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厳しい優しさ

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凄まじい殺気に、真治は大きく後ろに飛び退いた。


超至近距離は自分の距離でもあったが、恵梨香の距離でもあったからだ。


もう少し後退するのが遅れていたら、もう片方の手から振られたトンファーによって、命を刈り取られていたかもしれない。


勝てるというビジョンが全く浮かばない絶望感。


これが死神かと、たったの一撃で力の差を見せ付けられてしまっていた。


「よちよち歩きの可愛い子供が、少し見ないうちに随分成長したものだ。初撃を受けただけではなく、二撃目を警戒して距離を取るとは。人の成長を嬉しいと思ったことはないぞ」


「それはどうも。だけど俺が成長したからって考えは変えないんだろう。クラスメイト一人を死神から守るくらいなら俺だって出来る! それくらい強くなったつもりだ!」


そう言い、恵梨香を改めて睨み付けた真治だったが、気付いた時には恵梨香の姿はそこにはなかった。


慌てて目を左右に動かしてその姿を見ようとしたが、あまりにも早すぎて全く捉えられなかったのだ。


そして、視界の左側の端に僅かに黒い物が見えた。


確認してからでは間に合わないと、日本刀を縦に防御行動を取ったが……あまりにも強烈なその一撃は日本刀を押し込み、真治の側頭部に当たったのだった。


衝撃をモロに受けた真治は吹っ飛ばされ、地面を転がってピクリとも動かなくなった。
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