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聞こえぬ死燕の足音

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「ほら、お姉ちゃん! お兄ちゃんが来たよ! いつまでも寝てないで、ご挨拶くらいしたら?」


ベッドに近付き、横になっているお姉ちゃんを揺する。


「あ、亜美ちゃん。何も無理に起こさなくても良いよ、俺は起きるまでここに……」


慌ててそう言った真治だったが、その姿に何か違和感を覚えた。


揺すった時に、お姉ちゃんが胸の上に乗せていた右腕がダラリと垂れて揺れていたからだ。


「……亜美ちゃん、ちょっと離れて」


「え? どうして?」


不思議そうに首を傾げた亜美を横に移動させ、真治はベッドの横で屈んだ。


胸が上下に動いておらず、呼吸が確認出来ない。


脈はどうだ?


まさか、中学生の時の保健体育で習った心肺蘇生の授業が役立つとは思わなかったと、首に人差し指と中指を添えて、脈の確認をするがそれもない。


「し、失礼します」


どこかにPBMがあるはずだと、姉ちゃんの衣類のどこかにあるであろうそれを探す為に、ポケットの上に手を当てた。


ズボンのポケットに硬い物があり、PBMを取り出してお姉ちゃんの指先で画面に触れてみたが、画面は真っ黒のままで、光が灯る事はなかったのだ。
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