突然」
「そんなことより、こういう話をするってことは、なにか考えがあるんだろ?」
かなり強引に遮った。
高校生にして「性転換」という言葉を知らない純粋な薫に余計な知識を教えたくなかったというのもあるが(というか漢字から推測してほしい)、いつもよりやたらともったいぶる亮太が怪しかった。
見飽きたニヤけ面も今日はより一層不気味だった。
「やけに察しがいいじゃん、カズ。実はな、この薬なんだけど……、もう買っちゃってるんだよねー」
ポケットからしわくちゃの茶封筒を自慢気に見せつける亮太。
薫は「お~」と驚いた顔をしながらもどこか楽しそうな表情だった。口元を隠す動作が可愛らしい。
そのまま封筒を開けて中身のものを机の上に出す。
中から白い錠剤が一粒出てきた。薬にしては少し大きいように感じるサイズ。正直自分でも飲めるかどうか不安になるような大きさだった。
昼休みの教室で男三人がまじまじと机に置かれた薬を見つめている。
「なぁ、これいくらだと思う?」
亮太が自分たちにだけ聞こえる声でしゃべる。
俺は一瞬薫と目を合わせた後、二人して首をかしげることしかできなかった。
「1000円」
亮太が淡々と答えを言った。
「いや、意外と高いな」
「そうか?不思議な体験ができるならこれくらい安いと思ったんだけど」
正気か?この男。そんな薬が本当にあるとおもっているのか?多分、というか確実にお前は騙されているんだぞ?
しかしこんな疑問を持っているのは俺だけのようで、薫も亮太に同調するようにうなずいていた。
「んで、この薬で何するの?」
このままグチグチ言っていても話にならないと思ったので先に進む。
「何するって、そりゃ飲むんだよ」
「けど一錠しかないぞ」
はぁっ、とため息をついて亮太と薫が呆れたように目を見合わせる。
「これだよ」
そう言って二人で拳を前に出した。
「男なら、じゃんけん一発勝負だろ」
***
「ただいまー」
「おかえりー、って何その荷物」
家に帰ると部屋着姿の妹と鉢合わせた。俺の持っていた荷物を見てお風呂上がりのホクホク顔が一瞬で崩れる。
「お兄ちゃんが珍しく服を買ったんだ……」
中身を盗み見しようとしながら探るような目つきでこちらを見てくる。
「いや、違うぞ、これはただの罰ゲームだから」
あらぬ誤解をされないように釈明したが、妹の目には疑いの色が浮かんでいる。
「ふーん……、あ、お風呂沸いてるから」
どうやらこれ以上深入りしても意味ないと判断したのか、話を切り上げて自分の部屋へ戻っていった。
もしかしたらじきにボロが出るから今聞く必要はないと判断したのかもしれないが……。
とにかく荷物が重かったので部屋へ直行した。
「ふーっ、にしてもこんなに買う必要あったのか……?」
服屋の袋を見ながら一人でつぶやく。
中身を開けるとそこには大量の女性用衣類が入っていた。下着から名前のわからないフリフリの服、ジーパン素材のショートパンツやスカートなどジャンルを問わず入っていた。
まあ主に亮太の趣味嗜好が反映されているのだが。
これらを買う理由はただ一つ、あの薬を飲むことになってしまったのだ。
今オレの胃袋の中で絶賛吸収されているであろうあの胡散臭い薬。昼休みのじゃんけんで一人負けを喫した。
未知の薬だったのであらゆる場合に備えてとりあえず服だけは買っておいた。ブラもあらゆるサイズを網羅している。
亮太からは「使わないならちょーだいね!」と言ってきたが、必要ないとわかったらすぐに捨てるつもりだ。
まぁ、起きたら女になっていた!ってそんな漫画や小説の世界のようなことが現実に起こるわけがないんだよな、冷静に考えて。
飲むときは少し焦ったが、今となってはあほくさすぎて……。
明日冗談で女性ものの下着をつけて登校してやろうかな?
とか、そんなことを考えながらベッドに横になっていたら、いつの間にか寝落ちしてしまった。
「これ、見つけたんだけど」
いつもの三人で飯を食っているときにある一人が、いつものようになんの前触れもなく言いだした。
スマホをこちらに見せてニヤニヤ笑っている。画面には見慣れたショッピングサイトが表示されていた。
「え~と……、性転換する薬?」
目の前に座っていたもうひとりの友達、藤田薫がご丁寧に画面に表示されていたものを読み上げた。
「亮太くんはいつも面白いものを見つけてくるね~」
「おい薫、やめろ、こいつのことは放っておけ」
今日も茶色が多数を占める弁当箱へ目を落としながらすぐに話に乗ってしまう薫を注意する。
「なんだよカズ、つれないなー。そんなんだから目が死んでるんだぞ」
スマホはそのままで不満そうにこちらを見たのは、いつも厄介な遊びを考えては周りを巻き込む悪名高き山口亮太だ。
自覚のないトラブルメーカーといったところか。いつも大変な事態を巻き起こすくせに一向に反省する様子がない。
元に今だってまた変なものを見つけてるし。いい加減そのサイトのアカウントを消せ。
「ねぇ、この性転換っていうのはどういうこと?」
薫がきれいな目を輝かせて質問している。
「えーとな、性転換っていうのは……」
「ちょっと、ストップ」
亮太が説明しようとしたところを手で遮る。
「なんだよ、突然」
「そんなことより、こういう話をするってことは、なにか考えがあるんだろ?」
かなり強引に遮った。
高校生にして「性転換」という言葉を知らない純粋な薫に余計な知識を教えたくなかったというのもあるが(というか漢字から推測してほしい)、いつもよりやたらともったいぶる亮太が怪しかった。
見飽きたニヤけ面も今日はより一層不気味だった。
「やけに察しがいいじゃん、カズ。実はな、この薬なんだけど……、もう買っちゃってるんだよねー」
ポケットからしわくちゃの茶封筒を自慢気に見せつける亮太。
薫は「お~」と驚いた顔をしながらもどこか楽しそうな表情だった。口元を隠す動作が可愛らしい。
そのまま封筒を開けて中身のものを机の上に出す。
中から白い錠剤が一粒出てきた。薬にしては少し大きいように感じるサイズ。正直自分でも飲めるかどうか不安になるような大きさだった。
昼休みの教室で男三人がまじまじと机に置かれた薬を見つめている。
「なぁ、これいくらだと思う?」
亮太が自分たちにだけ聞こえる声でしゃべる。
俺は一瞬薫と目を合わせた後、二人して首をかしげることしかできなかった。
「1000円」
亮太が淡々と答えを言った。
「いや、意外と高いな」
「そうか?不思議な体験ができるならこれくらい安いと思ったんだけど」
正気か?この男。そんな薬が本当にあるとおもっているのか?多分、というか確実にお前は騙されているんだぞ?
しかしこんな疑問を持っているのは俺だけのようで、薫も亮太に同調するようにうなずいていた。
「んで、この薬で何するの?」
このままグチグチ言っていても話にならないと思ったので先に進む。
「何するって、そりゃ飲むんだよ」
「けど一錠しかないぞ」
はぁっ、とため息をついて亮太と薫が呆れたように目を見合わせる。
「これだよ」
そう言って二人で拳を前に出した。
「男なら、じゃんけん一発勝負だろ」
***
「ただいまー」
「おかえりー、って何その荷物」
家に帰ると部屋着姿の妹と鉢合わせた。俺の持っていた荷物を見てお風呂上がりのホクホク顔が一瞬で崩れる。
「お兄ちゃんが珍しく服を買ったんだ……」
中身を盗み見しようとしながら探るような目つきでこちらを見てくる。
「いや、違うぞ、これはただの罰ゲームだから」
あらぬ誤解をされないように釈明したが、妹の目には疑いの色が浮かんでいる。
「ふーん……、あ、お風呂沸いてるから」
どうやらこれ以上深入りしても意味ないと判断したのか、話を切り上げて自分の部屋へ戻っていった。
もしかしたらじきにボロが出るから今聞く必要はないと判断したのかもしれないが……。
とにかく荷物が重かったので部屋へ直行した。
「ふーっ、にしてもこんなに買う必要あったのか……?」
服屋の袋を見ながら一人でつぶやく。
中身を開けるとそこには大量の女性用衣類が入っていた。下着から名前のわからないフリフリの服、ジーパン素材のショートパンツやスカートなどジャンルを問わず入っていた。
まあ主に亮太の趣味嗜好が反映されているのだが。
これらを買う理由はただ一つ、あの薬を飲むことになってしまったのだ。
今オレの胃袋の中で絶賛吸収されているであろうあの胡散臭い薬。昼休みのじゃんけんで一人負けを喫した。
未知の薬だったのであらゆる場合に備えてとりあえず服だけは買っておいた。ブラもあらゆるサイズを網羅している。
亮太からは「使わないならちょーだいね!」と言ってきたが、必要ないとわかったらすぐに捨てるつもりだ。
まぁ、起きたら女になっていた!ってそんな漫画や小説の世界のようなことが現実に起こるわけがないんだよな、冷静に考えて。
飲むときは少し焦ったが、今となってはあほくさすぎて……。
明日冗談で女性ものの下着をつけて登校してやろうかな?
とか、そんなことを考えながらベッドに横になっていたら、いつの間にか寝落ちしてしまった。
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