キミロマン

松丹子

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18 意地悪

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 陽菜は懇願するような目で俺を見たけど、それで諦めるつもりは毛頭ない。
 自慰の様子なんて、元カレに晒したことのない姿だろう。
 俺は無意識に浮かぶ微笑みのまま、陽菜をそっと起き上がらせた。

「陽菜。見せて。お願い」

 俺の素直なお願いに、陽菜が弱いことは知っている。
 元々、頼まれたら断れない姉御肌なところがあるのだ。
 内面は、甘えんぼの末っ子なくせに。
 本人に自覚があるのか分からないそんなギャップも、陽菜が愛しく思える一面だ。

「俺が正面にいると、緊張しちゃう?」

 座ったまま困惑に揺れる陽菜の目を見据え、真正面で首を傾げる。

「それなら……おいで」

 手を伸ばすと、恐る恐る近づいてきた。俺の腕に収まった陽菜を、くるりと横向きにする。
 ベッドの横、少しスペースを置いたそこには、おあつらえ向きに全身鏡が置いてある。
 きっと毎日、あれでコーディネイトを確認しているのだろう。

「見える?」

 全身鏡には、ベッドの上に座った陽菜が映っていた。それを挟み込むように足を広げた俺が、後ろから彼女を抱きしめている。
 陽菜は泣きそうな顔で鏡の中の俺を見た。

「……あず」
「ん」

 振り向く陽菜に唇を落として、また腕をそっと撫でる。陽菜の身体は震えた。

 ねえ陽菜。俺が欲しいんでしょ。

 もうすでに硬くなったそこを、陽菜の尻に押し付ける。
 でも、まだ我慢。

「陽菜。見せて」

 優しく優しく囁くと、陽菜はまた泣きそうな顔になった。

「ふふ。……可愛い」

 頬にキスをすると、陽菜の手を、彼女の局部に持っていく。
 ミニスカートをはいた彼女の中は、もう湿っていることだろう。

「手でしてたの? それとも、何か道具を使ってたの?」

 陽菜の太ももを、スカート越しにさする。
 陽菜は膝を重ねたまま、困ったように俺の袖を握る。

「教えて、陽菜」

 陽菜は黙ったまま、首をふるふる振った。
 可愛いけど、許さない。

「見せてくれないなら、今日はもう帰ろうかな」

 陽菜がはっとした顔で俺を見上げた。
 目を泳がせ、唇を引き結ぶ。
 諦めたようにベッドを降り、箪笥の中から、先端の丸い何かを取り出した。

「それでしてたの?」

 陽菜は黙って、それを俺の手に押し付ける。俺は受け取って、また「おいで」と陽菜に両手を広げた。
 陽菜はおとなしく俺の腕に収まるけれど、全身鏡には背を向けている。

「そっちじゃないでしょ」
「やだ……」

 消え入りそうな声が直接下半身に響く。
 ここで気弱な声を聴くのは……かなりいい。
 対陽菜限定の加虐性質に笑いそうになる。

「じゃあ、俺の正面でする?」

 陽菜はすがるような目で俺を見上げたけれど、俺は微笑んでキスを返した。
 陽菜は観念したのか、俺の胸に背を当て、全身鏡へ向き直る。
 そこには俺に包まれた陽菜が映っていた。

「これを、どこに当ててたの?」

 鏡の前で脚を開く気にならないのだろう。きちっと閉じられた膝の外側を、陽菜に渡されたバイブで撫でる。
 陽菜は鏡の中の俺を見つめる。俺は内股に手を入れ、その膝を優しく開かせる。

