上 下
270 / 682
厳しい優しさ

system_0270

しおりを挟む
いくらいつもの半分しか力が出せないとは言え、結果だけを見れば真治が完封した形だ。この女性もそれほど武器のレアリティは高くはないのだろう。


ギリギリとはいえ女性の動きに反応は出来た。奇襲に近い形で飛び込めたのが勝因だったと今の戦いを分析しながら日本刀を振り、刀身に付いた血を払う。


目の前の女性は光の粒へと変わり、空気中に消えて行く。


この光景はいつ見ても幻想的で綺麗だ。


人の命が一つ散って、どこかで復活する為の儀式とも言うべきか。これが命そのもののような気さえして、光に触れようと手を伸ばしていた。


「……まだ誰かいるのか?」


女性が死ぬ直前に、奥の部屋を気にしているように見た。


日本刀を構えたままドアを開け、部屋に入ると頭まで布団を被った誰かがそこに横になっているのがわかる。


このまま、顔を見ずに殺すべきなのかと考えたが、これが罠だとしたらどうだろうか。


布団を捲って急に襲い掛かって来るかもしれないし、もう既に布団の下で武器を構えているかもしれない。


危険は避けるべきだが、その罠でさえもどうにかなりそうな気がして。


真治が学ぶべきことは、戦闘の中にまだまだ沢山あると考え、この程度の不利な状況を打破出来なければ奈央を助けることなど出来ない。


そう考えて布団を勢い良く捲くった。




「……えっ!?」



現実は、いつも最悪なことばかり起こるものだ。


真治が想像もしていなかった事態。ベッドに横たわっていたのは、幼馴染みの中川理沙だったのだから。
しおりを挟む

処理中です...