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厳しい優しさ

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「絶対に……お前を許さない。だから助ける! 何としてでも助けて、そして一発殴ってやるんだ!」


三笠の残った腕を肩に回し、背負うようにして担ぎ上げた真治。


だが、助けると言ってもどうすれば良いのか、真治にも策があったわけではなかった。


「高山……」


「まずはメシを食わせる。考えるのはそれからだ。いつもみたいに嫌味たっぷりで俺に突っかかってくれないと、殴る気も起きやしないじゃないか。それにしても軽いな。どれだけまともな食事をしてないんだ?」


「くっ、嫌味かよ。腕一本と両脚がないんだ。軽いのは当たり前だろ」


どうして憎いと思っていた相手を助けようとしているのか。どうして殺してほしいとまで言っている相手を殺さないのか。


真治にもそれはわからなかったが、憎くてもこの街で初めて出会えた知り合いだったというのはあるだろう。


だから、助けたかったのだ。


「あるぇぇぇぇ? あいつ三笠じゃね? ほら、三日くらいグループにいたけど、弱過ぎてすぐ消えたやつ。まだ生きてたんだ」


「は? 三笠? そんなやついたっけ?」


「いただろ、ほら、パシリに使ってた弱いやつ! 三週間くらい前にいきなりいなくなっただろ」


大笑いしているリーダー格の男と、その周りにいる頭があまり良くないであろう集団。


なるほど、仲間がここにいたから、三笠はわざわざここまで来て雑草を食べていたのかと真治は納得した。


こんな身体になって、助けてほしいけれど言い出せなかったんだと。
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