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トイレの花子さん

二十九個目

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怒鳴り声にも近い声を上げたのはショウコだった。


きっと、恐怖で潰れそうになる自分を奮い立たせる為に、気合いを入れたのだろう。


コハナに飛び掛かろうとするアイラが引きずっている内臓を踏み付け、地面に崩れ落ちた次の瞬間。


強烈な蹴りがアイラを吹っ飛ばし、廊下の端の方まで転がったのだ。


「コハナ!  立って!  逃げなきゃ……」


「ダ、ダメ!  見ないで!  お願い!」


手を差し出して、引き起こそうとしたショウコの目に映ったのは、コハナの下にある水溜まり。


ここに水道はないし、どこからか水が漏れたわけでもない。


あまりの恐怖に、漏らしてしまったのだが、ショウコは首を横に振って見せた。


「そんなのいいから早く!  ここに座ってたら襲われるぞ!  てか、ミラはどこに行った?」


無理矢理にコハナを立たせて、トイレの方を見たショウコ。


後ろのドアは開いていないし、教室の中に隠れたわけではなさそうだ。


それに……異形のメグミの姿もない。


トイレの中に逃げたのかと考えていると、そのトイレからメグミが器用に手足を動かして出て来たのだ。


「教室の中に!  椅子でも机でも、何でもいい身を守るんだ!」


コハナを引っ張り、ドアを開けて教室の中に。


近くにあった椅子を掴んで、黒板の前で二人はメグミを待ち構えた。


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