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第2章
情けと甘さ 6話
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するとそこには、返り血を浴び着物が赤く染まった信長様が、血濡れの刀を拭き、鞘に納める姿があった。
(…え)
「光秀、こいつは殺せと言ったはずだ」
光秀様は無言のまま、血を流し倒れている頭領を見下ろす。
「敵に情けなどをかけるからこうなる。今ので伊吹が死んでいたら責任がとれるのか?」
「…」
「甘さでは人を守れない」
信長様に叱咤され、光秀様はきゅっと口をつぐみ、眉をしかめている。
私はというと、人が斬られるのを初めて目の当たりにし、さらに自分の着物にも返り血が飛んできている恐怖と驚きで腰を抜かし立ち上がれないでいた。
「…情けないやつめ」
信長様は呆れたように私を一暼したかと思うと、隣にスッとしゃがみ込み、私の体をひょいと持ち上げ肩に背負う。
(わっ…)
「そいつら全員始末しておけ」
立ち上がってそれだけを言い残し、信長様は部屋を出ていく。
(どこに連れていくんだろう…)
「あの、信長様…」
担がれたまま訴えるも、信長様は私に耳を貸すことなくずんずんと歩いていく。
そうしてやってきたのは、信長様の部屋。
「もう大丈夫ですので下してください!」
信長様は肩の上で暴れる私をしばらく可笑しそうに眺めたのち、ようやく床に下した。
「二度も俺の前に立つとは、女の割にいい度胸をしているな」
(あれ?…いま、女って言った?)
「ど、どうして…」
「それで隠していたつもりか?光秀も市もこそこそと…」
「ずっと前から気づいていたんですか?」
「男なら市に近づけるわけがないだろう。阿保が!」
鋭い目で睨めつけられ、ふいに先ほど切られた地侍の姿が脳裏をかすめる。
(私も、殺されるのかも…どうしよう…!でも、逃げられるわけでもないし…!)
恐怖のあまり固まった私に、信長様が不思議そうに尋ねてくる。
「なぜ震えている」
「…私も、あの地侍みたいに死ぬんですね」
思い切ってそう答えるも、返事がなかなか返ってこない。
そっと顔をあげてみたところ、信長様は怪訝そうにこちらを見下ろしていた。
「俺がお前を殺すとでも…?」
「え…」
「お前が死んだら甘味はこれから誰が作るというのだ。それに…お前は俺をまだまだ楽しませてくれそうだ。」
信長様は私の腕を掴んで引き寄せ、顔を寄せてくる。
「俺が怖いか…?」
全てを見透かしたような冷たい目でじっと見つめられ、私は動けなくなってしまった。
と、その時、
「あの~、信長様。後にしたほうがよろしいでしょうか」
後ろから控えめな声が聞こえてくる。
振り返ると、いつからそこにいたのか蘭丸さんが遠慮がちに立っていた。信長様はひとつ息をつき、腕を話す。
「お前は本当に空気が読めないな」
「…申し訳ございません」
「伊吹、本当の名をなんと申す」
「…吉乃です」
「蘭丸は信頼できる奴だ」
私を安心させるようにそう言うと、信長様は蘭丸さんに命じる。
「おい蘭丸。吉乃の足を見てやれ。あとは任せた」
(信長様…私が足をくじいていた事に気づいていたんだ…)
先ほどのドタバタの中、私は信長様を庇おうとして足をくじいていた。
(それで、私を担いでここまで…)
去っていく信長様の後ろ姿に、私は思わず声をあげた。
「どうしてここまでして下さるんですか?」
「…珍客に対するただの戯れだ。俺がお前に言ったこと、ゆめゆめ忘れるなよ」
(私に言ったことって…)
『お前の毒見の役を解こう。その代わり俺に毎日、甘味をもってこい。ただし、少しでも妙なそぶりを見せてみろ。その時は、叩き斬る』
(あの言葉か…)
信長様は去り際に私に告げる。
(…え)
「光秀、こいつは殺せと言ったはずだ」
光秀様は無言のまま、血を流し倒れている頭領を見下ろす。
「敵に情けなどをかけるからこうなる。今ので伊吹が死んでいたら責任がとれるのか?」
「…」
「甘さでは人を守れない」
信長様に叱咤され、光秀様はきゅっと口をつぐみ、眉をしかめている。
私はというと、人が斬られるのを初めて目の当たりにし、さらに自分の着物にも返り血が飛んできている恐怖と驚きで腰を抜かし立ち上がれないでいた。
「…情けないやつめ」
信長様は呆れたように私を一暼したかと思うと、隣にスッとしゃがみ込み、私の体をひょいと持ち上げ肩に背負う。
(わっ…)
「そいつら全員始末しておけ」
立ち上がってそれだけを言い残し、信長様は部屋を出ていく。
(どこに連れていくんだろう…)
「あの、信長様…」
担がれたまま訴えるも、信長様は私に耳を貸すことなくずんずんと歩いていく。
そうしてやってきたのは、信長様の部屋。
「もう大丈夫ですので下してください!」
信長様は肩の上で暴れる私をしばらく可笑しそうに眺めたのち、ようやく床に下した。
「二度も俺の前に立つとは、女の割にいい度胸をしているな」
(あれ?…いま、女って言った?)
「ど、どうして…」
「それで隠していたつもりか?光秀も市もこそこそと…」
「ずっと前から気づいていたんですか?」
「男なら市に近づけるわけがないだろう。阿保が!」
鋭い目で睨めつけられ、ふいに先ほど切られた地侍の姿が脳裏をかすめる。
(私も、殺されるのかも…どうしよう…!でも、逃げられるわけでもないし…!)
恐怖のあまり固まった私に、信長様が不思議そうに尋ねてくる。
「なぜ震えている」
「…私も、あの地侍みたいに死ぬんですね」
思い切ってそう答えるも、返事がなかなか返ってこない。
そっと顔をあげてみたところ、信長様は怪訝そうにこちらを見下ろしていた。
「俺がお前を殺すとでも…?」
「え…」
「お前が死んだら甘味はこれから誰が作るというのだ。それに…お前は俺をまだまだ楽しませてくれそうだ。」
信長様は私の腕を掴んで引き寄せ、顔を寄せてくる。
「俺が怖いか…?」
全てを見透かしたような冷たい目でじっと見つめられ、私は動けなくなってしまった。
と、その時、
「あの~、信長様。後にしたほうがよろしいでしょうか」
後ろから控えめな声が聞こえてくる。
振り返ると、いつからそこにいたのか蘭丸さんが遠慮がちに立っていた。信長様はひとつ息をつき、腕を話す。
「お前は本当に空気が読めないな」
「…申し訳ございません」
「伊吹、本当の名をなんと申す」
「…吉乃です」
「蘭丸は信頼できる奴だ」
私を安心させるようにそう言うと、信長様は蘭丸さんに命じる。
「おい蘭丸。吉乃の足を見てやれ。あとは任せた」
(信長様…私が足をくじいていた事に気づいていたんだ…)
先ほどのドタバタの中、私は信長様を庇おうとして足をくじいていた。
(それで、私を担いでここまで…)
去っていく信長様の後ろ姿に、私は思わず声をあげた。
「どうしてここまでして下さるんですか?」
「…珍客に対するただの戯れだ。俺がお前に言ったこと、ゆめゆめ忘れるなよ」
(私に言ったことって…)
『お前の毒見の役を解こう。その代わり俺に毎日、甘味をもってこい。ただし、少しでも妙なそぶりを見せてみろ。その時は、叩き斬る』
(あの言葉か…)
信長様は去り際に私に告げる。
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