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聞こえぬ死燕の足音

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「いたっ!」


「あー、わりぃわりぃ! うおっ! マジかお前大丈夫か!? まさか今ので腕が吹っ飛んだのか!? 俺は当たっただけで人にこんな大ダメージを……罪作りだぜ!」


ぶつかったのは右肩で、少しチャラい雰囲気の男は、真治を見るなり慌てて、地面に視線を落として腕を探した。


「だ、大丈夫です。これは別の怪我なんで。こちらこそ前を見てなくてすみません」


面倒なことは今は避けたいと必要以上に丁寧に頭を下げて、早くこの場から立ち去ろうとする。


敵軍にいるわけで、全員が真治を助けてくれた人のように優しいわけじゃない。


弓長くらいが普通だと考えていた方が良い。


「なんだよビビったぜ。こっちもぼんやりしてて悪かったな」


あまりに真治が丁寧に頭を下げたからか、男はそれだけしか言わなかった。


面倒に巻き込まれたくはないし、知らない人との接触は避けた方が良いと考えて、コンビニに向かって歩き出した時だった。



「……ちょい待ち。そう言えばお前、どっかで見たことあんだよな」



背後からそんな声が聞こえて、真治はゆっくりと振り返った。


焦って武器を取り出せば、敵だということがバレてしまい、戦闘に発展するのは目に見えている。


南軍でも弁当を取られそうになったわけで、こういう因縁を付けて来る連中はどこにでもいるから様子見をする。
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