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第十九話 除霊できたら何したい?
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「山の祠に行けばレイの呪いが解けるって、兄貴がそう言っていたのか?」
「そうなんだ」
城ケ崎は寺嶋の長兄から聞いたことを、寺嶋に伝えた。
寺嶋を騙すようなことをしたくないので、次兄の部屋にあった日記も合わせて見せた。
「この日記の内容を伝えたら、教えてくれたんだ」
「ちょっと読ませてくれ」
勝手に弟に見せてごめんと心の内で次兄に謝りながら、寺嶋に日記を渡した。
「この、行方不明になった時のことをソウは覚えているのか?」
日記に目を通している彼に、おそるおそる聞いてみた。
「ああ、いや……うん。祠を目指して山に登ったことは覚えてる。その結果どうなったのかは、覚えてなくって。気がついたらレイト兄ちゃん、ううん、兄貴に保護されてたんだ」
「兄ちゃん」と口にした彼は、恥ずかしげに「兄貴」と言い直した。幼いころは「兄ちゃん」と呼んでいたのだなと窺い知れて、彼の可愛さについ相好を崩した。
「山に登ってから何が起こったのかは、覚えていないのか……。山の祠というのはどういう場所なのか、聞いても大丈夫か?」
「俺にもよくわからない。ただ、よくない気が集まっている場所だっていうのは、昔から感じてた。地元の人もあの山にはあまり近づかない。だからきっと、ものすごい怨霊がいるんだと思う」
「すごく凶悪なゴーストが……」
ものすごいオンリョウというのがどういうものなのか、城ケ崎には想像もつかなかった。
「それで、どうしてわざわざそんな祠に行こうと思ったんだ」
尋ねると、寺嶋は意を決したように口を開いた。
「ん-……俺が小さいころ、悪霊に憑かれて死んじゃった友達がいたんだ。それがすごく悔しくて、人に憑いている悪霊は全部除霊できるようになろうって誓ったんだ」
「それは、辛い経験だったんだな」
そんな経験があったから、危うさを感じるくらいに他人を助けようとするのかと頷いた。
「それで根拠はないけど、その友達が悪霊に憑かれた原因は、きっとあの祠だと思ったんだ。だから除霊の修行を受け終わったあと、俺は祠に挑みに行った。親父に言ったら止められると思ったから、書き置きだけの残して歩いて山に行った。そこから先は記憶にない」
「山であったことは覚えていなくて、お兄さんに保護されたとこで気がついたということか」
「そういうことになるのかな」
寺嶋の話を聞いて、城ケ崎は躊躇いを覚える。
胸中に発生した躊躇を、直接彼に聞いてみようと思った。
「そんな何があったのか記憶に残っていないような場所にもう一度行くのは、怖くないのか? 覚悟がないなら行かない方がいいと、お兄さんも言っていた。もしソウが怖いようなら……」
「何を言っているんだ、行くに決まってるだろ!」
最後まで言い終わる前に、彼が反論した。
「だってレイの呪いが解けるんだろう。そんなの、行くしかないだろ」
「そ、そうか。そうだな」
頷きながらも、彼のことが心配になる。
少しは自分を大切にしてほしいなと心の中で思った。
「なあ、レイ。除霊できたら何がしたい?」
「え?」
出し抜けの問いかけに、目を丸くして間抜けな顔を晒す。
「だって兄貴の言うことが本当なら、これで除霊できるんだろ。レイは自由だ! そしたらさ、お祝いしようぜ。何がしたい? 美味いものを食いたいとかさ、いろいろあるだろ?」
「お祝いか、なるほど。ははは」
終わったあとの楽しいことを考えようなんていう発想はなかった。難しく不気味な話ばかり考えていた頭が、生まれ変わったように明るい気分になる。
「うーん、そうだな。肉を食いたいな。美味いものと言えば、肉だ!」
「ははは、レイは肉大好きだよな」
「肉が嫌いな男子高校生などいないだろう?
