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理科準備室の人体模型

十四枚目

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「つ、つまり……こういうことだよね!?」


慌てて黒板に駆け寄ったキョウがチョークを手に取り、項目を一つ追加するように新たな文字を書いて行く。


・人体模型を箱に入れればゲームは終わる。


「そんなことわざわざ書かなくてもわかるっての!  でもあんな化け物をどうやって箱の中に入れるってんだよ!」


「そ、それは……」


そう、ソラミとキョウがそこまで言った時だった。


一番廊下側にいたセイヤが何かに気付いたかのように、顔をしかめたのだ。


「しっ!  足音が消えた。おかしい……探すのを諦めたか?  まさかな……」


不思議そうに首を傾げたセイヤだったが、他の二人は足音が消えた理由を知っていた。


だがセイヤは二人とは別行動を取っていて、そのことを知らないのだ。


チカッチカッと、廊下の明かりが点滅する。


黒板を背にして、教室を見回していたキョウが、何度目かの点滅の直後、セイヤの隣にある磨りガラスの向こう側に、急に黒い人影が現れたことに気付いた。


「セイヤくん!  窓から離れて!」


そう声を上げると同時にガラスが割れ、メスを持った人体模型の腕が教室内に侵入して来たのだ。


間一髪、キョウの声に反応していたセイヤの頭上を、メスが水平に振られてドアに突き刺さった。


床に倒れながらそれを見て、キョウの声がなかったら、今頃頭にメスが突き刺さっていたと、内心ゾッとしていた。
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