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襲い来る野獣

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「もしかして、それって池上じゃない? 西軍最強の男と言えば、ハルベルトの池上政晃だよ。あいつは……強いよ」


弁当の入ったレジ袋を手に、寝室の入り口に立っていた黒井がそう言って室内に入って来た。


沼沢のことも知っていたし、黒井はその池上と戦ったこともあるに違いない。


「雪子さんと吹雪さんでも勝てないなんて……恵梨香さんも捕まってるし、俺はどうすれば良いんだ」


今は、奈央を南軍に置いていく方が安全には違いないのだが、その話を聞いてしまえば西軍の状況も気になってしまうのは無理もない。


「ん……ちょっと待てよ?」


真治は考えた。奈央は、真治達が出て行ってから、三日後に殺されたと言っていた。


そして、一週間捕らえられていたということは。


真治が死んでから、最低でも10日が経過しているということだ。


奈央の復活までの時間を考えると、それ以上の日数が経過したということは容易に想像出来たのである。


「10日以上も……恵梨香さんは大丈夫なのか」


奈央の話を聞いて、一気に不安が膨れ上がる。


津堂はなぜか恵梨香を恨んでいるようだった。


ずっと捕らえておくとも言っていたから、殺すことないと思うが、何にしてもこの10日以上という時間の損失はあまりにも大きい。


「ま、これからのことは後で考えるとして、今は奈央ちゃんに食べさせないとね。ほら、弁当買って来たからさ」


そう言って黒井は、ポンポンと真治の肩を叩いてレジ袋を手渡して部屋を出て行った。


変わった人だと思っていただけに、真治にとっては嬉しい予想外な行動だった。


「真治君……恵梨香さんが捕まったって、どういう? もしかして、10日も前に?」
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