22 / 37
3章 学園祭編
21 オン研始動!
しおりを挟む「えー、それではここが今日から我々陰陽道研究会、略してオン研の部室になります!」
ゴールデンウィークを終え、また授業が始まった学園で、賀茂が案内したのは文化部室棟の二階にある一室だった。
「まあ……。これはなかなかお掃除し甲斐がありそうですわ」
と柚が京都人らしく若干皮肉めいた言い回しをする。文化部室棟自体が他の校舎と比べて古めの建物であるのに、部屋自体がしばらく使っていないらしく、物置のようになっていた。
「そうだな、この部室は昔写真部が使ってたらしいんだが、今は廃部になってこのありさまだ。でも贅沢は言ってられないぜ。部室が余ってただけ良かったってもんだ」
「これは早急に掃除しないといけないわね」
という姫華はすでに若干ホコリにむせていた。
「よし!柚ちゃんと姫華は掃除を頼む!俺と琥太郎はいらないものをゴミ出しするぞ」
「了解。すでに部長がなかなか板についてるじゃないか、賀茂」
とニヤリと笑う琥太郎に、
「だろ?こう見えて結構張り切ってるんだぜ」
と賀茂はワイシャツ の腕をめくった。
「琥太郎、そこの写真部が使ってた機材は、若菜先生に倉庫にしまうよう言われてるんだ。手分けして運ぼう」
「了解」
ゴミ捨てが片付いてきた琥太郎は賀茂の指示に従う。
「ところで、もう二週間くらいで文化祭だろ?文化部は出店するみたいだけど、何か出し物は考えてるのか?」
「そうだな。琥太郎は何か良い案ないか?」
「うーん、何が良いだろうなあ」
そんな話をしながら機材を運び終え、部室に2人で戻る。
「ねえ、柚ちゃん。このちり取りってどうやって使うの?」
「姫華さんは本当にお嬢様なんですわね。ゴミをこうやって取るのですわ」
「だって、うちは全部ロボット掃除機だし……」
琥太郎らが帰ってきたことに気づいた柚が嬉しそうに近づいてきた。
「二人とも、だいぶきれいになりましたわ!」
「ほんとだな、ありがとう!残りは俺たちも掃除手伝うから、とっとと綺麗にしちゃおう」
と琥太郎と賀茂は雑巾掛けを始めた。
「ところで柚、誘ってたもう一人の部員って誰なんだ?5人揃ったから部活として認められたんだろ?」
「ええ、それは……」
と柚が答えかけたところで、ドアを開ける大きな音がして皆が振り返った。
「遅れちゃったニャー、編入手続きになかなか手間取っちゃってごめんニャ!」
「み、美乃梨?!」
制服姿で部室にやってきた美乃梨を見て琥太郎は驚きの声を上げる。
「あ、お兄ちゃん!美乃梨もこれからお兄ちゃんと一緒の学校で嬉しいニャ♡」
「美乃梨ちゃんは今日から学園の中等部に編入しましたの。部員に誘ったら喜んでOKしてくれましたわ」
と柚が自慢げに話す。
「よく学園に編入できたな。編入試験は普通より難しいんじゃないのか?」
と尋ねる琥太郎に、
「そのへんは俺の方から理事長に便宜を図っておいたからな」
と賀茂が答えた。いつのまにか理事長にまで伝手を持っている賀茂は何者なのかと琥太郎は不思議に思う。
「ニャ?初めて見た顔がいるニャ?」
「美乃梨ちゃんは初めてですわね。こちら、土御門姫華さん。高等部の私達の同級生ですわ」
「姫華よ。よろしく」
と姫華が握手しようとスッと手を伸ばす。
「つち、みかど……?」
それまで穏やかにしていた美乃梨の目に暗い光が宿ったのを琥太郎は見逃さなかった。
「やめろ、美乃梨!」
琥太郎が叫んだ時には既に美乃梨の手に握られた小刀が姫華の首元に当てられていた。一筋の血がツーッと流れ落ちる。
「お前、土御門家の人間だニャ?」
今にでも小刀で首を掻き切る勢いの殺気を放つ美乃梨に動じず、姫華は見下ろすように美乃梨を睨み返した。
「だとしたらなんだって言うの?猫又なんて下等妖怪如きが私を殺せるとでも?」
「この小刀は呪力が込められた特製の暗器ニャ。殺せるかどうか、試してみるニャ?」
睨み合う両者の間に、琥太郎がなんとか割って入り、美乃梨の小刀を持つ手を抑える。
「二人とも、やめてくれ。妹と友人の殺し合いなんか俺は見たくない」
「だって、こいつら土御門家の人間がパパを殺したんだよ!お兄ちゃんは悔しくないニャ?!」
「落ち着け、美乃梨。父さんを殺したのはあくまで土御門翠流。姫華はむしろ俺たちに手を貸してくれる仲間だ。敵を見誤るな」
頬を膨らませ、美乃梨は仕方なくと言った仕草で小刀を納める。
「お兄ちゃんがそこまで言うなら……。でも、美乃梨のはこいつのことは認めないニャ」
「認めてもらわなくて結構よ。私は私で好きにやらせてもらうわ」
バチバチと睨み合う二人を柚がなんとか宥める。オン研の活動はどうやら前途多難なようだ。
「やれやれ、なんでこの界隈は仲良くできないもんかねえ」
と賀茂はため息をついた。
その頃、一人の女子生徒が夕陽の射す理科準備室に教師から頼まれたプリントの束を運んできていた。
「なんだか今日の理科室はやけに暗いわね。ジメジメしていて、雰囲気が悪いわ」
彼女は、背後に蠢く闇にまったく気づいていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる