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聞こえぬ死燕の足音

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真治の言葉で、弓長の眉間にシワが寄り始める。


高校生の子供にこんなことを言われて怒ったのだろうが、こうなったらもうどちらも後には退けない。


「ガキが。人様のビジネスに口出ししてんじゃねぇぞ! こいつらが今まで生きて来られたのは俺のおかげなんだよ! 戦えもしねえガキを養う金なんてねぇ! 生きたきゃ自分で金を稼ぐしかねぇだろうが!」


言っていること自体は間違っていないのだろう。


この街にいる限りは何歳であれ、人を殺して生きる糧を得るしかないわけで、それが出来なければ生きることを諦めるか死ぬしかないのだ。


だが真治は、それがわかっても弓長のことは許せなかった。


「仲間はそんな軽いものじゃない! 仲間を守ることを途中で放棄するな!」


「あぁ? 誰が仲間だって? このガキのことか? 仲間ってのはな、殺し合いで背中を任せられるやつの事を言うんだよ。戦えねぇガキには、商品価値くらいしかあるわけねぇだろ?」


真治がまともに立てていないことで、余裕を見せているのだろうか。ナタでカンカンと日本刀を弾く弓長。


絶対に負けられない戦いだというのに、コンディションは最悪。


殺されるわけにはいかないと、真治は強い気持ちで腹に力を入れて目の前の男に意識を集中させた。


ついさっき出会ったばかりの小さな女の子。


助ける義理なんて、自分を気遣って包帯を巻いてくれたことで十分だった。
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