永久不変の剣を手に、人々の命の守護者となる

なで鯨

文字の大きさ
33 / 66
第一章 白銀成長編

第三十三話 精鋭4人で討伐へ

しおりを挟む
「すみません、遅くなりました」

 ヒイラギは傭兵会本部の2階にある防音部屋へと入室する。
 そこにはオニキスのほか、顔を知らない2名の傭兵が言葉を発さずに座っていた。
 なんとも重々しい雰囲気にヒイラギは気を引き締めなおした。

 ヒイラギがここに来た理由は、スクイフのところで何かを勘違いした傭兵に話を聞いたからだった。
 曰く、傭兵会が緊急でヒイラギを呼んでいるとのことだった。
 ヒイラギは受付のイルの元へ急ぐと、今から緊急会議が行われるため参加してほしいと言われたのだった。

「ああ、気にすることはない。緊急の呼び立てに応じてもらってすまない」

 大きな机の上に両肘をついた目つきの鋭い男がヒイラギを労う。
 
 その言葉に丁寧にお辞儀すると、ヒイラギは空いている席へと座った。

「改めて、急な呼び出しにも関わらず快く参集してもらったこと感謝する。今回は傭兵会本部から君たちへ直接、指名依頼するために集まってもらった」

 各々の席にはその依頼内容が書かれている紙が重しの下に置かれていた。
 ヒイラギは簡単に目を通し、そして眉をひそめた。

「私は傭兵会会長兼本部長のオルドウスだ。君たちの活躍はいつも耳にしている」

 睨んでいるかのような眼光のまま淡々と自己紹介を終えた。
 そして自分の手元にある依頼書へと目を落とす。

「さっそく依頼内容だが、傭兵失踪しっそうの元凶を探し出し討伐すること。これが君たちへの依頼だ」

 依頼書には傭兵の失踪は事故などではなく、意図的に誰かもしくは団体が傭兵を狙っていると書かれていた。
 以前、調査隊を組んで調べた際に、王国南側の森を担当した隊が丸ごと戻ってこなかったとのことだった。
 10人で1つの隊を全滅させたとあれば、並々ならぬ脅威であり、傭兵会としてはこれ以上傭兵を失うわけにはいかないという判断の元、指名依頼が出されたらしい。

 だが、ヒイラギはそこではなく、おそらく自分が呼ばれた理由であろう一文から目が離せなかった。

「また、最近はもっと奇妙なことも起きている。それは、死体が消えているということだ」

 いくつかの場所で死体が跡形もなく消えていることが書かれていたが、そのうちの1つにダリーの名前があった。
 ダリーは確かにヒイラギの目の前で頭を自身の銃で撃ち、様々なものが飛び散って死んだはずだった。
 しかしそこには何かがあったような形成は一切なく、獣などに食い荒らされた様子もないと書かれていた。

「この2つに関連性があるのか疑問に思う者もいるだろうが、何かが起きているときに起きる奇妙なことは十中八九関連性があるものだ。もし関係がなかったとしても、そのような異常なものを相手にしているという心で臨んでほしい」

 ここでヒイラギは依頼の内容を整理した。
 傭兵を失踪させている元凶を探し出して倒すこと。
 その者もしくは団体は、跡形もなく死体を消し去っている異常なものの可能性が高い。
 大きくまとめるとそのような内容だった。

「それで、今回はなぜこの4人なんだ」

 無精ひげを生やした白髪交じりの男が、落ち着いた声で疑問を口にした。

「1人ずつ簡単に指名理由を説明しよう。まずは”白銀の守護者”ヒイラギ・アクロくん」

 ヒイラギは名前を呼ばれただけで背筋が伸びた。
 射抜くような視線を受けて、思わず目を反らしてしまった。

「彼は一番最近に消失したダリーの死を目の前で見ている者であり、敵味方関係なしに命を守る優れた傭兵だ。ダリーの現場を見て何かに気付く可能性、および討伐にも必ず力になると考えて指名した」

 ヒイラギはダリーの現場の確認のためだけに呼ばれたのかと考えていた。
 しかし、本部長のオルドウスはヒイラギの今までの短い期間に積み上げた功績と信頼を評価していた。
 そのことを率直な言葉で伝えられ、ヒイラギは体に力が湧く感覚を覚えた。

「”天駆る暗殺者”コロッガ・オニキスくん。彼の機動力はみな知っている通りだ。上空からの偵察及び伝令役、戦闘の際の奇襲を期待して指名した」

 ”武器狩り”のときに助けてもらって以降、ヒイラギはオニキスと言葉を交わしておらず、若干気まずい思いをヒイラギは抱いていた。
 当の本人は何も気にしていないのか、ヒイラギを見ても何の変化も見せなかった。

「”堅固爆砕”ジョン・プロローズくん。現、護衛部門第一位の彼がいればどのような相手であろうとも戦い抜けると見込んだ」

 過大な評価にも動じず、無精ひげをなでるだけのジョン。
 彼はヒイラギを見て、ほう、と小さく口にした。
 そして何かが腑に落ちたのか本部長オルドウスに視線を移した。

「”ディープ・ダウン”コン・カルーグくん。傭兵部門第三位の実力者だ。正面を切った戦闘においてはスリークくんも一目置くほどだ」
「一目置かれた覚えはないっすが、精一杯力になろうと思うっすよ」

 白い歯を見せながら、重々しい雰囲気を意に介さずひょうひょうと答えたのは、通り名”ディープ・ダウン”のコンだった。
 この会議の場においても上裸であることからも、彼の自分を貫く姿勢がうかがえる。

「あとはそのスリークくんにも声はかけているが、来られるかはわからない。つまりこの場の4名が少数精鋭。この事態に私が最適だと指名した者たちだ。君たちの健闘と無事を祈る」

 本部長のオルドウスの言葉に背中を押され部屋を出たヒイラギは、やる気と力にみなぎっていた。
 
 そのヒイラギに案内されて、4人は最初にダリーが死んだ場所を見に行くことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...