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厳しい優しさ

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そして、その姿には見覚えがあった。


「三笠……な、なんでそんな姿で……」


無意識に呟いた真治の言葉に、驚いたように顔を向けた三笠。


嫌なところを見られたと思っているのは、その表情からもわかった。


「お、お前……まさか高山か? なんだよ、なんでこんなところを見るんだよ……」


「なんでって……それはこっちのセリフだろ! こんな世界に俺を呼んでさ! おかげでどれだけ酷い目に遭ったと思ってるんだよ!」


仰向けになって空を見上げた三笠に近付き、その胸ぐらを掴んで睨み付けたが、真治よりも三笠の方が酷い目に遭っているのは一目瞭然だった。


「そんな目で俺を見るなよ。それに、お前を呼んだって何のことだ。見ての通り、俺は手足を失ってもう三週間。仲間にも見捨てられて、こうやって草を食って飢えを凌いで生きてる。笑いたきゃ笑えよ」


「ふざけるなよ! 俺はお前に『俺を殺してくれ』って言われて! そして気付いたらこの街にいた! お前じゃなければ理沙だってのか!?」


強く、真治に問い詰められて、三笠は思い出したかのようにポケットからPBMを取り出した。


そしてそれを片手で操作して、プロフィール画面を真治に見せたのだ。


「頼む。俺を殺してくれ」とプロフィールに書かれていて、それは学校で真治が三笠から聞いた言葉と同じだった。
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