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怒りの二宮金次郎像

一冊目

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「うーん、美しい。アエリさん。キミは未来永劫、その美しさを保ったまま鏡の中で生き続けるんだね。それとも今度はキミが……ふふふ」


暗闇の中、スポットライトに照らされて大鏡にそう語り掛ける怪人ミラー。


こちらに気付いていないのだろうか、しばらく見ていると、顔をこちらに向けてビクッと身体を震わせた。


「うおっ!?  ひ、人が悪いですねぇ。いるならいると言ってくれませんか!?  相変わらず無口ですねあなたは」


手を挙げて、パチンと指を鳴らすと大鏡は消え、代わりに二宮金次郎像が怪人ミラーの背後に現れた。


しかし、その像は首から上がなく、どことなく不気味な雰囲気を醸し出している。


「ですが丁度今、この二宮金次郎像に関するお話を思い出したところです。夜中に動き出す……というお話を聞いたことはありませんか?  まあ、夜中でないにしても、動くとしたら何が目的で動くのでしょうね。その理由は、もしかしたら誰にも知られることのない、闇深いものかもしれませんね」


クスクスと笑う怪人ミラーの背後に、さらに五人の男女が浮かび上がった。


「この像の首がないのは、彼ら五人に深く関わっている……とだけ言っておきましょう。さあ、物語の始まりです。私の中で最も忌まわしい物語のね」


そう言って指を鳴らすと、スポットライトは消えて辺りは暗闇に包まれた。
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