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(7)疑念のひとつは解決した
一日の初めに七海と会うために朝のラジオ体操に参加していた優太だったが、その朝は行かなかった。
遠い海上を北上する小さい台風の影響で、朝から叩きつけるような雨が降ったり止んだりしていたからだ。
しかし天気が良くても休んだかもしれない。
七海に対する疑念をどうすることもできず、彼女と顔を合わせるのが辛いという気持ちが強く働いていた。
6時半・・・いつもだったらラジオ体操が始まる時間に、LINEの着信。
七海からだった。
『今日は雨で残念でしたね でも午後は待ってます』
七海からのLINEはいつも絵文字もスタンプもなにもない、文字だけの簡素なもの。
そもそもやり取り自体がほとんどなく、事務連絡のようなものばかり。
あの時に優太は「付き合ってください」と告白して、彼女がそれを受け入れたものだと思っていた。
しかし果たしてそれは「付き合っている」ふたりのLINEと言えるのか?
清楚で知的な七海と付き合っているというのは、優太の思い上がりのような気がしてきた。
だいだい、どうしてそんな彼女が僕なんかと・・・一歩引いて冷静に考えれば、おかしいことではないか?
だから、七海のもとへは行かない、という選択肢も有り得た。
けれどもやっぱり、返信した。
『いつもの時間に、待っててください』
たとえ七海がいわゆる『サセ子』でそんな彼女に遊ばれているとしても、一緒にいたいという思いは抑えられなかった。
たとえ体だけの関係であっても、そしてそれが辛く苦しいことであっても、想いは断ち切れなかった。
・・・午後には天気も回復し、気まぐれに強い風は吹いたが夏の太陽が戻ってきた。
一本道の果ての白い家へ歩いていく。
いつものように玄関まで迎えに出てきた七海の笑顔は、なんとなく翳りがあるように思われた。
彼の心がそのように彼女を見せているのだろうかと、ふと思った。
しかし七海は、本当に体調が悪いようだった。
「生理が始まったんです。だから、今日は一緒にお風呂に入れません・・・お勉強も、今日はちょっとそんな気分じゃないので・・・」
というわけで、優太としてはお風呂に入れないのは残念だったが最初からテレビを観た。
アマゾンプライムで、アメリカのコメディー映画。
それまでは彼女と映画といえばヨーロッパのロマンチックな恋愛映画やドラマが多かったから、それが七海の好みかと思っていた。
だから意外に思ったが、しかしコメディーが好きかと言うとそうでもないようだった。
笑える場面でもクスクスと笑うだけ。
それが落ち着いたあとの深い溜め息が優太は気になった。
(よほど体調が悪いのだろうか・・・?)
本当はふたり体をぶつけ合うように笑い転げたい映画なのだが、優太にぴったりくっついてしがみつくような仕草さえ見せる七海。
なにか不安や心配事を抱えているのではないかとさえ思わせた。
優太がそんな七海の肩を抱き寄せると、彼女は一層体を寄せてきた。
彼は彼女の髪や肩を、優しく撫でる。
時々、彼女は(えっ、こんな場面で?)と戸惑うタイミングでキスを求めてきた。
軽く唇を触れるだけのキスをしたが、彼女の目はなんだか不安そうだった。
彼女が『サセ子』かもしれない、という疑念はどこかへ消えていた。
ただただ七海が愛おしい、それだけ。
結局その日はずっとテレビだけ観て終わり。
そしてその夜、七海からのLINE。
『お盆前までQ市に帰ります お盆には実家の両親のほか親戚なども集まります お盆明けまでしばらく会えません』
『優太さんは今日ずっと、私に寄り添ってくれました とても安心して心強かったです ありがとうございました』
優太はその夜、あまり眠れなかった。
七海としばらく会えないという不安・・・いや、ひょっとしたら永遠に会えなくなるのではないかという、根拠はないにしても漠然とした強い不安さえ湧き上がってきた。
おそらく彼女が『サセ子』だろうということは、いつの間にか彼の心のなかではほぼ織り込み済みだった。
