上 下
111 / 682
死神と荒獅子

system_0111

しおりを挟む
「あれ?  何、少年は恵梨香をサーチしてないわけ?  恵梨香は黒井よりもランキングは上。総合1位なんだよ。言わなかった?」


「え、き、聞いてない……です」


さも当然のように言った吹雪の言葉に、真治は驚きを隠せずにいた。


それはそうだろう。


10万人くらいいると言われるこの街で、まさか今戦っているのが1位と3位だとは夢にも思わないから。


だが、これこそがこの街の最強クラスの人達の戦いなのだ。


感覚的に動きを捉えられた程度の真治では、凄まじく精密な動きをするこの二人の足元にも及ばない。


先程、死神が真治を攻撃した時に「手を抜いた」と言っていたが、それは嘘ではなかったのだ。


「ふむ、これでは埒が明かんな。存外強いではないか黒井。穂鷹の尻についていたひよっこが、良くもここまで成長したものだ」


「……お前ごときがあの人の名前を出すんじゃねぇよ!  ぜってぇ殺す!」


「やってみろ馬鹿者め!」


穂鷹という名前を出した途端、黒井が怒りに身を震わせて死神に向かって駆け出した。


いや、駆け出したなどという速さではない。


一歩目から最高速度で、死神にランスが迫る。


ヘルメットごと頭部を貫こうとしているのだろうが、その直線的な動きは死神に読まれているようで、トンファーでランスを下から押し上げて軌道を逸らしたのだ。
しおりを挟む

処理中です...