113 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百十三話 学力テスト ①
しおりを挟む
「大変失礼いたしました。ケイスお坊ちゃまには後で言って聞かせますので」
家庭教師がこほんと咳払いを一つ。
どうやらケイくんの本名はケイスくんと言うようだ。
「それでは改めてご挨拶をば。私、この城の教育係を任されておりますクレアと申します。殿下がこの城に滞在する間の教師を務めさせていただきます」
クレアさんは髪を後ろできっちりお団子に纏めた中年の女性だった。
ケイくんを追いかけて走ったからか、それとも皇子を目の前にして緊張しているからかは分からないが額に汗が滲んでいる。
「殿下にはまず学力テストを行っていただこうと存じます。殿下の進度に合わせて授業計画を組み立てますので」
テスト用紙が配られるのかなと思ったら、小さな黒板を手渡された。
クレアさんが出す問題の答えをここに石筆で書き込むらしい。
そうか、羊皮紙しかないからテスト用紙なんてそうそう作れないのかと思い至った。
不便な世界だなぁと思いながら僕はテストに臨んだ。
「ではまず国語のテストから行きましょう。最初は口頭で答える問題でございます。この文字とこの文字を組み合わせると何と読みますか?」
最初は発音規則の問題からだった。
クレアさんが持っている小さな黒板に文字の組合せが書かれる。
これはもうすっかり覚えている。僕は楽々と答えた。
何問か続くが、すべて正解できた。
「素晴らしい! では次は私が読み上げる単語のスペルをお手持ちの黒板にお書き下さい」
スペルの問題。これも大体大丈夫だ。
発音規則に則って書くだけ。
例外的な綴りの単語いくつかがちょっと不安だったけれど、ほとんど正解だったと思う。
クレアさんも満足げに頷いているからきっとそうだと思う。
「それでは最後に、こちらの本の一節を音読していただけますか? もし少しも読めなければ読めないと仰って下さって大丈夫ですからね」
遂に最終問題、僕は渡された本に恐る恐る目を通した。
そしてほっとした。良かった、別に難しくない。
内容は月の国に伝わる神話を纏めたものだった。
僕は深呼吸すると文章を声に出して読み始めた。
「その昔のこと、二十六の精霊と、耳の長いひとが森の中で共に暮らしていた。耳の長いひとは……」
「まあ、なんて流暢に朗読なさるのかしら……!」
一文読んだだけでクレアさんが感嘆の声を上げた。
僕が皇子だからって大袈裟に持ち上げてるのかな?
「殿下がまだ六歳だとはとても信じられませんわ。はい、国語のテストはこれで十分でございます」
本当に一節読んだだけで終わってしまった。
今ので本当に僕の実力が測れたのだろうか?
どこか釈然としない思いを抱えながらも、次のテストへと移った。
家庭教師がこほんと咳払いを一つ。
どうやらケイくんの本名はケイスくんと言うようだ。
「それでは改めてご挨拶をば。私、この城の教育係を任されておりますクレアと申します。殿下がこの城に滞在する間の教師を務めさせていただきます」
クレアさんは髪を後ろできっちりお団子に纏めた中年の女性だった。
ケイくんを追いかけて走ったからか、それとも皇子を目の前にして緊張しているからかは分からないが額に汗が滲んでいる。
「殿下にはまず学力テストを行っていただこうと存じます。殿下の進度に合わせて授業計画を組み立てますので」
テスト用紙が配られるのかなと思ったら、小さな黒板を手渡された。
クレアさんが出す問題の答えをここに石筆で書き込むらしい。
そうか、羊皮紙しかないからテスト用紙なんてそうそう作れないのかと思い至った。
不便な世界だなぁと思いながら僕はテストに臨んだ。
「ではまず国語のテストから行きましょう。最初は口頭で答える問題でございます。この文字とこの文字を組み合わせると何と読みますか?」
最初は発音規則の問題からだった。
クレアさんが持っている小さな黒板に文字の組合せが書かれる。
これはもうすっかり覚えている。僕は楽々と答えた。
何問か続くが、すべて正解できた。
「素晴らしい! では次は私が読み上げる単語のスペルをお手持ちの黒板にお書き下さい」
スペルの問題。これも大体大丈夫だ。
発音規則に則って書くだけ。
例外的な綴りの単語いくつかがちょっと不安だったけれど、ほとんど正解だったと思う。
クレアさんも満足げに頷いているからきっとそうだと思う。
「それでは最後に、こちらの本の一節を音読していただけますか? もし少しも読めなければ読めないと仰って下さって大丈夫ですからね」
遂に最終問題、僕は渡された本に恐る恐る目を通した。
そしてほっとした。良かった、別に難しくない。
内容は月の国に伝わる神話を纏めたものだった。
僕は深呼吸すると文章を声に出して読み始めた。
「その昔のこと、二十六の精霊と、耳の長いひとが森の中で共に暮らしていた。耳の長いひとは……」
「まあ、なんて流暢に朗読なさるのかしら……!」
一文読んだだけでクレアさんが感嘆の声を上げた。
僕が皇子だからって大袈裟に持ち上げてるのかな?
「殿下がまだ六歳だとはとても信じられませんわ。はい、国語のテストはこれで十分でございます」
本当に一節読んだだけで終わってしまった。
今ので本当に僕の実力が測れたのだろうか?
どこか釈然としない思いを抱えながらも、次のテストへと移った。
57
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる