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怪人ミラー

三十二話目

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フックに引っ掛けられて宙吊りにされ、脱出も叶わない状態。


どれだけ暴れてももがいても、フックが外れることはなく、誰かに助けてもらう以外に苦しみから逃れる方法はなかった。


「い、痛えよ……た、助けて……」


何とか絞り出した声でミサキに助けを求めるが、ミサキにその頼みを聞く義理などない。


「タクヤくん。私がやめてって言ってもやめてくれたことなんてなかったよね。ナオミさん、リンカさん、ヒサシくん。皆にもいじめられて、助けてって言ったのに誰も助けてくれなかった。あんな画像までばらまかれて、私はどうやって生きていけばいいの?  ねえ、私を助けてよ」


ブラブラと揺れるタクヤに冷めた視線を送りながら尋ねる。


だが、当然求めていた答えとは違う言葉が返って来た。


「ご、ごめん……俺には何も……出来ません!」


苦しみから早く逃れたいのだろう。顔をくしゃくしゃに歪め、涙を流しながらそう言ったが、ミサキは予想していたようにニヤリと笑って見せた。


「じゃあ、私の答えも同じだよ。ごめんね。私には何も出来ない」


顔を歪めて嬉しそうにそう言うと、鏡の中の怪人ミラーが、どこからか取り出した先端が尖った金属の棒を、タクヤの股の下で握り締めた。


鏡を見るに、床から生えているように見えるが、どれだけでも引き伸ばせるようだった。
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