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1章 入学編
01 突然の告白
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校門の前に植えられた満開の桜の木が、風に揺られて静かに花びらを落とす。
「よし、いよいよ俺の高校生活が始まるな!」
新生活に胸を高鳴らせながら西池袋学園の校門をくぐろうとした坂田琥太郎は、桜の木の前に立つ少女に気づいた。
美しい銀髪の少女が桜を静かに見つめる姿はまるで一枚の絵画のようだ。透き通るような肌の白さが桜の花の儚さを際立たせていた。
その場所のみ音のない空間が切り取られているような錯覚を抱く。しばしの間その姿に見惚れていた琥太郎だったが、気づくと少女は去っていってしまったようだ。
周りの生徒に不思議そうに見られていることに気づき、ふと我に帰った琥太郎は校舎へ向かった。
「なるべく学校では無難に、普通の人間として過ごそう」
決意を新たにし、下駄箱前に貼り出されたクラス発表の紙を確認する。一年三組に自分の名前を見つけ、さっそく教室へ向かった。
教室に着くと既にほとんどの生徒が席に着いていた。琥太郎も自分の席を探し着席する。
すると、髪をポニーテールにくくったスーツ姿の若い女性が教室に入ってきた。
黒板に「鈴香若菜」と大きく書くと、
「みなさんおはようございます。今日からこの一年三組の担任となります、鈴香若菜です。若菜先生って呼んでくれると嬉しいです。私も新任でみなさんと同じ一年生です。よろしくお願いします」
と自己紹介した。
クラスの生徒が拍手すると、嬉しそうに微笑んだ。お姉さんのような雰囲気のある優しそうな先生だ。
「ではみなさん、入学式が始まりますので教室に荷物を置いて体育館に移動してください」
という若菜先生の指示に従い、クラスメイトは体育館へ移動した。
入学式で来賓や校長先生のありがたい話を聞いて、教室に戻る。
教室にクラスメイトが揃うと、
「まずは自己紹介をしましょう。前の席の人から一人ずつ、順番に教卓に来てください」
と若菜先生が言った。
琥太郎は皆の自己紹介を注意深く聞いていく。なるべくクラスメイトと同じ、悪目立ちしない自己紹介をと自分の話す内容を考えているうちに、すぐに琥太郎の番がきた。少し緊張しつつも、教卓に向かう。
「坂田琥太郎です。趣味は筋トレです。よろしく!」
パチパチとクラスメイトが拍手をくれる。無事、無難な自己紹介ができたようだ。
ホッとして席に着こうとすると、教壇に向かう銀髪の少女が隣を通り過ぎた。朝に見た銀髪の美少女だ。フワリと花のような良い香りが鼻をかすめ、ドキリとする。
教壇に向かう少女を見て、クラスメイトがコソコソと話し出した。
「見て、あの子すっごいかわいい」
「あの子めっちゃ美人じゃね?」
「綺麗な銀の髪、ハーフなのかな?」
「ちっちゃーい。人形みたい!」
男女問わず人気なようで、教壇に立っただけで教室がざわついた。盛り上がるクラスメイトをよそに、琥太郎は眉をひそめる。
「この教室、やけに妖気が濃くないか?」
と呟く。
もしかして、教室の中にあやかしが紛れているのか?と思い周囲を見回す。その間に教壇についた少女は、少し背伸びして自己紹介を始めた。
「佐倉柚と言います。柚って読んでください。将来の夢は、良いお嫁さんになることです」
一瞬教室が静まり返ったあと、再びクラスメイトがざわつきだす。
「なにそれ、かわいい」
「いまどきそんな子いるの?」
「俺の嫁になってくれえ」
「静かに!佐倉さんが話せないでしょう」
と若菜先生が注意すると、教室が静かになった。皆の視線が柚に集中する。
「あらためて見るとホント美人」
「天使だ……」
「ちっちゃくてかわいい」
クラスメイトがまたひそひそと話しはじめた。すると、柚の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「やっと会えましたね、琥太郎くん。ずっと前から好きでした!貴方の子供を産ませてください♡」
「え?俺?」
問題発言を残し、佐倉柚は若菜先生に連れられ生徒相談室へと姿を消した。
「とりあえず続きの自己紹介を続けようよ!」
と真面目そうな女の子が声を上げ、沈黙を破った。自己紹介は一応再開されたものの、クラスメイトはまったく集中できていない。
「なんか凄いこと言ってたぞ」
「琥太郎くんって何者?」
「後継ぎって言ってなかったか?」
自己紹介を続けていると、若菜先生と柚が生徒相談室から帰ってきた。クラスメイトは柚のことが気になっていたが、自己紹介はその後も何事もなく進んだ。自己紹介が終わると、休み時間のチャイムが鳴る。
「はい、15分休憩を取ります。その後、教科書を配りますので時間になったら席についていてください」
と若菜先生が言った。
琥太郎は急いで柚のもとへ行く。
「琥太郎くん、返事は決まりました?」
と頬を赤らめる柚のかわいらしさに思わず琥太郎は目を逸らしてしまう。
「琥太郎が柚ちゃんのところへ行ったぞ!」
「おのれ琥太郎、許すまじ」
「あの二人どんな関係なの?」
クラスメイトは遠巻きに二人を見守る。
「と、とにかく教室を出るぞ!」
琥太郎は柚の手をひき、逃げるように教室を後にした。
「よし、いよいよ俺の高校生活が始まるな!」
新生活に胸を高鳴らせながら西池袋学園の校門をくぐろうとした坂田琥太郎は、桜の木の前に立つ少女に気づいた。
美しい銀髪の少女が桜を静かに見つめる姿はまるで一枚の絵画のようだ。透き通るような肌の白さが桜の花の儚さを際立たせていた。
その場所のみ音のない空間が切り取られているような錯覚を抱く。しばしの間その姿に見惚れていた琥太郎だったが、気づくと少女は去っていってしまったようだ。
周りの生徒に不思議そうに見られていることに気づき、ふと我に帰った琥太郎は校舎へ向かった。
「なるべく学校では無難に、普通の人間として過ごそう」
決意を新たにし、下駄箱前に貼り出されたクラス発表の紙を確認する。一年三組に自分の名前を見つけ、さっそく教室へ向かった。
教室に着くと既にほとんどの生徒が席に着いていた。琥太郎も自分の席を探し着席する。
すると、髪をポニーテールにくくったスーツ姿の若い女性が教室に入ってきた。
黒板に「鈴香若菜」と大きく書くと、
「みなさんおはようございます。今日からこの一年三組の担任となります、鈴香若菜です。若菜先生って呼んでくれると嬉しいです。私も新任でみなさんと同じ一年生です。よろしくお願いします」
と自己紹介した。
クラスの生徒が拍手すると、嬉しそうに微笑んだ。お姉さんのような雰囲気のある優しそうな先生だ。
「ではみなさん、入学式が始まりますので教室に荷物を置いて体育館に移動してください」
という若菜先生の指示に従い、クラスメイトは体育館へ移動した。
入学式で来賓や校長先生のありがたい話を聞いて、教室に戻る。
教室にクラスメイトが揃うと、
「まずは自己紹介をしましょう。前の席の人から一人ずつ、順番に教卓に来てください」
と若菜先生が言った。
琥太郎は皆の自己紹介を注意深く聞いていく。なるべくクラスメイトと同じ、悪目立ちしない自己紹介をと自分の話す内容を考えているうちに、すぐに琥太郎の番がきた。少し緊張しつつも、教卓に向かう。
「坂田琥太郎です。趣味は筋トレです。よろしく!」
パチパチとクラスメイトが拍手をくれる。無事、無難な自己紹介ができたようだ。
ホッとして席に着こうとすると、教壇に向かう銀髪の少女が隣を通り過ぎた。朝に見た銀髪の美少女だ。フワリと花のような良い香りが鼻をかすめ、ドキリとする。
教壇に向かう少女を見て、クラスメイトがコソコソと話し出した。
「見て、あの子すっごいかわいい」
「あの子めっちゃ美人じゃね?」
「綺麗な銀の髪、ハーフなのかな?」
「ちっちゃーい。人形みたい!」
男女問わず人気なようで、教壇に立っただけで教室がざわついた。盛り上がるクラスメイトをよそに、琥太郎は眉をひそめる。
「この教室、やけに妖気が濃くないか?」
と呟く。
もしかして、教室の中にあやかしが紛れているのか?と思い周囲を見回す。その間に教壇についた少女は、少し背伸びして自己紹介を始めた。
「佐倉柚と言います。柚って読んでください。将来の夢は、良いお嫁さんになることです」
一瞬教室が静まり返ったあと、再びクラスメイトがざわつきだす。
「なにそれ、かわいい」
「いまどきそんな子いるの?」
「俺の嫁になってくれえ」
「静かに!佐倉さんが話せないでしょう」
と若菜先生が注意すると、教室が静かになった。皆の視線が柚に集中する。
「あらためて見るとホント美人」
「天使だ……」
「ちっちゃくてかわいい」
クラスメイトがまたひそひそと話しはじめた。すると、柚の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「やっと会えましたね、琥太郎くん。ずっと前から好きでした!貴方の子供を産ませてください♡」
「え?俺?」
問題発言を残し、佐倉柚は若菜先生に連れられ生徒相談室へと姿を消した。
「とりあえず続きの自己紹介を続けようよ!」
と真面目そうな女の子が声を上げ、沈黙を破った。自己紹介は一応再開されたものの、クラスメイトはまったく集中できていない。
「なんか凄いこと言ってたぞ」
「琥太郎くんって何者?」
「後継ぎって言ってなかったか?」
自己紹介を続けていると、若菜先生と柚が生徒相談室から帰ってきた。クラスメイトは柚のことが気になっていたが、自己紹介はその後も何事もなく進んだ。自己紹介が終わると、休み時間のチャイムが鳴る。
「はい、15分休憩を取ります。その後、教科書を配りますので時間になったら席についていてください」
と若菜先生が言った。
琥太郎は急いで柚のもとへ行く。
「琥太郎くん、返事は決まりました?」
と頬を赤らめる柚のかわいらしさに思わず琥太郎は目を逸らしてしまう。
「琥太郎が柚ちゃんのところへ行ったぞ!」
「おのれ琥太郎、許すまじ」
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