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.12 呪いの解き方
81 小悪魔
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どうにかこうにかムスコを落ち着けて、礼奈の待つ露天風呂に入った。
軽く身体を洗ったらしい礼奈は、ちょうど湯船に入ろうとしてたとこらしい慌てて湯に身体を沈ませるのが見えた。
「お、落ち着いた?」
「ああ……まあな」
なんとなく互いに視線を逸らしながら会話を交わす。
湯船に背中を向けて洗い場の椅子に座った。
「やっぱり、露天風呂って気持ちいいね」
後ろで、ふぅーっ、と満足げな吐息とともに声が聞こえて、ちらりと振り向いた。
紅潮した頬と遠くを見る目。さっき俺を見つめてた、すがるようなまなざしを不意に思い出して、またひとり動揺した。
「せやな」と短く答えると、シャワーのノブをひねった。
はぁー……もう……礼奈はどこまで俺をハマらせれば気が済むんやろ……いや、本人には自覚ないんやろうけど……ほんま、好きが過ぎてどうしようもないで。
こういう、普通のときにはこんな純真無垢でかわいいくせに、ベッドの上では結構……あああああ、あかん、あかんて! 考えたらあかん!!
髪はさっき洗ったし、洗うつもりもなかったのに、ざばーって思い切りシャワーかけてもうた。取りつくろうのも面倒で、そのままシャンプーを手にガシガシ頭を洗う。
ああ、でもよかったかもしれんな。髪洗う間は目ぇ閉じとるし、頭も冷やせるはずや。
ふぅーっと息を吐き出したとき、「栄太兄」てえらい近くで声が聞こえた。自分でもギャグかっちゅうくらいびくりと身体が跳ねて、礼奈が「どうしたの?」と笑う。
「ど、どうしたのって、礼奈こそどうした?」
「うん。……背中、流してあげるよ」
礼奈は穏やかに言うて、俺の横から手を伸ばした。たぶん、ボディーソープをタオルにつけたんやろう。肩に当たる腕の温もりと柔らかさが気になって、今動いたらあかんでてムスコに言い聞かせるのに必死で、じっと耐えた。
「お、おおきに……」
礼奈の持ったタオルが、俺の背に当たる。心臓はまたバクバクいい始めて、股んとこタオルかけとけばよかったて後悔しながら、そろりそろり膝を閉じる。
そんな俺の気持ちも知らんで、礼奈はふふっと笑った。
「背中、広いね。洗い甲斐がある」
「そ……そうか?」
「うん。って言っても、比べるのお母さんだから当然だけど」
くすくす笑うその声は、耳障りが良くてかわいくて、気恥ずかしくてむずむずする。また、抱きしめたい。キスしたい。膨れ上がる欲望をどうにか押しとどめて、シャワーに手を伸ばした。
「も、もうええで。……おおきに」
「うん」
礼奈は軽く手を洗うと、また湯船に戻った。ひたひたと水に濡れた足音を聞いた後、頭からシャワーを浴びる。これで煩悩を洗い流すんや。煩悩を――
「んんんんんーっ」
伸びでもしてるらしい礼奈の声が、変になまめかしく聞こえてまた、ムスコが跳ねる。
――あかんもうこれどうにもならへんやん!
礼奈の前には俺の理性なんてあっけなく崩れ去ってまう。
情けなさに自分でも呆れながら、どうにかこうにか身体を洗い終えて、湯船につかる。俺が浸かりきるまでそれとなくよそを向いてた礼奈は、俺がふぅと吐息をつくとこちらを向いた。
「……気持ちいいね」
「せやな」
同意を得られて嬉しいのか、ふふっと笑うその唇に、一筋、髪が張り付いた。細い指が拭うようにそれを払い、俺の肩にこてんと頭を寄せてくる。
じわりと、お湯やないものがこころをあたためる。
「……幸せだなぁ」
ぽつり、と礼奈が言うた。不意打ちの声に胸がいっぱいになって声が出ず、ひといきの後、「うん」とうなずく。礼奈が笑って、その震えが湯を揺らす。
ああ……せやな。ほんま、幸せや。
ちら、と見下ろすと、礼奈も俺を見上げた。恥ずかしいんやろか、湯の中では窮屈やろと思うくらい両足を引き寄せてて、膝につぶれた胸が見える。もう、さんざ見てるのに。それでも恥ずかしがるとこ、ほんまかわいい。
顔を近づけようとしかけて、どうにか堪えた。ここでキスでもすれば、止まらへんような気がして。
う、ムスコも反応しとる。初めての快感を覚えてもうたから……ううぅ、知ったらもう戻れへんな、これ。
ときどき揺れる湯の温もりに、礼奈の中の感覚を思い出した。あかん、すぐのぼせそうや。
俺はさりげなさを装って身体を引き上げ、石造りの縁に腰を下ろした。もちろんソコはタオルで隠す。
「あれ? もういいの?」
「ああ……なんやのぼせそうで」
「えぇ? 少ししか入ってないのに」
笑われるけど、違うねん。俺がのぼせそうなのは温泉やなくて……ああ、もうええわ、分からんでも。
気まずくて目を逸らすと、くすくす笑った礼奈が、俺のふとももに頬を寄せてきた。
……え、何?
困惑しながら見下ろすと、礼奈はいたずらっぽい顔で笑って……タオル越しにも存在を主張し始めたそこに、軽く口づける。
「れっ、礼奈っ?」
裏返った声で呼ぶと、ふふっとまた、いたずらっぽく笑われる。
「よくがんばりました」
なんちゃって。とごまかしそうに笑う礼奈に、俺は息を止めて――
――もしかしてこの子、真性の小悪魔なんやないの?
そのまま息を飲み込んだら、ごきゅん、て変な音がした。
軽く身体を洗ったらしい礼奈は、ちょうど湯船に入ろうとしてたとこらしい慌てて湯に身体を沈ませるのが見えた。
「お、落ち着いた?」
「ああ……まあな」
なんとなく互いに視線を逸らしながら会話を交わす。
湯船に背中を向けて洗い場の椅子に座った。
「やっぱり、露天風呂って気持ちいいね」
後ろで、ふぅーっ、と満足げな吐息とともに声が聞こえて、ちらりと振り向いた。
紅潮した頬と遠くを見る目。さっき俺を見つめてた、すがるようなまなざしを不意に思い出して、またひとり動揺した。
「せやな」と短く答えると、シャワーのノブをひねった。
はぁー……もう……礼奈はどこまで俺をハマらせれば気が済むんやろ……いや、本人には自覚ないんやろうけど……ほんま、好きが過ぎてどうしようもないで。
こういう、普通のときにはこんな純真無垢でかわいいくせに、ベッドの上では結構……あああああ、あかん、あかんて! 考えたらあかん!!
髪はさっき洗ったし、洗うつもりもなかったのに、ざばーって思い切りシャワーかけてもうた。取りつくろうのも面倒で、そのままシャンプーを手にガシガシ頭を洗う。
ああ、でもよかったかもしれんな。髪洗う間は目ぇ閉じとるし、頭も冷やせるはずや。
ふぅーっと息を吐き出したとき、「栄太兄」てえらい近くで声が聞こえた。自分でもギャグかっちゅうくらいびくりと身体が跳ねて、礼奈が「どうしたの?」と笑う。
「ど、どうしたのって、礼奈こそどうした?」
「うん。……背中、流してあげるよ」
礼奈は穏やかに言うて、俺の横から手を伸ばした。たぶん、ボディーソープをタオルにつけたんやろう。肩に当たる腕の温もりと柔らかさが気になって、今動いたらあかんでてムスコに言い聞かせるのに必死で、じっと耐えた。
「お、おおきに……」
礼奈の持ったタオルが、俺の背に当たる。心臓はまたバクバクいい始めて、股んとこタオルかけとけばよかったて後悔しながら、そろりそろり膝を閉じる。
そんな俺の気持ちも知らんで、礼奈はふふっと笑った。
「背中、広いね。洗い甲斐がある」
「そ……そうか?」
「うん。って言っても、比べるのお母さんだから当然だけど」
くすくす笑うその声は、耳障りが良くてかわいくて、気恥ずかしくてむずむずする。また、抱きしめたい。キスしたい。膨れ上がる欲望をどうにか押しとどめて、シャワーに手を伸ばした。
「も、もうええで。……おおきに」
「うん」
礼奈は軽く手を洗うと、また湯船に戻った。ひたひたと水に濡れた足音を聞いた後、頭からシャワーを浴びる。これで煩悩を洗い流すんや。煩悩を――
「んんんんんーっ」
伸びでもしてるらしい礼奈の声が、変になまめかしく聞こえてまた、ムスコが跳ねる。
――あかんもうこれどうにもならへんやん!
礼奈の前には俺の理性なんてあっけなく崩れ去ってまう。
情けなさに自分でも呆れながら、どうにかこうにか身体を洗い終えて、湯船につかる。俺が浸かりきるまでそれとなくよそを向いてた礼奈は、俺がふぅと吐息をつくとこちらを向いた。
「……気持ちいいね」
「せやな」
同意を得られて嬉しいのか、ふふっと笑うその唇に、一筋、髪が張り付いた。細い指が拭うようにそれを払い、俺の肩にこてんと頭を寄せてくる。
じわりと、お湯やないものがこころをあたためる。
「……幸せだなぁ」
ぽつり、と礼奈が言うた。不意打ちの声に胸がいっぱいになって声が出ず、ひといきの後、「うん」とうなずく。礼奈が笑って、その震えが湯を揺らす。
ああ……せやな。ほんま、幸せや。
ちら、と見下ろすと、礼奈も俺を見上げた。恥ずかしいんやろか、湯の中では窮屈やろと思うくらい両足を引き寄せてて、膝につぶれた胸が見える。もう、さんざ見てるのに。それでも恥ずかしがるとこ、ほんまかわいい。
顔を近づけようとしかけて、どうにか堪えた。ここでキスでもすれば、止まらへんような気がして。
う、ムスコも反応しとる。初めての快感を覚えてもうたから……ううぅ、知ったらもう戻れへんな、これ。
ときどき揺れる湯の温もりに、礼奈の中の感覚を思い出した。あかん、すぐのぼせそうや。
俺はさりげなさを装って身体を引き上げ、石造りの縁に腰を下ろした。もちろんソコはタオルで隠す。
「あれ? もういいの?」
「ああ……なんやのぼせそうで」
「えぇ? 少ししか入ってないのに」
笑われるけど、違うねん。俺がのぼせそうなのは温泉やなくて……ああ、もうええわ、分からんでも。
気まずくて目を逸らすと、くすくす笑った礼奈が、俺のふとももに頬を寄せてきた。
……え、何?
困惑しながら見下ろすと、礼奈はいたずらっぽい顔で笑って……タオル越しにも存在を主張し始めたそこに、軽く口づける。
「れっ、礼奈っ?」
裏返った声で呼ぶと、ふふっとまた、いたずらっぽく笑われる。
「よくがんばりました」
なんちゃって。とごまかしそうに笑う礼奈に、俺は息を止めて――
――もしかしてこの子、真性の小悪魔なんやないの?
そのまま息を飲み込んだら、ごきゅん、て変な音がした。
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