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踊り場の大鏡

二十人目

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「ちょっと!  あんたまたそんなこと!  殺されるって……まさか!」


サラが思わず立ち上がってアエリに尋ねるが、当の前村は予想外の言葉だったのか、うっすらと涙目になっている。


人を責め立てる人間は、得てして責められると弱いものだ。


今にも泣き出しそうな前村を見て、アエリは逃げるように教室から飛び出した。


廊下を走って、階段を上り屋上の前に。


そこで待っていたカガの顔を見て安心したのか、床に座ると同時に涙を零した。


「どうしよう、やっぱり言わなきゃ良かったのかな。私、どうすれば良かったのかな。もうわからないよ」


「……もう、占いを聞いてしまったから仕方ないよ。でも、これでわかったよね。その友達から未来のことを聞くのはやめるんだ。これ以上はアエリちゃんがもたないからさ」


そう言って頭を撫でたカガに、アエリは頷くことしか出来なかった。


この先何が起こるかわかっていたとしても、自分の力では止められないだろう。


そして、それを本人に伝えたところで自分がおかしな人間扱いされるのだから、何が起こるかなんて知らない方がいい。


思えば、いじめが始まったのも大鏡の予言を伝えるようになってからだったから。


予言に関わって、良いことなんてひとつもなかったのだと、今になってそれを理解することが出来た。
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