428 / 682
聞こえぬ死燕の足音
system_0428
しおりを挟む「か、かはっ! テ、テメェ……」
PBMごと貫いた弓長の胸部。
苦しそうに日本刀を掴んで、必死に引き抜こうとするが、刃が手に食い込んで血がボタボタと流れ落ちるだけで、引き抜く事は出来なかった。
しばらくもがいた後、弓長はガクリとうなだれて動かなくなったのだ。
「ハァ、ハァ。死ぬかと思った……」
日本刀から手を放し、倒れ込むように長椅子に横になった俺は、立つ気力もなく、亜美の方を見た。
顔を殴られて泣いていたが、そこはさすが自軍と言うべきか。怪我は治り、痛みも消えたようですぐに泣き止んでいた。
日本刀が消え、支えを失った弓長の身体が床に崩れ落ちる。
PBMを破壊したということは、もう二度と復活しない。
これでもう、亜美が弓長に狙われることはなくなったわけだが、体力が回復したら真治が連れて行かなければならないだろう。
頼れる人がいなくなったわけだから。
「亜美ちゃん、ほら、もう大丈夫だから。怖い人はいなくなったよ」
真治がそう言っても悲しそうな顔のままで、亜美は動きもしなかった。
考えてみれば、大切なお姉ちゃんが死んでいると言われ、頼りにしていた弓長に裏切られたようなものだ。
大の大人でさえこの街は辛いというのに、こんな小さな子ならとても耐えられるとは思えない。
長椅子に横になりながら、悲しむ亜美を見ていることしか出来なかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる