悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百十三話 学力テスト ①

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「大変失礼いたしました。ケイスお坊ちゃまには後で言って聞かせますので」

 家庭教師がこほんと咳払いを一つ。
 どうやらケイくんの本名はケイスくんと言うようだ。

「それでは改めてご挨拶をば。私、この城の教育係を任されておりますクレアと申します。殿下がこの城に滞在する間の教師を務めさせていただきます」

 クレアさんは髪を後ろできっちりお団子に纏めた中年の女性だった。
 ケイくんを追いかけて走ったからか、それとも皇子を目の前にして緊張しているからかは分からないが額に汗が滲んでいる。

「殿下にはまず学力テストを行っていただこうと存じます。殿下の進度に合わせて授業計画を組み立てますので」

 テスト用紙が配られるのかなと思ったら、小さな黒板を手渡された。
 クレアさんが出す問題の答えをここに石筆で書き込むらしい。
 そうか、羊皮紙しかないからテスト用紙なんてそうそう作れないのかと思い至った。
 不便な世界だなぁと思いながら僕はテストに臨んだ。

「ではまず国語のテストから行きましょう。最初は口頭で答える問題でございます。この文字とこの文字を組み合わせると何と読みますか?」

 最初は発音規則の問題からだった。
 クレアさんが持っている小さな黒板に文字の組合せが書かれる。
 これはもうすっかり覚えている。僕は楽々と答えた。
 何問か続くが、すべて正解できた。

「素晴らしい! では次は私が読み上げる単語のスペルをお手持ちの黒板にお書き下さい」

 スペルの問題。これも大体大丈夫だ。
 発音規則に則って書くだけ。
 例外的な綴りの単語いくつかがちょっと不安だったけれど、ほとんど正解だったと思う。
 クレアさんも満足げに頷いているからきっとそうだと思う。

「それでは最後に、こちらの本の一節を音読していただけますか? もし少しも読めなければ読めないと仰って下さって大丈夫ですからね」

 遂に最終問題、僕は渡された本に恐る恐る目を通した。
 そしてほっとした。良かった、別に難しくない。
 内容は月の国に伝わる神話を纏めたものだった。

 僕は深呼吸すると文章を声に出して読み始めた。

「その昔のこと、二十六の精霊と、耳の長いひとが森の中で共に暮らしていた。耳の長いひとは……」
「まあ、なんて流暢に朗読なさるのかしら……!」

 一文読んだだけでクレアさんが感嘆の声を上げた。
 僕が皇子だからって大袈裟に持ち上げてるのかな?

「殿下がまだ六歳だとはとても信じられませんわ。はい、国語のテストはこれで十分でございます」

 本当に一節読んだだけで終わってしまった。
 今ので本当に僕の実力が測れたのだろうか?
 どこか釈然としない思いを抱えながらも、次のテストへと移った。
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