しかしそれでも・・・彼女が愛おしくてならない、そんな熱い想いがあった。
体だけの関係であっても、彼の想いがたとえ彼女に届かなくても、もうどうでも良かった。
優太が七海を好きだというその事実だけが、彼にとってかけがえのないもののように思われた。
どこか狂っているとは自分でも自覚していた。
・・・それをまだ客観的に自覚できている自分に、安心もしていた。
眠っても浅い眠りを繰り返すうちに、夜が明けた。
もう一度七海に会いたかった。
七海は来ないだろうなと覚悟しながらラジオ体操の会場に行ったが、やはり彼女は来なかった。
ならば朝のX市行きのバスだと思った。
かなりの確率で祖父だという蔵原氏の車でX市のバスターミナルまで行くだろうとは思ったが、少ない確率であろうとも七海に会える可能性は残されていた。
ラジオ体操の途中で抜けて、バス停に向かった。
6時44分のX市行きのバス。
バス停に向かう一本道の先に、七海の姿はない。
国道に上る急な坂を、息を切らせて登りきってバス停の方へ目をやった。
・・・デニムのオーバーオールスカートに、初めて会ったときと同じ白い日傘の七海がバスを待っていた。
七海は優太に気が付いた。
「どうしたの?」
「へへ・・・見送り・・・きっとこのバスじゃないかと思って」
ゼイゼイと息を切らせながら答えた。
七海は驚いたようだった。
「わざわざ? 私のために?」
「うん」
彼女は一瞬、視線をそらして遠くを見た。
しかしすぐに優太に向き合い、ワインレッドのキャリーバッグから手を放して優太に抱きついた。
「ありがとう・・・嬉しいです」
「・・・僕も、ちゃんと見送ることができて嬉しい」
そして七海から体を離し、しかし両肩に手を添えて彼女の顔を正面から見据えた。
「お盆が明けたら、会える?」
「はい、会えます・・・私も、また会いたいです。戻ってきます、約束します」
彼女の目は潤み、朝の光の中で輝いていた。
そこへ、バスが来た。
バスに乗り込む時に七海は少し首を傾げて微笑みながら軽く手を振り、それに大きく手を振って返す優太。
彼女が席に着くとすぐにバスは発車して、国道の向こうへと去っていった。
・・・七海のいない日々は、退屈で心のなかに空白ができたようで元気を失った優太。
祖母は「さては失恋したね」などと知ったような顔をして言ったが、失恋のほうがまだ何かしらの決心ができて楽だろうと彼は思った。
半ば虚脱状態のまま迎えた日曜日は、お盆を迎えるための集落の共同作業。
優太は祖母の代わりに参加し、神社と集会所周辺の草払い、樹木の剪定などを手伝った。
貴重な若い働き手として有難がられ、求められるまま立ち働く優太。
そうしていると、なんだか少しは気が紛れた。
8時半に始まった作業は、10時に防災無線から『恋はみずいろ』のチャイムが流れたタイミングで休憩。
その日初めて至近距離で顔を合わせた、この集落に実家のある真斗と並んで神社の本殿の石段に腰を下ろす。
優太と彼だけが、10代の参加者だった。
キンキンに冷えたスポドリを飲みながら、話をする。
真斗はQ市の高校に通う3年生で、盆休みで帰省中。
甲子園を目指して強豪野球部の寮にいたが決勝戦で惜敗し、スポーツ推薦で大学に進むための準備中だと言う。
道理で陽に焼けた屈強な身体をして目つきも鋭く、きびきびと立ち働いていた訳だと優太は思った。
彼とは背負うものも心構えも何もかもが異次元の存在で、並んで話しているだけで感じる強い圧。
その彼が、なにかの拍子に七海の話題を出した。
「あの画家の孫、市内の高校生たちの間じゃ知る人ぞ知る『サセ子』だぜ。あんまり男遊びが激しくて、長い休みのたんびにこっちに隔離されてんだ」
(ああ、やっぱり)と思いながら、緊張で全身に鳥肌が立つような思いの優太。
けれども、先日のバス停での七海が言っていた『私も、また会いたいです』の言葉もまた真実のような気がするのだった。
そんなことなど知らない真斗は立ち上がり、ストレッチをしながら優太に笑ってみせた。
「俺もお世話になりたいけどさぁ、全然相手にされないんだ・・・こっちでは中学の時から何度も会ってるけどなぁ・・・」
