東京バベルブレイカー～殺戮都市バベル～

厳しい優しさ

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部屋を出て、屋上に向かって移動しながら真治は考えていた。


この街の女性は、なぜこんなにも誘惑してくるのかと。


当然、全員が全員そうと言うわけではないのだが、元の世界にいた時はこんな経験は一度もないから戸惑うことばかりだ。


階段を上り、ドアを開けると外は大雨。


良く使われる、「バケツの水をひっくり返したような雨」という言葉がそっくり当てはまるような豪雨だ。


「凄いな……洗浄日って名前は伊達じゃないってことか。こんな雨の中で外になんていられないよな……」


どれだけ目を凝らしても、50m先は完全に見えない。


そんな中で、真治は目に飛び込んで来た違和感を見逃すことが出来なかった。


この豪雨の中、白い物体が隣のビルのタンクの上で蠢いていたのだから。


「な、なんだあれ……もしかして人？」


慌ててPBMを取り出して、その物体に向けてサーチしてみると。


「内藤大地」と表示されて、あの日ポーンに殺された人物だということがわかり、真治は雨の中を飛び出した。


隣のビルに飛び移り、タンクに近付くと聞こえてくる歌。


「はぁ～、白く輝くこのボディ。ガチョウじゃないよ～スワンだよ～。可愛いあの子を手に入れるため～俺の44マグナムが火を吹くぜぇ～」


間違いなくそれは内藤。何をしているかと思えば、この豪雨の中で身体を洗っているではないか。