悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

文字の大きさ
27 / 171
第一部 リューナジア城編

第二十七話 久しぶりの発熱

しおりを挟む
「ううーん……」

 おにいちゃんに懐中時計をもらって嬉しくてはしゃぎ過ぎたせいだろうか。
 誕生日会の翌日、僕は久しぶりに熱を出して寝込んでしまっていた。

「あたまいたい……」
「今日は授業もお休みにしてもらいましょう。ゆっくり休んでいて下さいませ」
「うん……」

 乳母の言葉に大人しく頷いた。

「今日は特別良く効くという解熱剤をもらったのです。飲んで下さいませ」
「うん」

 寝込んでいる間にお医者さんでも来てたのかなと思いながら、粉薬と水を受け取って大人しく飲み干した。

 兄にもらった大切な懐中時計は僕に時計盤が見えるようにベッド脇のサイドテーブルの上に置いてある。
 規則正しく時を刻んでいる針のおかげで、身体を起こさなくても今が何時か分かる。
 それを見ているだけで何だか安心してくる。
 段々と瞼が重くなってくるのを感じた。

「んう……」



「カレン殿下」

 いつの間にか寝入っていたらしい。
 乳母に静かに声をかけられて目を覚ます。

「殿下にお客様がいらっしゃいましたよ」
「お客さん……?」

 僕を訪ねてくるなんて一体誰だろうと首を傾げる。

「カレン」

 乳母の後ろから姿を現したのはウィルフリートだった。

「おにーちゃん……!」

 ぱっと顔を輝かせて、ベッドから身体を起こそうとすると、それをお兄ちゃんに押し止められた。

「寝ていろ。お前が熱を出したと聞いて見舞いに来たんだ」
「ありがとう、僕嬉しい」

 にこにことしている僕を見て乳母がそっと席を外す。

「具合はどうだ?」
「寝てたから大丈夫だよ。なんか頭がふわふわするの」
「確かに。解熱剤が効いたようだな」

 兄がそっと僕の額に手を当てる。

「熱くない。平熱だ」

 僕の体温を確認してほっとした様子の兄を見上げて、ひょっとしてと思う。

「もしかして解熱剤もおにーちゃんが……?」
「ああ」

 兄は肩を竦めて肯定する。
 特別良く効く解熱剤っていうのはお兄ちゃんが作ってくれたものだったんだ。
 最高のお見舞い品だ。

「すごいなあ。おにーちゃんはお薬も作れちゃうんだ」

 薬の副作用か、ぽやぽやした頭で兄を見上げる。

「効いたようで何よりだ。ところでカレン、もし元気になればの話なんだが」
「うん」
「眼鏡や望遠鏡作りのことで相談したいことがある。オレの部屋に来てくれないか」
「いいよお」
「ああ。だから早く元気になれよ」

 兄が慈愛に満ちた視線と形容しても構わないぐらい優しい視線を僕に降り注がせる。
 兄のこんな顔を見るのは初めてかもしれない。

 もしかして僕は兄に大切な存在だと思ってもらえているのだろうか。
 そうだといいなと思いながら、再びの眠気が瞼を閉ざしていく……。



 * * *



「寝たか」

 美しいビスクドールのような寝顔で、弟が自らの金髪に包まれている。
 弟が眠りに落ちるだけでそこには一幅の絵画が生まれてしまう。

 まるで天使のような愛おしい弟。
 オレには彼しか存在しない。
 だから彼にとってもオレが唯一の存在であればいいのにと願う。

「カレン……」

 祈るように彼の額に接吻くちづけを落とした。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

処理中です...