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第一部 リューナジア城編
第五十五話 死霊術士の実力
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「か、カレンが一度死んでいるとはどういうことだっ!?」
気が動転するあまりか、お兄ちゃんの声は裏返り敬語が剥がれ落ちた。
「臭いの薄さからすると、だいぶ前……恐らく産まれた時だな。死産だったんだろう」
第五皇子カレンはタソトキでは本来生まれた瞬間に死んでしまう幻の皇子。
シア・ブラックウェルはそれを正確に言い当てた。
これが死霊術士の力なのか……!
「だが何らかの方法で坊主は生き返った。お貴族様の間には秘密の反魂の術でも受け継がれてんのか?」
「サ、サア、ボクニハチョットワカラナイナー」
十中八九僕が異世界転生してきたから第五皇子カレンは生き返ったのだろう。
だがそれをシアに言うことはできない。
僕が異世界転生したというのは僕とお兄ちゃんの間だけの秘密なのだ。
僕はちらりとお兄ちゃんに視線をやり、目配せをした。
「……!」
兄と目が合う。
兄も僕たちが交わした秘密の約束に関わることなのかと察したようで、落ち着きを取り戻した。
「まあ生き返った方法なんざどうでもいい。ともかく、一度死んで生き返ったことでまだ魂が身体に馴染み切ってねえみてェだ」
「な、なるほど?」
医者に診てもらうつもりがまさか死霊術士に魂を診てもらうことになるとは思わなかった。
それでも今まで分からなかったことが分かろうとしているのだから、結果オーライだ。
「そのせいで肉体と魂が上手く同期できてねぇ。魂が肉体から剥離し易い状態だ。だからちょっとした事で体調を崩すのかもな」
まさかそんな大変なことになっていたとは。
時折前世の肉体と今の肉体の違いに戸惑いを感じたりすることがあるけれど、それが"馴染んでない"状態ということなのだろうか。
「それを解決するにはどうすればよろしいですか?」
落ち着きを取り戻した兄がシアに尋ねる。
「待てばいい」
「え?」
シアの短い答えに兄は目を丸くした。
「何もしなくても、坊主の身体が成長して此の世での存在感が増せば自然に魂も定着する。一度死んだから常人よりも定着が遅れているだけだ」
シアの話によると、元々赤ん坊や幼児は大人よりも魂が不安定な存在であり、その為に身体が弱いのだという。
僕の前世の常識だと小さい子は免疫力が低いから病気にかかりやすいだけなんじゃないかなと思うけれど。この世界ではそういうことになっているのだろう。
「じゃあ成長すれば弟は丈夫な身体になれるのですね……!」
「ああ。普通に生活を送る分には問題ねェだろ」
良かった……!
僕は兄と顔を見合わせ、ぱっと安堵の笑みを浮かべた。
「……ああ、そういえば」
シアが何か思いついたかのように呟く。
「魔法の薬はねェがな、身体の成長を助ける薬ならあるぞ。どうだ、いるか?」
身体の成長を助ける薬!?
兄と僕はニヤリと笑うシアに目を見張ったのだった。
気が動転するあまりか、お兄ちゃんの声は裏返り敬語が剥がれ落ちた。
「臭いの薄さからすると、だいぶ前……恐らく産まれた時だな。死産だったんだろう」
第五皇子カレンはタソトキでは本来生まれた瞬間に死んでしまう幻の皇子。
シア・ブラックウェルはそれを正確に言い当てた。
これが死霊術士の力なのか……!
「だが何らかの方法で坊主は生き返った。お貴族様の間には秘密の反魂の術でも受け継がれてんのか?」
「サ、サア、ボクニハチョットワカラナイナー」
十中八九僕が異世界転生してきたから第五皇子カレンは生き返ったのだろう。
だがそれをシアに言うことはできない。
僕が異世界転生したというのは僕とお兄ちゃんの間だけの秘密なのだ。
僕はちらりとお兄ちゃんに視線をやり、目配せをした。
「……!」
兄と目が合う。
兄も僕たちが交わした秘密の約束に関わることなのかと察したようで、落ち着きを取り戻した。
「まあ生き返った方法なんざどうでもいい。ともかく、一度死んで生き返ったことでまだ魂が身体に馴染み切ってねえみてェだ」
「な、なるほど?」
医者に診てもらうつもりがまさか死霊術士に魂を診てもらうことになるとは思わなかった。
それでも今まで分からなかったことが分かろうとしているのだから、結果オーライだ。
「そのせいで肉体と魂が上手く同期できてねぇ。魂が肉体から剥離し易い状態だ。だからちょっとした事で体調を崩すのかもな」
まさかそんな大変なことになっていたとは。
時折前世の肉体と今の肉体の違いに戸惑いを感じたりすることがあるけれど、それが"馴染んでない"状態ということなのだろうか。
「それを解決するにはどうすればよろしいですか?」
落ち着きを取り戻した兄がシアに尋ねる。
「待てばいい」
「え?」
シアの短い答えに兄は目を丸くした。
「何もしなくても、坊主の身体が成長して此の世での存在感が増せば自然に魂も定着する。一度死んだから常人よりも定着が遅れているだけだ」
シアの話によると、元々赤ん坊や幼児は大人よりも魂が不安定な存在であり、その為に身体が弱いのだという。
僕の前世の常識だと小さい子は免疫力が低いから病気にかかりやすいだけなんじゃないかなと思うけれど。この世界ではそういうことになっているのだろう。
「じゃあ成長すれば弟は丈夫な身体になれるのですね……!」
「ああ。普通に生活を送る分には問題ねェだろ」
良かった……!
僕は兄と顔を見合わせ、ぱっと安堵の笑みを浮かべた。
「……ああ、そういえば」
シアが何か思いついたかのように呟く。
「魔法の薬はねェがな、身体の成長を助ける薬ならあるぞ。どうだ、いるか?」
身体の成長を助ける薬!?
兄と僕はニヤリと笑うシアに目を見張ったのだった。
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