(へぇ、そうなんだ)と優太には意外だった。
七海が相手を選ぶ基準は何なのだろうと考えた。
その時、「そろそろ始めるぞぉ」と声がかかり、作業に戻る優太と真斗。
・・・神社や集会所、共同墓地まできれいにして、お盆を迎える準備は整った。
そしてお盆になると空き家だった家にも帰ってくる人などがいて、集落の人口は一気に膨れ上がった。
優太の従弟妹を連れた叔母一家も、お盆に合わせて祖母の家にやってきた。
彼はまだ幼い従弟妹たちに付き添って虫取りなどして、午後の時間を過ごした。
翌朝まだ涼しい時間、みんなで墓参り。
一族・・・ただし台湾でラブラブしているであろう優太の両親は除いてであるが、揃ってお供えの花を入れ替え、線香を上げて手を合わせる。
優太たちが共同墓地を離れる時、入れ替わりのように小さい駐車場に黒塗りのアルファードが停まった。
車を下りてきたのは、運転席から恰幅の良い中年の男性、助手席から上品ぶっている女性、後部座席からクラハラジュンイチらしい老紳士と、中学生くらいの弱っちい少年、それから白いワンピースの七海。
七海の弟と両親、そして祖父だと優太は察した。
・・・ということは、優太が疑っていた七海がクラハラジュンイチの若い愛人だという可能性は、つまらない邪推でしかなかったことになる。
急に安心した優太は、蔵原家の一行とすれ違った。
一番うしろを歩く七海は、優太に向けて軽く首を傾げて微笑んで、手首のあたりで軽く手を振った。
笑顔で頷いて返す優太。
何を勘違いしたのか従弟の小学生が、「あのきれいなお姉ちゃん、僕に手を振ってくれた」とこっそり優太に報告した。
遠い海上を北上する小さい台風の影響で、朝から叩きつけるような雨が降ったり止んだりしていたからだ。
しかし天気が良くても休んだかもしれない。
七海に対する疑念をどうすることもできず、彼女と顔を合わせるのが辛いという気持ちが強く働いていた。
6時半・・・いつもだったらラジオ体操が始まる時間に、LINEの着信。
七海からだった。
『今日は雨で残念でしたね でも午後は待ってます』
七海からのLINEはいつも絵文字もスタンプもなにもない、文字だけの簡素なもの。
そもそもやり取り自体がほとんどなく、事務連絡のようなものばかり。
あの時に優太は「付き合ってください」と告白して、彼女がそれを受け入れたものだと思っていた。
しかし果たしてそれは「付き合っている」ふたりのLINEと言えるのか?
清楚で知的な七海と付き合っているというのは、優太の思い上がりのような気がしてきた。
だいだい、どうしてそんな彼女が僕なんかと・・・一歩引いて冷静に考えれば、おかしいことではないか?
だから、七海のもとへは行かない、という選択肢も有り得た。
けれどもやっぱり、返信した。
『いつもの時間に、待っててください』
たとえ七海がいわゆる『サセ子』でそんな彼女に遊ばれているとしても、一緒にいたいという思いは抑えられなかった。
たとえ体だけの関係であっても、そしてそれが辛く苦しいことであっても、想いは断ち切れなかった。
・・・午後には天気も回復し、気まぐれに強い風は吹いたが夏の太陽が戻ってきた。
一本道の果ての白い家へ歩いていく。
いつものように玄関まで迎えに出てきた七海の笑顔は、なんとなく翳りがあるように思われた。
彼の心がそのように彼女を見せているのだろうかと、ふと思った。
しかし七海は、本当に体調が悪いようだった。
「生理が始まったんです。だから、今日は一緒にお風呂に入れません・・・お勉強も、今日はちょっとそんな気分じゃないので・・・」
というわけで、優太としてはお風呂に入れないのは残念だったが最初からテレビを観た。
アマゾンプライムで、アメリカのコメディー映画。
それまでは彼女と映画といえばヨーロッパのロマンチックな恋愛映画やドラマが多かったから、それが七海の好みかと思っていた。
だから意外に思ったが、しかしコメディーが好きかと言うとそうでもないようだった。
笑える場面でもクスクスと笑うだけ。
それが落ち着いたあとの深い溜め息が優太は気になった。
(よほど体調が悪いのだろうか・・・?)
