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第一章 白銀成長編
第四話 実力を見せるために新参大会へ②
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予選の初戦を突破したあとは、とんとん拍子に進んでいった。
デッパフを倒した影響は予想以上に大きかったようで、戦う前に2人から降参が告げられ不戦勝。
残った1人は槍使いで、何度か打ち込んだものの、すべて防ぎながらじりじりと迫ってくる姿に、顔を引きつらせながら降参を宣言したのだった。
そういう流れで、このグループの通過者はヒイラギに決まった。
(無駄な体力を使わずに済んだのはいいけど、実力を示せたかと言われると、微妙な結果になったなあ)
まともに戦ったのはデッパフ戦と槍使い戦のみ。
しかも、その両方とも試合時間としてはごく短時間のものとなってしまった。
(とりあえずこれは予選だし、本選でちゃんとした試合をすれば、まだ大丈夫かな……)
傭兵として名前を売るために参加したヒイラギ。
名前を売ることで、少しでも人の命を守る機会を増やそうと考えての行動である。
護衛としてより多くの依頼を受けることができれば、自分と同じような惨劇に遭う人を減らせるかもしれない。
ナーラン曰く、知名度が上がり通り名がつくと、指名依頼がくるらしい。
指名依頼は、その人を必要とする人からの名指しでの依頼。
より、やりたいことや得意なことで勝負できる反面、大きな責任が伴う依頼になる。
この話を聞いた後、ヒイラギは、『命を守る』という信念について考え直していた。
この王国に来る前までは、がむしゃらに手の届く範囲の命を守ってきた。
ただ、この国の傭兵会にはたくさんの護衛部門の傭兵がいた。
特に護衛部門の上位3名は、自分よりも多くの命を守ってきたのだろう。
指名依頼を受けて、助けを求める人を救ってきたのだろう。
ただそれは、傭兵会に助けを求めた人だけを守っているにすぎない。
依頼を出す間もなく、守られずに失われていく命がある。
ヒイラギは身をもって知っている。
そうした人々を守る方法はあるか。
ヒイラギが導き出した結論。
絶対的な守護者の存在が必要である。
抑止力という考えにたどり着いたヒイラギは、あの炎の日を思い出し、なお固く決意する。
――自分以外が守れる命も、自分にしか守れない命も、誰にも守れない命ですらも守れる守護者になる――
新参大会はあくまで絶対的な守護者になるための手段であり、過程に過ぎない。
ヒイラギは本選のそのはるか先を見据えていた。
その決意の暗い根っこの部分が、どのような感情であるかも知らずに。
(ひとまず、他の予選の様子を見に行こう。情報収集して損はないはず)
実力を見せ切れていない不安を一度置いておくことにした。
少し離れた場所にある別のグループのステージに移動する。
ここは接戦のようで、周りを取り囲んでいる観客も、予選とは思えない盛り上がりを見せていた。
その輪の中に入れそうにないと判断したヒイラギは、別のステージへと向かった。
たどり着いた次のステージも白熱した試合が行われているようで、かなり賑やかな様子だった。
(……? 賑やか?)
賑やかといえば。
(そういえばナーランさんを見てないな。
あの人身長高いし、存在感があるから、さすがに見つけられないってことはないと思うんだけど……)
応援しに行くぜ! というナーランの言葉を思い出したヒイラギは、4つ目のステージに移動する。
ナーランは自分のステージがわからなかったのかもしれないと考えたからだ。
この数日間ではっきりした、ナーランのせっかちさと少し常識外れなところが浮かぶ。
ありえる。その可能性が高い。
確信を得る中たどり着いたステージでは、どこかで見たことのある光景が広がっていた。
「――降参する。どうやっても勝てそうにない」
「――降参だ。俺は地道に依頼をこなすことにするぜ」
2戦連続で降参を宣言された青年がいた。
重い前髪で目が隠れているため、細かい表情は読み取れなかったが、その宣言を受けても何も感じていないようだった。
このグループの突破者は、その青年に決まった。
よほど鮮烈な倒し方を最初の方にしたのだろうか。
観客たちは唖然としている者が大半を占めていた。
異様な雰囲気のステージをさーっと見回してみたが、ナーランは見当たらなかった。
約束を破るような人ではないと、数日間の付き合いながら思う。
ということは、ステージがわからなかったのではなく、緊急の指名依頼などが入った可能性がある。
(我ながら、非常に失礼なことを考えてしまっていたな。
ナーランさんはびっくりするくらい親しみやすいから、つい身内にするような思考や態度になってしまう)
忘れてしまっていたが、ナーランは運び手部門第一位の”健脚”である。
応援よりも依頼を優先してほしいと考えていたが、そもそもそんな次元の人物ではない。
新参者の応援をするよりも、依頼をこなしたほうが絶対に世のため人のためになる人物である。
「……でもなあ。尊敬するには何というかこう……なあ……」
難しい顔をしてうんうん唸りながら、自分が元々いたステージへと戻るヒイラギ。
結局、ナーランへの態度は、信頼以上尊敬未満の位置に落ち着いたのだった。
デッパフを倒した影響は予想以上に大きかったようで、戦う前に2人から降参が告げられ不戦勝。
残った1人は槍使いで、何度か打ち込んだものの、すべて防ぎながらじりじりと迫ってくる姿に、顔を引きつらせながら降参を宣言したのだった。
そういう流れで、このグループの通過者はヒイラギに決まった。
(無駄な体力を使わずに済んだのはいいけど、実力を示せたかと言われると、微妙な結果になったなあ)
まともに戦ったのはデッパフ戦と槍使い戦のみ。
しかも、その両方とも試合時間としてはごく短時間のものとなってしまった。
(とりあえずこれは予選だし、本選でちゃんとした試合をすれば、まだ大丈夫かな……)
傭兵として名前を売るために参加したヒイラギ。
名前を売ることで、少しでも人の命を守る機会を増やそうと考えての行動である。
護衛としてより多くの依頼を受けることができれば、自分と同じような惨劇に遭う人を減らせるかもしれない。
ナーラン曰く、知名度が上がり通り名がつくと、指名依頼がくるらしい。
指名依頼は、その人を必要とする人からの名指しでの依頼。
より、やりたいことや得意なことで勝負できる反面、大きな責任が伴う依頼になる。
この話を聞いた後、ヒイラギは、『命を守る』という信念について考え直していた。
この王国に来る前までは、がむしゃらに手の届く範囲の命を守ってきた。
ただ、この国の傭兵会にはたくさんの護衛部門の傭兵がいた。
特に護衛部門の上位3名は、自分よりも多くの命を守ってきたのだろう。
指名依頼を受けて、助けを求める人を救ってきたのだろう。
ただそれは、傭兵会に助けを求めた人だけを守っているにすぎない。
依頼を出す間もなく、守られずに失われていく命がある。
ヒイラギは身をもって知っている。
そうした人々を守る方法はあるか。
ヒイラギが導き出した結論。
絶対的な守護者の存在が必要である。
抑止力という考えにたどり着いたヒイラギは、あの炎の日を思い出し、なお固く決意する。
――自分以外が守れる命も、自分にしか守れない命も、誰にも守れない命ですらも守れる守護者になる――
新参大会はあくまで絶対的な守護者になるための手段であり、過程に過ぎない。
ヒイラギは本選のそのはるか先を見据えていた。
その決意の暗い根っこの部分が、どのような感情であるかも知らずに。
(ひとまず、他の予選の様子を見に行こう。情報収集して損はないはず)
実力を見せ切れていない不安を一度置いておくことにした。
少し離れた場所にある別のグループのステージに移動する。
ここは接戦のようで、周りを取り囲んでいる観客も、予選とは思えない盛り上がりを見せていた。
その輪の中に入れそうにないと判断したヒイラギは、別のステージへと向かった。
たどり着いた次のステージも白熱した試合が行われているようで、かなり賑やかな様子だった。
(……? 賑やか?)
賑やかといえば。
(そういえばナーランさんを見てないな。
あの人身長高いし、存在感があるから、さすがに見つけられないってことはないと思うんだけど……)
応援しに行くぜ! というナーランの言葉を思い出したヒイラギは、4つ目のステージに移動する。
ナーランは自分のステージがわからなかったのかもしれないと考えたからだ。
この数日間ではっきりした、ナーランのせっかちさと少し常識外れなところが浮かぶ。
ありえる。その可能性が高い。
確信を得る中たどり着いたステージでは、どこかで見たことのある光景が広がっていた。
「――降参する。どうやっても勝てそうにない」
「――降参だ。俺は地道に依頼をこなすことにするぜ」
2戦連続で降参を宣言された青年がいた。
重い前髪で目が隠れているため、細かい表情は読み取れなかったが、その宣言を受けても何も感じていないようだった。
このグループの突破者は、その青年に決まった。
よほど鮮烈な倒し方を最初の方にしたのだろうか。
観客たちは唖然としている者が大半を占めていた。
異様な雰囲気のステージをさーっと見回してみたが、ナーランは見当たらなかった。
約束を破るような人ではないと、数日間の付き合いながら思う。
ということは、ステージがわからなかったのではなく、緊急の指名依頼などが入った可能性がある。
(我ながら、非常に失礼なことを考えてしまっていたな。
ナーランさんはびっくりするくらい親しみやすいから、つい身内にするような思考や態度になってしまう)
忘れてしまっていたが、ナーランは運び手部門第一位の”健脚”である。
応援よりも依頼を優先してほしいと考えていたが、そもそもそんな次元の人物ではない。
新参者の応援をするよりも、依頼をこなしたほうが絶対に世のため人のためになる人物である。
「……でもなあ。尊敬するには何というかこう……なあ……」
難しい顔をしてうんうん唸りながら、自分が元々いたステージへと戻るヒイラギ。
結局、ナーランへの態度は、信頼以上尊敬未満の位置に落ち着いたのだった。
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