「僕と結婚してください」「断る!」

まるこ

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敏腕王子

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「早坂さんは、学食では食べないの?」

「…なんで、ナチュラルに一緒に食べてるんですか」

「ダメかい?」

「少なくとも目立つので嫌ですね」

「まぁまぁいいじゃん!会長の持ってくるデザート美味しいしー」

ミカの中で完全に
デザート > 私 の図式がまかり通っている!


でも確かにいつも、限定スイーツくれるから密かな楽しみではあるんだよね…
まぁ仕方ないか。背に腹は変えられない。いや、着実に腹の肉に変わってはいる。


「…学食は量も足りなくて、かえって高くつきますから…あれで満足するの、小柄な女子だけじゃないですか?」

そして女子達はお弁当や購買のパンですませることが多い。


「なるほど…体育会系男子達にとっても不足だと…」


ふむふむと頷いているけど、この人の中に
私=体育会系男子並の食事量
の図式が早くも定着しているのが解せない。


そんなことをデザートをちまちまつつきながらぼんやりと考える。
私はこの時、この人の有能さを甘く見ていたのだ。






「は?」

「栄養士の皆さんと相談して、日替わり大ボリューム定食を作ってみたよ。コスト的にも問題ないものを。試食して感想を貰えないかな?」



え、あの話したの一昨日ですよ?


「え、と本当に新メニューを…」

「そう、食べるのが大好きな可愛い可愛いお嫁さんが利用できない食堂なんて価値がないでしょう?潰します?って言ったら、理事長に泣きつかれたから、作ったんだ。」


もはや嫁のとこ突っ込めないほど突っ込みどころ満載だ。なにそれ理事長に直談判したの?そして泣きつかれてからこの短期間でメニュー考案するって。


「佐伯さんも、他のメニューもリニューアルしてるからよければ一緒にどうぞ」

「わーいやったー!新メニュー♪」


くっ!会長、ミカを釣ればわたしも行かざるを得ないってわかってきたな⁉︎


「さぁ、召し上がれ」

「いただきます」

手を合わせて箸を手に取る。
見た目は普通のがっつりトンカツ定食だけど、サラダに味噌汁もついていて栄養バランス的には良さそうだ。

味噌汁を一口。
ほんのりと広がる優しい旨味。
日本人で良かったと思う瞬間第1位(さくら調べ)。
「ちゃんと出汁きいてる」

「具の量を選ぶか出汁をきちんと取るかで悩んだんだけど、やっぱり大味ばかりだと食育に良くないからね」

なるほど。
確かに成長期の高校生、学食でくらい味覚の成長もしっかりしてほしいところだよね。

では、メインのカツを。

「!!!!」


こ、これは…


「すごい…この、サクサク感!お肉のジューシーさっ!お店のカツみたい…!」

「ボリュームは?」

「おっけーです!」

食べ応えもある。そして明らかに前よりいい肉だ。
もふもふ頬張る。

「いいお肉を取り扱ってる業者に、自分達の肉を使った新メニューを定期的に出してアンテナショップ代わりにする契約を交わしたんだ。お肉のグレードも上がってるよ。」

ガツガツ食べる私にを見て口元を綻ばせる。

「あとは、まぁコレは食べ盛りにはいいかなとおもって」

そう言って会長が指差したポップには、[サラダと味噌汁お代わり自由]とあった。

なんと…!
胃袋ブラックホールの高校生達にお代わりの自由を与えるとは…!!

「だ、大丈夫なんですか⁉︎」

「野菜は生産業者から直接買取にしたら、見た目がダメでも味が美味しい訳ありものを大量に入手できるようになったから、たぶん量も問題ないはずだよ」


この人……


「す……すごいです!会長!!!ただの変態ストーカーだと思ってたけど、見直しました!!!」

ミカや周りの人が微妙な顔でこちらを見る。
何か?

「そう?君に喜んでもらえて嬉しいよ。でも、君の食べている可愛い姿を他の人に見られるならやめておけば良かったなぁ」


直後、ブホォ!と吹き出す音と咳き込む音が食堂のあちらこちらで聞こえた。


かくいう私もむぐむぐとかき込んでいたご飯を気管につまらせ、慌ててお代わり自由のお茶で流し込む羽目になったけど、その後、週に何度も食堂に行くことになったのは言うまでもない。

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