本当はふたり体をぶつけ合うように笑い転げたい映画なのだが、優太にぴったりくっついてしがみつくような仕草さえ見せる七海。
なにか不安や心配事を抱えているのではないかとさえ思わせた。
優太がそんな七海の肩を抱き寄せると、彼女は一層体を寄せてきた。
彼は彼女の髪や肩を、優しく撫でる。
時々、彼女は(えっ、こんな場面で?)と戸惑うタイミングでキスを求めてきた。
軽く唇を触れるだけのキスをしたが、彼女の目はなんだか不安そうだった。
彼女が『サセ子』かもしれない、という疑念はどこかへ消えていた。
ただただ七海が愛おしい、それだけ。
結局その日はずっとテレビだけ観て終わり。
そしてその夜、七海からのLINE。
『お盆前までQ市に帰ります お盆には実家の両親のほか親戚なども集まります お盆明けまでしばらく会えません』
『優太さんは今日ずっと、私に寄り添ってくれました とても安心して心強かったです ありがとうございました』
優太はその夜、あまり眠れなかった。
七海としばらく会えないという不安・・・いや、ひょっとしたら永遠に会えなくなるのではないかという、根拠はないにしても漠然とした強い不安さえ湧き上がってきた。
おそらく彼女が『サセ子』だろうということは、いつの間にか彼の心のなかではほぼ織り込み済みだった。
しかしそれでも・・・彼女が愛おしくてならない、そんな熱い想いがあった。
体だけの関係であっても、彼の想いがたとえ彼女に届かなくても、もうどうでも良かった。
優太が七海を好きだというその事実だけが、彼にとってかけがえのないもののように思われた。
どこか狂っているとは自分でも自覚していた。
・・・それをまだ客観的に自覚できている自分に、安心もしていた。
眠っても浅い眠りを繰り返すうちに、夜が明けた。
もう一度七海に会いたかった。
七海は来ないだろうなと覚悟しながらラジオ体操の会場に行ったが、やはり彼女は来なかった。
ならば朝のX市行きのバスだと思った。
かなりの確率で祖父だという蔵原氏の車でX市のバスターミナルまで行くだろうとは思ったが、少ない確率であろうとも七海に会える可能性は残されていた。
ラジオ体操の途中で抜けて、バス停に向かった。
6時44分のX市行きのバス。
バス停に向かう一本道の先に、七海の姿はない。
国道に上る急な坂を、息を切らせて登りきってバス停の方へ目をやった。
・・・デニムのオーバーオールスカートに、初めて会ったときと同じ白い日傘の七海がバスを待っていた。
七海は優太に気が付いた。
「どうしたの?」
「へへ・・・見送り・・・きっとこのバスじゃないかと思って」
ゼイゼイと息を切らせながら答えた。
七海は驚いたようだった。
「わざわざ? 私のために?」
「うん」
彼女は一瞬、視線をそらして遠くを見た。
しかしすぐに優太に向き合い、ワインレッドのキャリーバッグから手を放して優太に抱きついた。
「ありがとう・・・嬉しいです」
「・・・僕も、ちゃんと見送ることができて嬉しい」
そして七海から体を離し、しかし両肩に手を添えて彼女の顔を正面から見据えた。
「お盆が明けたら、会える?」
「はい、会えます・・・私も、また会いたいです。戻ってきます、約束します」
彼女の目は潤み、朝の光の中で輝いていた。
そこへ、バスが来た。
バスに乗り込む時に七海は少し首を傾げて微笑みながら軽く手を振り、それに大きく手を振って返す優太。
彼女が席に着くとすぐにバスは発車して、国道の向こうへと去っていった。
・・・七海のいない日々は、退屈で心のなかに空白ができたようで元気を失った優太。
