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怒りの二宮金次郎像

二十二冊目

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全ては一つのことに収束される。


おかしくなり始めたのは、Aが死んだ時からだ。


あの瞬間から何かが変わり始めた。


それは、Aに関する記憶が全くないことからもわかるだろう。


Aとは何者なのか。


Aと自分達はどんな関係性だったのか。


なぜ、Aは二宮金次郎像に乗っていたのか。


それを思い出すことが出来れば、この状況から抜け出せるのではないか。


考えられるのはその程度だった。


「おいカミキ!  何かないのかよ!  頭がいいくらいしか取り柄がねえんだからしっかり考えろよ!  このままじゃもっと酷いことになるぞ!」


頭をボリボリと掻きむしったコウセイが、追い詰められたようにカミキにまで当たり出した。


「……今のは嫌な感じだ。とても嫌な気分になった。僕だってわかってるさ。この状況が続けば、次はこの四人の中の誰かが死ぬことになるかもしれないってね。だけど今の言葉は許さない」


「はぁ!?  何言ってんのお前。事実だろうがよ!  お前がわからないって言うなら、つまり何の役にも立たねえってことだろ!?  違うかよ!」


興奮する二人を前に、キョウスケが呆れたように首を横に振った。


それでもこの喧嘩を止めなかったのは、キョウスケ自身もどうすれば良いのか答えが出なかったからだ。


「ちょっと!  何考えてんの!  バッカじゃないの!?  喧嘩よりこれからどうするか考えるべきでしょ!  今がヤバい状況だってわかってんの!?」
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