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理科準備室の人体模型

六枚目

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「り、理科室に逃げようぜ!  教室と理科室しかないなら、悩む必要ねぇだろ!」


窓から逃げられるかもしれないと、セイヤはチラリと視線を横に向けたが、窓も壁で塞がれていて出られないというのがわかったから。


真っ暗な中で、廊下の天井にある避難口誘導灯の光が点滅しながら微かに灯っていて、それが唯一の明かりだった。


早く逃げなければ追い掛けて来る。ウミと同じようにメスを突き立てられるかもしれない。


その恐怖が三人を追い立て、理科室へと逃げ込ませた。


「だ、第一理科室と第二理科室、どっちに逃げよう!」


「し、知らないっての!  なんで私達が人体模型なんかに殺されなきゃならないのよ!」


置かれた状況の異常さに、パニックになるソラミとキョウ。


その中で、必死に何かを考えていたセイヤが、縋り付くような表情を二人に向けて口を開いた。


「な、なあ。あれは本当に人体模型だったのか!?  ウミが開けた箱の中に入ってたやつなのか!?」


この混乱した状況下で、その問いに対する答えを持っている者は誰もいなかった。


「知らないっての!  さっきの教室も『1-11』とか書かれてたしさ!  意味わかんないんだけど!  うちの学校、一学年に四クラスしかないよね!?」


ソラミの言葉に慌てて振り返ったキョウは、点滅する光を頼りに目を凝らして、教室に掲げられているプレートが本当に「1-11」と書かれていることを確認して身体を震わせた。
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