「どこ? ……ここ?」

 ぶぶぶぶぶ、と弱い振動を、下着越しのそこに当てる。陽菜がもぞもぞと身じろぎした。
 あえて少し逸らして当てているのに、気づいているのかいないのか、

「東、いじわる」
「陽菜が可愛いからだよ」

 即答するや、陽菜の顔は真っ赤になった。

「やだ、もう、こんなの」
「じゃあ、やめる?」

 ぷつ、と震えを止める。陽菜の身体がふるりと震えた。

「東ぁ」

 潤んだ目。懇願するような表情。
 どっちも俺をあおってるだけだよ、陽菜。
 可愛すぎるその姿を、もっと見たい。

「はい、じゃあ自分でしてみて」

 陽菜にバイブを渡すと、陽菜がまた泣きそうな顔になった。
 少しでもリラックスさせてあげようと、背中から抱きしめる。首筋にキスをする。腕を撫でる。耳元で名前を囁く。
 それでも、彼女が本当に触れて欲しいであろうところには、手を触れない。

 陽菜はようやく、バイブを局部へと寄せた。

 ***

「っ、ん、んっ……」

 陽菜の手の中のバイブが、陽菜の身体を震わせる。
 目をつぶろうとする陽菜に、「目を開けて。鏡の中の俺を見てて」と優しく囁くと、「やだぁ」と声が返ってくる。俺を見るにしても、必然的に目に入る自分の痴態が恥ずかしいのだろう。
 陽菜は顔を真っ赤にしながら、局部にバイブを触れる。

「手伝うね」

 俺はそっと囁いて、彼女の腕を、腿を、撫でさする。
 直接脚に触れる度、陽菜の身体はぴくんと跳ねた。「っ」と息を止める姿がまた可愛い。

「は、ぁ、あず」
「うん、いるよ。ここに」

 陽菜の高ぶりを感じながら、俺の高ぶりをその臀部に押し付ける。痛く突っ張ったそれの感触は、服越しでも確かに陽菜に届いたのだろう。「はぁ」とつく吐息にますます艶を聞き取って、俺自身もふるりと震えた。

「可愛い。陽菜……胸、触ってもいい?」
「き、聞かないで、いちいち」

 言うのを聞いて、ホックを外す。Tシャツを引き上げると、カップにおさまった胸が姿を現す。

「大きいね」

 俺はそのカップを半分だけずらして、そっと下から包み込む。

「えっちだね、陽菜」
「っ、誰のせい……!」

 陽菜の反論は、嬌声に紛れた。俺がカップに隠れた方の胸の先端をこすったからだ。

「っ、あ、あ、や、やん、それ」
「イく? いいよ、イって」
「は、ぁあ、ああ」

 服越しに乳首をこすり上げながら、露わになった胸をもみ揺する。全身鏡に映った陽菜は、乱れてうっすらと汗ばんで、ひどく官能的だ。

「陽菜、すげぇエロい……そんなに、見られながらするの、好き?」
「す、好きじゃ、な……ぁ、あっ」
「いいよ、イっても」

 俺は胸を持ち上げて、ちゅぅ、と吸い付いた。陽菜の身体に力が入る。高ぶりを見て取って、少し強めに乳首を吸った。「ぁ!」と可愛い嬌声の後、びくんびくんと身体がしなる。息を荒げて弛緩した身体を抱きとめ、優しく撫でさすった。

「は、はぁ……東ぁ……」

 息を整えながら、陽菜が俺にキスをねだる。可愛いおねだりに応えると、バイブの音が消えて静かになった部屋に水音が響いた。
 陽菜がほっとしたように、俺にもたれかかる。

「……それで?」

 俺の問いに、陽菜の身体がこわばった。
 確認するように見上げられて、俺は微笑む。

「それだけで、終わり?」

 内腿を撫でると、そこは下着越しにも十分わかるほどに湿っていた。

「こんなに、とろとろにして……それだけ?」

 陽菜がぶんぶん首を振る。さすがにこれ以上はできないと言うのだろう。
 俺は笑った。
 まあ、初めてにしては上出来だ。

「じゃあ、陽菜の代わりに……俺がしてあげるね」

 陽菜はこくりと頷いたけど、たぶんちょっと彼女が思っていたのとは違うだろう。
 俺は笑って、頬に口づけた。
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