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第一章 ちかづく
14 責任放棄
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朝、喉の渇きで目が覚めた俺は、水を求めてベッドから出ようとした。
腕が布団から出た途端、素肌に当たる寒さに負けて、また布団に潜り込む。
隙間なくぴったりと俺に張り付いていた橘が、わずかに身動きした。
俺は冷えた腕を温めるように橘の背に手を回す。
ふくよかとは言えない体型だが、それでも男のそれとは違う。柔らかい身体と滑らかな肌が心地好い。
橘がもぞもぞ動いた。起きたようだ。
ぼんやりした目が俺をとらえる。
「……かんざ、」
開いた口を静かに唇で塞いで、もう一度抱き込んだ。
橘はなされるがままにじっとしている。
橘の肩先につっこんだ鼻を、その胸元へ下げていく。
大きいとはいえない膨らみに額を当てて、小さく呻いた。
「痛ってぇ……」
完全に飲み過ぎだ。頭痛が動悸に合わせて響く。
橘は俺の髪を撫でるように頭に手を添えた。
「二日酔い?」
あまり高くない声がありがたい。
「そうらしい」
久々すぎてこの辛さを忘れていた。
橘が笑う。
「珍しいね」
笑うリズムに合わせて胸が上下に動く。その動きが頭に響く。
「じっとしてろ。笑うと響く」
「俺様すぎ。いつどれだけ笑おうと私の自由です」
橘は言いながらまだくすくす笑っている。
人ごとだと思いやがって。
俺は悔しくなって、うりゃ、と布団をはいだ。
きゃあ、と橘が悲鳴を上げる。
「さっむ、ちょっと!風邪引いたらどーすんのよ!」
「仕事休めていいんじゃねぇの」
「たまの有休くらい好きなとき取りたいっつーの!」
橘は言って、俺から布団を奪い返そうと引っ張る。
「痛てて……おい、俺は二日酔いだっつってんだろ」
ったく乱暴なやつ、と言いながら、布団を持ったまま橘の身体を包む。
「うぷ」
俺の胸に顔をぶつけて、橘が呻いた。
小さな仕返しに俺は笑って、またも痛みに頭を抱える。
「痛てぇ」
「自業自得よ」
橘がまた笑った。
少しして、橘はおもむろにベッドから降りた。手近にあった大判のショールを身体に巻き付け、服を取りに行く。
俺はガンガン鳴る頭で、ぼんやりその姿を見ていた。
「はい」
スウェットを身につけた橘は、水が入ったコップを俺に手渡した。
サンキュ、と言って受け取り、一気に飲み干す。
「もう一杯いる?」
「もらう」
橘は微笑んで、また水を汲むと俺に渡した。
今度は少しずつ飲む。
その間に、橘はおずおずと服を差し出した。
「この前、サイズ小さかったみたいだから……ワンサイズ大きいのにしてみたけど」
新しいTシャツとジャージ。この前の見るからにパジャマというものではなく、近くのコンビニ程度なら外出もできそうなものだった。
「……お前ってさ」
呆れ返って言うより先に、橘が俺の口を手で覆った。
「言わないで。自分が馬鹿みたいなのは分かってる」
俺の口を覆う手の先には、耳まで真っ赤になった橘の顔があった。
馬鹿というなら、俺も同類か。
そう思って嘆息し、服を受けとる。
それを見てホッとしたように橘は笑い、お湯を沸かすと言って台所へ向かった。
俺はのろのろと服を身につける。橘はそれを見て笑いながら言った。ずいぶんご機嫌だ。
「下着はないけど」
「だからあっても困るっつの」
服を身につけてから、俺は一息ついた。
「味噌汁飲む?」
「あー、いいねぇ」
「お酒飲んだ次の日の味噌汁って、美味しいよねぇ」
橘は言いながら冷蔵庫を開け、長ネギと豆腐を取り出した。
トントンとリズミカルな包丁の音が聞こえる。
