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戦闘行為

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奈央の言葉は正しい。


何もしなくても東軍は攻めてきて、遭遇すれば殺し合いに発展してしまう。


真治がどう思っていようと関係なくだ。


それでも、まだ真治は納得など出来なかった。


「は、離してくださいよ!  どうして奈央さんはそんなに戦いたいんですか。キングを破壊すれば元の世界に戻れるって聞きましたよ。その為には強くなって他軍に侵攻しなきゃならないってことも!  でも、人を殺すことを、どうしてそんなに簡単に割り切れるんですか。俺にはそれがわからないんですよ!」


疑問の根本はそこだ。人と人が殺し合う世界というのは理解していたつもりだったが、実際に人を殺してしまった罪悪感に押し潰されそうになったから。


だが、それを話している真治は確かに違和感があった。


「そうだね。人を殺さなければ人に殺される。人を殺さなければ強くなれない。どれだけ言っても、真治くんは納得しないかもしれないね。でも見たでしょ?  アジトのビルにいた、生きることを諦めた人達を。この街の片隅で、生きることを諦めたあの人達みたいになりたいの?」


「それは……だからと言って、人を殺す理由にはならないんじゃないですか?  俺は、この罪悪感に耐え切れるとは思えない」


苦しそうな表情で、胸に手を当てた真治だったが、その違和感が何か少し気付いたような気がした。
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