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踊り場の大鏡

十七人目

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あまりにも無慈悲に思えた。


大鏡の中の自分は嘘を言わない。


それを疑う理由はなく、信じている。


だからこそ無慈悲。


カガの言う通り、何も知らなければただその事実が自分の知らないところで実行されるだけだったのに、知ってしまったから、もしかするとそれを止められる可能性が生じてしまった。


だから……黙っているわけにはいかないのだ。


「ダ、ダメだよアエリちゃん!  もうその友達から占いを聞くのは辞めるんだ!  アエリちゃんがいじめられ出したのは、おかしなことを言うようになったからだって聞いたよ!  その占いがアエリちゃんをいじめに遭わせているんじゃないのか!?」


「そ、そんな……で、でも、悪いことばかりじゃないんだよ?  もうすぐ私へのいじめはなくなるって、そう言われたんだから」


「う、うん……それは信じたいよね。でも、そこまでにしておこう。これ以上聞いてしまったら、アエリちゃんが持たないよ。今日だってそうでしょ。占いの結果をそのまま伝えて、実際に起こったからアエリちゃんがやったんじゃないかって責められたんでしょ。だから教室から逃げ出したんじゃないの」


カガの言うことは的を射ていた。


自分の精神を削って人を助けようとしても、皆は自分を気持ち悪がっていじめるし、さっきだって無実の罪を着せようとさえした。


真実はどうだっていいのだ。ただ、サラを押したのはアエリだという事実を作り上げさえすれば、責めるサンドバッグが出来上がるのだから。
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