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聞こえぬ死燕の足音

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この男は一体何を言ってるのか。


亜美のような子供が好きなやつがいるということは、自分で面倒を見ずに幼女趣味の人間に売ろうとでもしているのか。


「嘘だ! お姉ちゃんは死んでなんかいないもん! お姉ちゃんと一緒じゃなきゃ、亜美は行かない!」


強くそう言った亜美に安心したが、それと同時に感じる戦闘の予感。


この男、優しそうだと思っていたがとんでもなかった。


「……お前の意見なんて聞いちゃいねえんだよ。香澄がいたから優しくしてやってりゃあ調子に乗りやがって。お前の姉ちゃんはなあ、お前にメシを食わせる為に身体を売ってたんだよ。お前も生きる為に自分の身体を売るくらいしろや」


ついに弓長の本性が現れた。


亜美が拒否して、すんなり終わるとは思ってはいなかったが、このままでは亜美が危ないのは明白。


だが、不安要素はある。一対一とはいえ、まともに動くことが出来ない真治が勝つことが出来るのかと。


「お兄ちゃんが……寝てるだけだってさっき言ったんだもん!」


「……お兄ちゃん?」


亜美の言葉を拾った弓長は、この診療所の中に他にも誰かがいると気付いたのだろう。


部屋から出て、睨み付けるような鋭い目で周囲を見回し始めたのだ。
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