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テケテケ&音楽室の怪

二十八曲目

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「あ、危ないって!  一人で行くなんてさ!  それに、鍵を見つけてもテケテケに追い掛けられたらどうするんだ!?  あいつを連れてここに来るつもりか!?」


慌ててユキヤが声を上げると、サクラもそれは考えていなかったのか、少し悩むような様子で「確かに」と小さく呟く。


だがこのままでは堂々巡りというやつだ。


危険だから行かない方がいい。でも鍵がなければ音楽室には入れない。


思考だけでこの二つが巡ってしまい、動くことが出来なくなるのだ。


「そ、そうだね。サクラさん一人じゃ、テケテケに追い掛けられたらどうしようもなくなる。だから僕も一緒に行くよ。それなら、どっちかが追い掛けられても、もう片方が鍵を持ってここに来ればいいんだからね」


そんな中で、どうすればいいかわからずに悩んでいたキョウジが不安そうに声を絞り出した。


だが、面白くないのはユキヤである。


「お、お前!  話聞いてた!?  俺は絶対に行かないからな!  お前らが殺されても、絶対に助けない!」


本当ならもっと酷い言葉を浴びせようとしていたに違いない。


サクラの睨みが利いている為か、言葉を選んでいるようにも見えた。


「あ、ありがとうキョウジくん。じゃあ行こっか。臆病者はそこで待っていれば良いですよーだ」


二人、鍵を探しに歩き出そうとした時、ユキヤが悔しそうに舌打ちをして呟いた。


「チッ!  俺は行かねぇからな!  でも、一つだけ教えてやる。テケテケがいる所は、なぜか月の光が射し込む。だから明るい所にあいつはいるんだ」

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