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厳しい優しさ

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「さてと……どうするかな。総力戦まではまだ時間もあるし、恵梨香さんを探すと言ってもフレンド登録してないからサーチも出来ないし」


そういいながらPBMを開き、フレンドリストを確認した真治。


新崎の名は消え、奈央と吹雪、そして昨夜登録した内藤の名を確認したが……一つ、身に覚えのない名前があり、それは真治の心臓を締め付けるような苦しみを与えた。


三笠拓也。


元の世界で真治をいじめていたグループの中の一人で、こっちに来る直前におかしなことを言っていたクラスメイトだ。


「なんで……三笠が。俺はフレンド登録なんてしてないのに」


そんなことを呟きながらサーチをしてみると、反応が近い。


人身売買オークションが行われていた、清澄公園の方。今いる場所から200mほどの場所に反応があったのだ。


本当なら会いたくはない。だけど、どうしてこんな世界に呼び込んだのか。今の力なら、相手が自分をいじめていた三笠であっても勝てるかもしれないと、その反応の方へと移動を始めた。


いじめられた恨みだけじゃない。この世界に呼ばれて酷い目に遭った。文句のひとつでも、一発でいいから殴ってやらないと気が済まないと思って。


フツフツと湧き上がる怒りに、初めて私情で人を殺すかもしれないとさえ思い始めていたのだ。
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