あれこれ考えることを完全に放棄した俺は、またベッドに横たわりながらその音を聞いていた。
腕が布団から出た途端、素肌に当たる寒さに負けて、また布団に潜り込む。
隙間なくぴったりと俺に張り付いていた橘が、わずかに身動きした。
俺は冷えた腕を温めるように橘の背に手を回す。
ふくよかとは言えない体型だが、それでも男のそれとは違う。柔らかい身体と滑らかな肌が心地好い。
橘がもぞもぞ動いた。起きたようだ。
ぼんやりした目が俺をとらえる。
「……かんざ、」
開いた口を静かに唇で塞いで、もう一度抱き込んだ。
橘はなされるがままにじっとしている。
橘の肩先につっこんだ鼻を、その胸元へ下げていく。
大きいとはいえない膨らみに額を当てて、小さく呻いた。
「痛ってぇ……」
完全に飲み過ぎだ。頭痛が動悸に合わせて響く。
橘は俺の髪を撫でるように頭に手を添えた。
「二日酔い?」
あまり高くない声がありがたい。
「そうらしい」
久々すぎてこの辛さを忘れていた。
橘が笑う。
「珍しいね」
笑うリズムに合わせて胸が上下に動く。その動きが頭に響く。
「じっとしてろ。笑うと響く」
「俺様すぎ。いつどれだけ笑おうと私の自由です」
橘は言いながらまだくすくす笑っている。
人ごとだと思いやがって。
俺は悔しくなって、うりゃ、と布団をはいだ。
きゃあ、と橘が悲鳴を上げる。
「さっむ、ちょっと!風邪引いたらどーすんのよ!」
「仕事休めていいんじゃねぇの」
「たまの有休くらい好きなとき取りたいっつーの!」
橘は言って、俺から布団を奪い返そうと引っ張る。
「痛てて……おい、俺は二日酔いだっつってんだろ」
ったく乱暴なやつ、と言いながら、布団を持ったまま橘の身体を包む。
「うぷ」
俺の胸に顔をぶつけて、橘が呻いた。
小さな仕返しに俺は笑って、またも痛みに頭を抱える。
「痛てぇ」
「自業自得よ」
橘がまた笑った。
少しして、橘はおもむろにベッドから降りた。手近にあった大判のショールを身体に巻き付け、服を取りに行く。
俺はガンガン鳴る頭で、ぼんやりその姿を見ていた。
「はい」
スウェットを身につけた橘は、水が入ったコップを俺に手渡した。
サンキュ、と言って受け取り、一気に飲み干す。
「もう一杯いる?」
「もらう」
橘は微笑んで、また水を汲むと俺に渡した。
今度は少しずつ飲む。
その間に、橘はおずおずと服を差し出した。
「この前、サイズ小さかったみたいだから……ワンサイズ大きいのにしてみたけど」
新しいTシャツとジャージ。この前の見るからにパジャマというものではなく、近くのコンビニ程度なら外出もできそうなものだった。
「……お前ってさ」
呆れ返って言うより先に、橘が俺の口を手で覆った。
「言わないで。自分が馬鹿みたいなのは分かってる」
俺の口を覆う手の先には、耳まで真っ赤になった橘の顔があった。
馬鹿というなら、俺も同類か。
そう思って嘆息し、服を受けとる。
それを見てホッとしたように橘は笑い、お湯を沸かすと言って台所へ向かった。
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「下着はないけど」
「だからあっても困るっつの」
服を身につけてから、俺は一息ついた。
「味噌汁飲む?」
「あー、いいねぇ」
「お酒飲んだ次の日の味噌汁って、美味しいよねぇ」
橘は言いながら冷蔵庫を開け、長ネギと豆腐を取り出した。
トントンとリズミカルな包丁の音が聞こえる。
あれこれ考えることを完全に放棄した俺は、またベッドに横たわりながらその音を聞いていた。
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