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西の地で

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馬喰横山駅にほど近いビル。


里奈と三葉に案内され、奈央をおぶってやって来た真治。


アジトだと言う大きなビルの三階の一室に入り、ベッドに奈央を寝かせて隣の部屋のソファに腰掛けた。


「目を覚ますまでゆっくりしてたらいいからね。キミ、悪い人じゃなさそうだし、いくら私達が可愛いからって変なことしそうにないから」


テーブルを挟んで向かい側に座る里奈にそう言われて、ひと安心といった様子でため息をついた。


まだ総力戦の最中だというのに、敵とこうして向かい合って休んでいるとはどうしたことだろう。


「ふふ。不思議な感覚だよね。この街では強い者が全てを手に入れる。だから、私達を殺すことも、犯すこともキミには出来るのに。こんな子、まだこの街にいたんだね」


冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して、テーブルに三つ置いた三葉。


自分のことを可愛いと言い続ける里奈に、年上の魅力が言動から溢れ出ている三葉。


確かに強い者が支配するという単純な構造の街だが、元々が臆病者の真治である。


気の弱い人間が、それほど傍若無人に振る舞えるはずがないのだ。


「でもどうする? 私達はいいとして……雪ちゃんがどう言うか」


「そうだね。あの人、好き嫌い激しいから。気に入らなかったらこの場で殺されるってことも普通に有り得るからね」


ここにいるのは二人だけではないようで、まだ共同生活をしている人がいるのかと、部屋の中を見回した。
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