祖母は「さては失恋したね」などと知ったような顔をして言ったが、失恋のほうがまだ何かしらの決心ができて楽だろうと彼は思った。
半ば虚脱状態のまま迎えた日曜日は、お盆を迎えるための集落の共同作業。
優太は祖母の代わりに参加し、神社と集会所周辺の草払い、樹木の剪定などを手伝った。
貴重な若い働き手として有難がられ、求められるまま立ち働く優太。
そうしていると、なんだか少しは気が紛れた。
8時半に始まった作業は、10時に防災無線から『恋はみずいろ』のチャイムが流れたタイミングで休憩。
その日初めて至近距離で顔を合わせた、この集落に実家のある真斗と並んで神社の本殿の石段に腰を下ろす。
優太と彼だけが、10代の参加者だった。
キンキンに冷えたスポドリを飲みながら、話をする。
真斗はQ市の高校に通う3年生で、盆休みで帰省中。
甲子園を目指して強豪野球部の寮にいたが決勝戦で惜敗し、スポーツ推薦で大学に進むための準備中だと言う。
道理で陽に焼けた屈強な身体をして目つきも鋭く、きびきびと立ち働いていた訳だと優太は思った。
彼とは背負うものも心構えも何もかもが異次元の存在で、並んで話しているだけで感じる強い圧。
その彼が、なにかの拍子に七海の話題を出した。
「あの画家の孫、市内の高校生たちの間じゃ知る人ぞ知る『サセ子』だぜ。あんまり男遊びが激しくて、長い休みのたんびにこっちに隔離されてんだ」
(ああ、やっぱり)と思いながら、緊張で全身に鳥肌が立つような思いの優太。
けれども、先日のバス停での七海が言っていた『私も、また会いたいです』の言葉もまた真実のような気がするのだった。
そんなことなど知らない真斗は立ち上がり、ストレッチをしながら優太に笑ってみせた。
「俺もお世話になりたいけどさぁ、全然相手にされないんだ・・・こっちでは中学の時から何度も会ってるけどなぁ・・・」
(へぇ、そうなんだ)と優太には意外だった。
七海が相手を選ぶ基準は何なのだろうと考えた。
その時、「そろそろ始めるぞぉ」と声がかかり、作業に戻る優太と真斗。
・・・神社や集会所、共同墓地まできれいにして、お盆を迎える準備は整った。
そしてお盆になると空き家だった家にも帰ってくる人などがいて、集落の人口は一気に膨れ上がった。
優太の従弟妹を連れた叔母一家も、お盆に合わせて祖母の家にやってきた。
彼はまだ幼い従弟妹たちに付き添って虫取りなどして、午後の時間を過ごした。
翌朝まだ涼しい時間、みんなで墓参り。
一族・・・ただし台湾でラブラブしているであろう優太の両親は除いてであるが、揃ってお供えの花を入れ替え、線香を上げて手を合わせる。
優太たちが共同墓地を離れる時、入れ替わりのように小さい駐車場に黒塗りのアルファードが停まった。
車を下りてきたのは、運転席から恰幅の良い中年の男性、助手席から上品ぶっている女性、後部座席からクラハラジュンイチらしい老紳士と、中学生くらいの弱っちい少年、それから白いワンピースの七海。
七海の弟と両親、そして祖父だと優太は察した。
・・・ということは、優太が疑っていた七海がクラハラジュンイチの若い愛人だという可能性は、つまらない邪推でしかなかったことになる。
急に安心した優太は、蔵原家の一行とすれ違った。
一番うしろを歩く七海は、優太に向けて軽く首を傾げて微笑んで、手首のあたりで軽く手を振った。
笑顔で頷いて返す優太。
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