「そりゃそうだけどさぁ」
お互いに笑顔になる。
笑顔の寺嶋が可愛いのだと、先ほど長兄に惚気たことを思い出す。
こうして改めて笑顔の彼を目の前にして、やはり可愛いと思う。
――本当にしたいことは、キスかもしれないな。
胸の内に湧き出た想いは、口にすることなく仕舞っておく。
お互いに笑い合えている関係を壊したくはない。
「じゃあ除霊できたら、超大量の肉買って焼きまくるぞ!」
「焼肉か! それは楽しみだ!」
野菜はいるかどうかとか、細かいことを話し合って詰めていく。
そんな何気ない時間が楽しくて、やっぱり寺嶋とはずっと一緒にいたいと思わずにはいられなかった。
ずっとずっと、恋人のままでいられたらいいのにな。
「そうなんだ」
城ケ崎は寺嶋の長兄から聞いたことを、寺嶋に伝えた。
寺嶋を騙すようなことをしたくないので、次兄の部屋にあった日記も合わせて見せた。
「この日記の内容を伝えたら、教えてくれたんだ」
「ちょっと読ませてくれ」
勝手に弟に見せてごめんと心の内で次兄に謝りながら、寺嶋に日記を渡した。
「この、行方不明になった時のことをソウは覚えているのか?」
日記に目を通している彼に、おそるおそる聞いてみた。
「ああ、いや……うん。祠を目指して山に登ったことは覚えてる。その結果どうなったのかは、覚えてなくって。気がついたらレイト兄ちゃん、ううん、兄貴に保護されてたんだ」
「兄ちゃん」と口にした彼は、恥ずかしげに「兄貴」と言い直した。幼いころは「兄ちゃん」と呼んでいたのだなと窺い知れて、彼の可愛さについ相好を崩した。
「山に登ってから何が起こったのかは、覚えていないのか……。山の祠というのはどういう場所なのか、聞いても大丈夫か?」
「俺にもよくわからない。ただ、よくない気が集まっている場所だっていうのは、昔から感じてた。地元の人もあの山にはあまり近づかない。だからきっと、ものすごい怨霊がいるんだと思う」
「すごく凶悪なゴーストが……」
ものすごいオンリョウというのがどういうものなのか、城ケ崎には想像もつかなかった。
「それで、どうしてわざわざそんな祠に行こうと思ったんだ」
尋ねると、寺嶋は意を決したように口を開いた。
「ん-……俺が小さいころ、悪霊に憑かれて死んじゃった友達がいたんだ。それがすごく悔しくて、人に憑いている悪霊は全部除霊できるようになろうって誓ったんだ」
「それは、辛い経験だったんだな」
そんな経験があったから、危うさを感じるくらいに他人を助けようとするのかと頷いた。
「それで根拠はないけど、その友達が悪霊に憑かれた原因は、きっとあの祠だと思ったんだ。だから除霊の修行を受け終わったあと、俺は祠に挑みに行った。親父に言ったら止められると思ったから、書き置きだけの残して歩いて山に行った。そこから先は記憶にない」
「山であったことは覚えていなくて、お兄さんに保護されたとこで気がついたということか」
「そういうことになるのかな」
寺嶋の話を聞いて、城ケ崎は躊躇いを覚える。
胸中に発生した躊躇を、直接彼に聞いてみようと思った。
「そんな何があったのか記憶に残っていないような場所にもう一度行くのは、怖くないのか? 覚悟がないなら行かない方がいいと、お兄さんも言っていた。もしソウが怖いようなら……」
「何を言っているんだ、行くに決まってるだろ!」
最後まで言い終わる前に、彼が反論した。
「だってレイの呪いが解けるんだろう。そんなの、行くしかないだろ」
「そ、そうか。そうだな」
頷きながらも、彼のことが心配になる。
少しは自分を大切にしてほしいなと心の中で思った。
「なあ、レイ。除霊できたら何がしたい?」
「え?」
出し抜けの問いかけに、目を丸くして間抜けな顔を晒す。
「だって兄貴の言うことが本当なら、これで除霊できるんだろ。レイは自由だ! そしたらさ、お祝いしようぜ。何がしたい? 美味いものを食いたいとかさ、いろいろあるだろ?」
「お祝いか、なるほど。ははは」
終わったあとの楽しいことを考えようなんていう発想はなかった。難しく不気味な話ばかり考えていた頭が、生まれ変わったように明るい気分になる。
「うーん、そうだな。肉を食いたいな。美味いものと言えば、肉だ!」
「ははは、レイは肉大好きだよな」
「肉が嫌いな男子高校生などいないだろう?
「そりゃそうだけどさぁ」
お互いに笑顔になる。
笑顔の寺嶋が可愛いのだと、先ほど長兄に惚気たことを思い出す。
こうして改めて笑顔の彼を目の前にして、やはり可愛いと思う。
――本当にしたいことは、キスかもしれないな。
胸の内に湧き出た想いは、口にすることなく仕舞っておく。
お互いに笑い合えている関係を壊したくはない。
「じゃあ除霊できたら、超大量の肉買って焼きまくるぞ!」
「焼肉か! それは楽しみだ!」
野菜はいるかどうかとか、細かいことを話し合って詰めていく。
そんな何気ない時間が楽しくて、やっぱり寺嶋とはずっと一緒にいたいと思わずにはいられなかった。
ずっとずっと、恋人のままでいられたらいいのにな。
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